[書評]後藤健二著『ダイヤモンドより平和がほしい 子ども兵士・ムリアの告白』

「大人が子どもを恨んでいる」
戦争には金がいる。そして、金があれば戦争は続く。
ダイヤモンド産出国の1つ、西アフリカのシエラレオネでは、その利益は生活を豊かにしなかった。代わりに、銃などの武器が国中に溢れ、利潤を奪い合う戦争が長期化した。
一方で、兵士の数は減り、人数を確保するために、子どもが誘拐され、軍人にさせられた。武器を持っていなければ怪しまれないという理由で、子どもは軍のスパイとなり、身体が小さく動きが早いという理由で、戦闘の最前線に送られた。そして、素直な子どもたちは、指示されたとおりに家を焼き払い、人々の手足を切り落とすなどの残虐行為を繰り返す「戦闘マシーン」になった。
本書は「うれしそうでもなく、悲しそうでもなく、うつろな眼でまったく感情のない表情」をしている、両腕を失ったシエラレオネ人の、1枚の写真を見た著者が、その表情の謎を解くために現地入りし、書いたルポルタージュである。
取材の過程で、著者はその1年前に3年間過ごした軍から脱走した元子ども兵ムリア・ソレイに出会った。感情や恐怖心を消すために、皮膚を切って麻薬を体内に埋め込まれた彼は、キラー・イン・ザ・ブッシュ(やぶの殺し屋)と言われるほどの、“優秀な”兵士だった。
元子ども兵士は、戦闘から離れ、必死に社会復帰を目指している。しかし、彼らは被害にあった住民や自分の家族から恐れられ、恨まれている。元子ども兵士への理解のある人でも、<許す。けれど、決して忘れない……>と話すことを受け止め、ムリアは毎日、神に祈ることにしている。消えない苦しみを持ちながら、ようやく生きる希望を見つけた彼は、最後に自らの夢を語る。
遠い国の話だろうか。光り輝くダイヤモンドの、サイドストーリーとしてぜひ読んでおきたい作品だ。ふりがなつき。(汐文社、2005年7月、1365円)【了】
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