愛くるしい笑顔で国民的人気フィギュアスケーターではあったが、浅田真央はオリンピックで優勝出来ず、歳もとり、結局、引退に追い込まれた。限りなくトップに近いが、オリンピックで優勝出来なかった彼女のような存在は、最も悩ましいポストだということが、このドキュメントでよくわかった。彼女の無念さが出ていた。

昨年4月に引退した浅田は、自らプロデュースしたアイスショーを指導する。姉の舞とオーディションで選んだ8人の男女を動かしてショーを構成する。その半年の稽古に密着した映像であるが、8人はスケートの技術もまちまち、中にはスペインからやってきた浅田ファンの子もいる。公演日が迫ってくるのにラインを綺麗に揃えて滑ることさえできない。ついに真央はキレて、泣きながら「これではだめだ」と全員を叱る。つまり、天才的に「出来てしまう」浅田と凡人のギャップを、今の境遇では我慢して何とかせねばならない。

かつては自分1人で苦しめばよかったが、ショーという商売では入場料に見合うレベルにまで全員を引き上げねばならない。しかしそれは至難の業なのである。チケットは完売でも、軟派の歌手のツアーのように全国を回るわけではない。「労多くして益少ない」に近い苦労の様子が浅田の表情からよく見えた。前途多難だ。彼女くらいの知名度があれば、スポーツキャスターでやれるが、天才といわれた割には、真央の中の不完全燃焼が伺えて同情しきりだった。(放送2018年6月17日16時5分〜)

(黄蘭)