危機感を感じている武藤は「チャンスを待ってしっかり準備しないといけないと思います」と語った。写真:JMPA代表撮影(滝川敏之)

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 武藤嘉紀は、攻撃のラストピースだ。
 
 ブンデスリーグのマインツで27試合・8ゴールを挙げ、得点力を期待されてロシア・ワールドカップを戦う日本代表のメンバー入りを果たした。
 
 だが、攻撃陣の中で、ただひとりまだ出場機会がない。
 
 西野朗監督の交代カードは、ここ2試合では1番手が本田圭佑、2番手が岡崎慎司、3番手は状況に応じてということだが、攻撃では宇佐美貴史、守備では山口蛍がほぼ確定している感がある。
 
 チームの中にいれば、自分の序列は良く分かる。
 
 チームはコロンビア戦、セネガル戦と2試合、結果が出ており、攻撃の選手は得点を挙げ、しっかりと活躍している。チームの結果は嬉しい反面、個人としてはこのままでは出場する機会が見えてこない。
 
 ポーランド戦前日、武藤の表情はそんな危機感を感じ、終始厳しいままだった。
 
「チームのことを考えると、こういう結果が出ているのは嬉しいです。でも、自分自身はまだ(試合に)出れていないんで。次、もしチャンスがあったらチームのためにやりたいと思うし、そのチャンスを待ってしっかり準備しないといけないと思います」
 
 試合に出たい気持ちだけを優先させて行動してしまうと、チームの輪を乱しかねない。それゆえ、「悔しい気持ちは押し殺して」と心の奥にしまいこみ、「チームのために」という言葉を自分の中で言い聞かしているのだろう。それでもひとり、部屋にいるといろいろ考えてしまうはずだ。
 
 そんな時、どう自分の気持ちに折り合いをつけているのだろう。
 
「普段のリーグ戦とかだったら悔しくて、なんていうのかなぁ……苦しい想いになると思うんですけど、今は本当にそれを表に出してしまうとチームの雰囲気が壊れてしまうんで、とにかくチームのために、日本のために、私生活、ピッチ内外で両方とも明るく、やる気に満ち溢れたプレーを心掛けないといけないと思っています」
 
 出れない悔しさは練習に100%ぶつけ、なんとか気持ちと身体のバランスを保ち、試合に向けての準備を整えている。
 
 だが、ポーランド戦は、武藤の出場のチャンスが限りなく広がりつつある。
 コロンビア戦、セネガル戦ともに日本のスタメンは変わりなく、途中出場の選手も本田、岡崎は同じだった。試合と移動の消耗度や疲労度、さらに決勝トーナメント進出に向けての戦いを考えると、西野朗監督がスタメンをイジってくる可能性が大きい。
 
 また、ポーランドのセンターバックのふたりは大きいがスピードがない。武藤の裏に抜けるスピードについていけないだろうし、ドリブルでの仕掛けにも対応に苦慮するはずだ。西野監督は、そういう相性も考えている。武藤は攻撃で優位に立ち、自分のイメージ通りのプレーができるだろう。
 
「両センターバックはあまり早くないんで、そこを狙っていきたいと思う」
 
 攻撃のイメージはばっちり出来ているし、イメトレも完璧だ。
 
「そうじゃなければ途中から入ったり、自分が出番をもらった時に力を発揮できないと思うんで、そこに全神経を集中させないといけないと思います。必ずチャンスがくると思うんで、それを信じてしっかりやらないといけない」
 
 香川真司はコロンビア戦でPKを決め、大迫勇也は決勝ゴールを挙げた。乾貴士はセネガル戦で豪快なゴールを決め、本田圭佑も同点ゴールを決めている。攻撃陣の多くが得点を挙げ、結果を出している。
 
 武藤も出場の機会のチャンスさえ掴めば、その流れに乗っていけるはずだ。
 
「圭佑くんだったり、乾くん、大迫くんとか、点を取っている選手を間近で見て、すごいワクワクしています。自分も試合を決定づけられるゴールを決められれば」
 
 武藤はキッパリとそう言った。
 
 武藤がゴールを挙げればサブ組の士気が上がるだろうし、チーム力の底上げにもなる。また、今後どういうカードを切ればいいのか、西野監督を悩ますことになるだろう。
 
 ポーランド戦は、武藤の良さを活かせる格好の相手。攻撃のラストピースがヒーローになる可能性は十分にある。
 
取材・文●佐藤俊(スポーツライター)