自動車教習所といえば、地上の練習コースをイメージする人もいるかもしれませんが、なかにはビルの屋上にコースを設けているところも。広い敷地を持つ教習所が、建て替えを機に「立体化」するケースがあります。

下は「イオン」 地上の教習所とどう違う?

 自動車教習所といえば、地上にあるイメージを持つ人もいるかもしれませんが、なかには珍しい場所に設けられたところもあります。


久里浜中央自動車学校。イオンが入居する複合施設の屋上が教習コースになっている(画像:久里浜中央自動車学校)。

 たとえば、神奈川県横須賀市の久里浜中央自動車学校は、1階から2階が商業施設の「イオン久里浜店」、3階が駐車場で、屋上が教習所のコースという構造です。同校に話を聞きました。

――もともとは地上の教習所だったのでしょうか?

 はい。2008(平成20)年に複合施設として建て替えました。テナントのイオンさんは、複数社からの入札で決定しています。このような複合施設の上にある教習所は、当時全国で5例目、イオン屋上では北海道の桑園自動車学校(札幌市中央区)に続く2例目でした。当校は桑園自動車学校を参考に建設しています。

――なぜ立体化したのでしょうか?

 少子化の影響により入校者数が減っていたこともあり、古い施設の建て替えとともに土地を有効利用する目的で、複合施設としました。

――地上のコースと比べて変化はありますでしょうか?

 コース面積が1万5000平方メートルから8000平方メートル台に減ったものの、教習内容などに違いはありません。たとえば、地上から屋上コースに通じるスロープも、イオンの駐車場用とは別に専用のものを設けています。

生徒にとってのメリットとは?

――生徒からの評判はいかがでしょうか?

「便利になった」という声が多いです。というのは、教習所ではどうしても、つぎの教習までの待ち時間が発生してしまうため、イオン内でその時間をつぶせるようになった点が大きいです。

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 商業施設と一体化した教習所は、古くは1970年代に登場しています。久里浜中央自動車学校には、現在の姿になって以後「他県の教習所からゼネコンさんなどといっしょに見学に来られることもあります」とのこと。たとえば2016年には愛知県、2017年には千葉県にも、このような商業施設の屋上をコースにした教習所が誕生しています。久里浜中央自動車学校によると、こうした多層階建ての教習所はシンガポールなど海外でも少なくないそうです。

 なお、久里浜中央自動車学校のような指定教習所(都道府県公安委員会が指定した教習所。卒業後に運転免許試験場での技能試験が免除される)には、コース面積が8000平方メートル以上という規定があります。これがどれほどの広さかというと、たとえば、日本サッカー協会の競技規則で定められているサッカー場の面積が約7140平方メートルです。サッカー場よりも広い土地をどう活かすか、教習所だけでなく他業種も注目しているのかもしれません。

 ちなみに、教習所を立体化するのではなく、地上にある教習所の上空を有効活用するケースも。練習コースの周りに支柱を設けたうえで、コース上空を覆うようにネットを張り、ゴルフ練習場(いわゆる「打ちっぱなし」)として営業している例があります。

【写真】地上の教習所「上空」の活用法も


教習所の練習コース上空にネットを張り、ゴルフ練習場(いわゆる「打ちっぱなし」)として活用しているケース。このような例は駐車場の上空などでも見られる(国土地理院の地図を加工)。