コロンビア戦での勝利はツキにも恵まれた感がある。第3戦のポーランド戦の選手起用は、大きな賭けと言えたが…。写真:JMPA代表撮影(滝川敏之)

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 4月の電撃的な監督交代でどうなることかと思いきや、それから2か月後のロシア・ワールドカップでなんとグループリーグ突破を果たした。ひとつの分岐点は、6月12日のパラグアイ戦との親善試合だったのではないか。
 
 いわゆる主力組を温存したパラグアイ戦はベンチメンバーも声を出して戦った結果、4-2と勝利した。西野監督がスイス戦を含め「全員起用」を有言実行し、さらに就任後の初白星を飾ったことで、チームの雰囲気はかなり明るくなったと記憶している。
 
 いや、6月8日のテストマッチでスイスに0-2と敗れて目が覚めたというべきか。その前日までどこかフワフワしていた印象もあったゼーフェルト合宿(オーストリアのインスブルック郊外にある街での事前キャンプ)でチームにグッと危機感が高まったのはむしろそのタイミングだったかもしれない。
 
「戦う、走るという根本的な部分さえできていない」という長友佑都の叫びがチームメイトに伝わったのか、他の選手からも「そもそも戦えていない」というところにフォーカスするコメントが聞かれた。自分たちは下手くそなのだから、恰好などつける必要はない、ただガムシャラに戦うしかない──。そんな覚悟が見て取れた。
 
 理想を追い求め過ぎず、自分たちの立ち位置を改めて認識できたという点でスイス戦の黒星は今思えば価値があった。
 
 コロンビア、ポーランド、セネガルと同居したグループHで、日本は最弱と目されていた。ハリル解任というある意味ショッキングな出来事もあり、「グループリーグ3連敗もありうる」と長友は危惧していた。
 
 そして迎えたコロンビアとのグループリーグ初戦。個々の能力だけで判断するなら、明らかにコロンビアが上。しかも、過去のワールドカップで日本は南米勢に未勝利と相性の悪さもあり、相当なツキにでも恵まれないかぎり勝点3獲得は困難と見られていた。
 
 しかし、そのツキがいきなり巡ってくる。前半3分に香川真司のシュートをハンドで阻止したとしてMFのカルロス・サンチェスが一発レッド、しかもPKで先制と滅多にお目にかかれない“ハプニング”がワールドカップの大舞台で起きたのだ。
 
 これで11人対10人と数的優位を得た日本は、一旦は1-1に追いつかれながらも大迫勇也の決勝ゴールで望外の結果を手にする。初戦白星というとてつもない自信が、勢いとなってチームを力強く後押しした。
 サッカーは実に面白いスポーツで、こうした精神的要素が勝敗に大きく影響する。実際、続くセネガル戦でも二度のビハインドを跳ね返す粘り強さを見せた。柴崎岳の優れたゲームメイク、酒井宏樹の超人的な守備など引き分けに持ち込めた要因を挙げようと思えば挙げられるが、システムや戦術では説明できないものもある。
 
 セネガル戦で1得点・1アシストを決めた乾も、自身のゴールについては「思い切って打ってみようかなと」、本田の同点弾のお膳立てについては「圭佑くんを狙ったわけではない」と計算づくのプレーではなかったことを告白している。ただ、それでも得点に絡める乾のような“ラッキーボーイ的存在”はワールドカップのような短期決戦を勝ち抜くうえで不可欠で、その意味で日本は良い流れに乗っていた。
 
 日本に良い波を引き寄せた選手のひとりが、本田だろう。コロンビア戦で大迫の決勝ゴールをアシストすると、続くセネガル戦では1-2で迎えた78分に左足で同点弾を流し込む。限られた出場時間できっちりと結果を残るあたりは、やはり、“この男、持っている”。
 
 初戦白星、乾というラッキーボーイ、スーパーサブの本田、この3つの要素は今回のグループリーグ突破を語るうえで見逃せないポイントだろう。