なぜ今、1袋70円台の「高いもやし」が売れ始めてきているのか?
消費者にとってお安く手に入る「もやし」は日常生活の強い味方ではありますが、安すぎる値段が生産農家の生活を圧迫しているのも事実です。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』でMBAホルダーの青山烈士さんが紹介するのは、一般価格の3倍、70円台の値で売られているもやし。それでも売れる秘密はどこにあるのでしょうか。
価格を上げる
野菜として初めて「機能性表示食品」に認定された「もやし」で人気の企業を分析します。
● 発芽野菜(もやし・スプラウト)の製造・販売を手掛ける「サラダコスモ」が提供している機能性野菜「大豆イソフラボン子大豆もやし」
戦略ショートストーリー健康に関心のある方をターゲットに「安心安全にこだわったもやし栽培ノウハウ」に支えられた『栄養価が高い』『美味しい』『調理しやすい』等の強みで差別化しています。
野菜として初めて「機能性表示食品」に認定された「もやし」だけでなく、現代人の生活にあったレシピも提供することで、顧客から支持を得ています。
分析のポイント
価格を上げる
小売価格が低下傾向の中では、「価格を上げることは難しい」と思考が停止してしまいがちですが、独自の取り組みで価値を高め、「もやし」の販売価格帯を上げることに成功している「サラダコスモ」は、素晴らしいと思います。
価格を上げた場合、競合を「もやし」として捉えれば「もやし」としては、高いかもしれませんが競合をもう少し広く「野菜」として捉えれば70円前後の価格は野菜としては安いですし、野菜初の「機能性表示食品」であることは魅力的ですから多少高めの金額を払っても欲しいと思う方はいるでしょう。
そして、競合を「機能性表示食品」として捉えれば野菜に限らず様々な食品がありますが、その中では安いです。「機能性表示食品」を競合と捉えると「安さ」も強みになるということです。
上記のように競合をどのように捉えるか、つまり、競合を捉え直す(比較対象を変える)ことが価格を上げるポイントになります。
同じ比較対象である「もやし」のくくりの中で、自社だけ価格を上げたとしたら、小売店に取り扱ってもらえないことが懸念されますが、独自の価値を付け加えることで既存の「もやし」の枠を超えることができれば、小売店や消費者にとっての比較対象を変えることができます。
比較対象を変える、つまり、既存の「もやし」と比べられない状況を作ることができれば、新規カテゴリーの商品として、取り扱ってもらうことにもつながりますので、価格を上げることに対する小売店や消費者の抵抗感を押さえることができるというわけです。
「もやし」という安売りの対象となりやすい商品でも価格を上げることに成功している企業があるということは多くの企業にとっても参考になる事例だと思います。
今後の「サラダコスモ」の取り組みに注目していきたいです。
◆戦略分析
■戦場・競合
戦場(顧客視点での自社の事業領域):もやし(機能性表示食品)競合(お客様の選択肢):緑豆もやし など状況:国内のもやしの生産量は横ばいのようですが、小売価格は、やや低下傾向で、原料価格は上昇傾向のため生産者には厳しい状況のようです。■強み
1.栄養価が高い
機能性表示食品→骨を健康に保つ機能がある大豆イソフラボンを含む
2.美味しい
煮込んでも歯ごたえよく、大豆の風味を感じられる日持ちもして、おいしさ長持ち3.調理しやすい
袋のまま電子レンジに入れて調理できる(レンジで3分半)★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
約60年にわたり培ってきた安心安全にこだわったもやし栽培ノウハウと業界トップクラスの生産実績野菜として初めて「機能性表示食品」に認定袋のまま電子レンジに入れて調理できるフィルムを開発上記のような、こだわりや実績が強みを支えています。
■顧客ターゲット
栄養素を気にする方、骨の健康に関心のある方もやしが好きな方◆戦術分析
■売り物
『大豆イソフラボン子大豆もやし』
大豆イソフラボンが多く含まれており、骨の成分を維持する働きがあるもやしキャッチコピーは「骨の健康が気になる方に」■売り値
『1袋70円前後が中心価格帯』
→市販されている一般的な緑豆もやしの2〜3倍
■売り方
『機能性を訴求』
野菜として初めて「機能性表示食品」に認定された食品として、「骨の健康が気になる方へ」と健康機能の訴求しています『現代人の生活にあった大豆製品の取り方を提案』
『もやしレモン』という作り置きレシピを提案したところ、ブームになって大手ショッピングモールでもランキング1位に入るなど話題になりました■売り場
スーパー、量販店、百貨店 など※売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
image by: 『サラダコスモ』公式ホームページ
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