腸内フローラのベストバランス

腸は人間の臓器の中で脳に次いで2番目に神経細胞が多いので、「第二の脳」といわれるほど、ヒトの健康状態に影響力のある存在です。

腸には、消化・吸収・排泄・免疫という4つの役割があります。腸内環境が乱れると、この役割がうまく機能せず、老廃物が体内に溜まり、さまざまな病気を引き起こす原因になります。腸内環境を整えるカギを握るのが「腸内フローラ」の存在です。腸内フローラの働きと、理想的な腸内フローラを作るために行うべき食生活について紹介します。

目次

腸内環境を左右する「腸内フローラ」とは?腸内環境が整ったときのメリット腸内環境を整えるために摂りたい食物繊維身近な食品から摂れる食物繊維

 

腸内環境を左右する「腸内フローラ」とは?

ヒトの腸内には、500〜1000種類、500〜1000兆個の腸内細菌がすみついているといわれています。これらの腸内細菌は、ヒトが食べたものをエサとし、大腸から小腸にかけてさまざまな種類ごとにグループをつくり、腸の壁面にすんでいます。この細菌たちの生態系を顕微鏡で見ると、花が咲き誇る“花畑=フローラ”のように見えることから「腸内フローラ」と呼ばれています。
 
腸内フローラを形成する腸内細菌は、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の3種類に大きくわけられます。これらは腸内でつねに勢力争いをしていて、食べ物や生活習慣など、ちょっとした変化によって、善玉菌が多くなったり、悪玉菌が多くなったりします。善玉菌だけがあればいいというわけではなく、「善玉菌20%、悪玉菌10%、日和見菌70%」の腸内フローラのバランスが理想といわれています。

善玉菌

善玉菌には、腸内の食べカスや老廃物の分解を促す働きがあります。また、食物繊維やオリゴ糖などをエサとし、それらを発酵(分解)することよって「短鎖脂肪酸(酢酸、酪酸<らくさん>、プロピオン酸など)」を作り出しています。その結果、腸内が酸性に保たれ、悪玉菌の増殖をおさえて腸の運動を活発にし、食中毒菌や病原菌による感染や発癌性をもつ腐敗産物に負けない腸内環境をつくります。
代表的な善玉菌は以下に挙げたビフィズス菌、乳酸菌で、このほか、納豆菌、酵母菌、フェーリカス菌、アシドフィルス菌などがあります。

ビフィズス菌

大腸にすみつき、乳酸と酢酸を作り出し、腸内環境のバランスを整えます。また、腸管を適度に刺激してぜん動運動を促進させる働きや、腸内の免疫細胞を活性化させ免疫力を上げる働きを持ちます。より多く増やしたいのは、ビフィズス菌です。

乳酸菌

主にブドウ糖から乳酸を作り出す細菌の総称です。ブルガリア菌やガセリ菌などがこれに該当します。悪玉菌の増殖抑制の働きをし、腸内環境を整えます。

悪玉菌

たんぱく質や脂質が中心の食事・不規則な生活・ストレス・便秘などが原因で腸内に増えてきます。善玉菌が腸内の食べカスや老廃物の分解を促して腸内を酸性にする作用があるのに対し、悪玉菌は、食べカスや老廃物を腐敗させ、有害物質やガスを発生させます。

ウェルシュ菌

腸内でタンパク質などを腐敗させ、有害物質を発生させます。老化や腸内の腐敗、発がん性物質との関係があるとわれています。

大腸菌(病原性)

増えすぎない限り、害はありませんが、加齢や偏った食生活を続けると腸内で増殖します。増えすぎると、腸内の腐敗を進め、下痢や便秘の原因となるだけでなく、免疫力を低下させます。

日和見菌

善玉菌、悪玉菌の優劣の様子をみて有利な方に協力する菌です。腸内フローラの70%を占めていますが、わかっていないことも多く未知な菌のグループです。日和見菌が悪玉菌側につかないように善玉菌を活性化させることが大切です。

バクテロイデス

腸内に多く存在し、普段は無害です。ビタミンを合成し、体内に侵入してくる病原菌を防ぐ働きをしますが、悪玉菌側についてしまうと、大腸菌と同じ働きをし始めます。

大腸菌(無毒株)

無毒株の大腸菌は害のない細菌ですが、悪玉菌側につくと、ほかの悪玉菌ともに腸内の腐敗を起こします。

連鎖球菌

免疫力が落ちていないときは無害な菌ですが、体調や、免疫力が落ちている時は悪玉菌について病原菌になります。

腸内環境が整ったときのメリット

腸内フローラのバランスを整え、善玉菌が優勢な腸内環境を保つことで、便秘など不調の改善だけでなく、免疫力の向上、太りにくくなる、肌がキレイになるなど、体質の改善も期待できるといわれています。

便秘の改善

食べカスや老廃物が大腸に運ばれたとき、腸内フローラのバランスが良ければ、善玉菌により発酵(分解)が起こり、悪ければ悪玉菌により腐敗が起こります。善玉菌が優勢な状態であれば、発酵により良いうんちが作られ、スムーズに体外へ排泄されます。

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免疫力の向上

腸にはたくさんの免疫細胞が集まっており、腸内細菌とともに、私たちの全身を病気から守る「免疫力」をコントロールしています。善玉菌が食物繊維をエサとして食べることで作り出す短鎖脂肪酸には、免疫細胞を活性化させる作用があり、免疫力アップにつながるといわれています。

痩せやすく、太りにくくなる

近年、肥満と腸内フローラの関係についての研究が進んでいます。その中で、腸内細菌が作る短鎖脂肪酸は、「脂肪が体内に過剰に溜まるのを防ぐ」「食欲を抑えるホルモンを増加させてくれる」「インスリンの分泌を促進して血糖値の上昇を抑える」「代謝を上げる」などのさまざまな働きをすることがわかっています。

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美肌効果

腸内環境が良く、体内の老廃物がきちんと排出されれば、老廃物が腸内に溜まり腐敗することで発生する有害物質が腸を通して血液に吸収されることもなくなるため、肌トラブルも起きにくくなります。また、腸内細菌が「エクオール」という美肌成分を作り出すこともわかっています。

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腸内環境を整えるために摂りたい食物繊維

腸内フローラのバランスを良くし、腸内環境を整えるために重要なのは、毎日の食事です。私たちが食べているものの一部は腸内細菌が食べています。腸内細菌は腸内に入ってきたものを食べるかわりに、ヒトが作り出せない短鎖脂肪酸やビタミン、アミノ酸を作ってくれます。腸内細菌が喜ぶものを食べることが、めぐりめぐって私たちの健康につながっているのです。腸内細菌が特に喜ぶ栄養素は食物繊維です。
食物繊維は、一言でいえば「体内で消化されないもの」で、人間の消化酵素で分解されない食物成分のことを指します。胃や小腸で消化・吸収されずに、そのまま大腸にまで到達し、腸内細菌のエサとなったり、便となって排出されたりします。発ガン物質などの有害物質を吸着して体外に排出する働きや、腸内の善玉菌を増殖させる働きがあることもわかっています。
 
食物繊維は大きく「水溶性食物繊維」「不溶性食物繊維」「第三の食物繊維」に分けられます。以下で具体的な働きについて解説します。

水溶性食物繊維

大腸内で善玉菌のエサとなって発酵し、短鎖脂肪酸を作り出します。また、腸内で水を含んで膨らんでゲル状になり、うんちを柔らかくする効果があります。

不溶性食物繊維

不溶性食物繊維には、うんちのかさを増して排便を活発にする働きがあります。

第三の食物繊維

水溶性と不溶性食物繊維両方の働きを合わせもち、「第三の食物繊維」とも呼ばれる「レジスタントスターチ」のことをさします。

レジスタントスターチ

大麦などの穀物に多く含まれます。消化されにくいので、乱れやすい大腸の奥にまで届き、栄養が届きづらい大腸の奥に棲む腸内細菌にエサを届けることができます。水溶性食物繊維と第三の食物繊維は、合わせて発酵性食物繊維とも呼ばれることがあります。

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身近な食品から摂れる食物繊維

前述したさまざまな食物繊維をバランス良くたっぷり摂るには、一種類の食材だけを大量に摂るのではなく、いろいろな食材からタイプの異なる食物繊維を摂るように心がけましょう。
また、食物繊維を摂ろうとたくさんの野菜を食べたのに、不溶性食物繊維ばかりに偏ってしまうこともあります。葉物野菜やきのこに含まれる食物繊維は不溶性食物繊維が圧倒的に多いのです。たとえば、便秘気味だからといって、うんちのかさ増しをする役割をもつ不溶性食物繊維ばかりを摂取すると、腸内でつまってしまい便秘をひどくしてしまうこともあります。
腸内細菌のエサとなる水溶性食物繊維や第三の食物繊維は、多くの現代人に不足していると言われています。腸内環境を整えるためには、意識的にいろいろな食材から食物繊維を摂り、理想的な腸内フローラを保つことが大切です。

見落としがちな穀物の食物繊維

グラフからもわかるように、食物繊維は、野菜やきのこ類よりも穀物(大麦や玄米)に比較的多く含まれています。特に大麦には水溶性、不溶性の食物繊維がバランス良くしかもたっぷり含まれています。
近年、糖質制限ブームで穀物類を控えている人もいるかもしれませんが、1日の食事に穀物を取り入れることで、かしこく食物繊維を摂取しましょう。
 
監修:松生恒夫(松生クリニック院長)
 
<参照>
『排便力をつけて便秘を治す本』(光文社知恵の森文庫)松生恒夫
『寿命の9割は腸で決まる』(幻冬舎新書)松生恒夫
『やせる! 若返る! 病気を防ぐ! 腸内フローラ10の真実』(主婦と生活社)NHKスペシャル取材班
『腸を整えれば病気にならない~腸内フローラで健康寿命が延びる』(廣済堂健康人新書) 辨野義己
『腸がスッキリすると絶対に痩せる!』(三笠書房)辨野義己
『免疫力は腸で決まる!』(角川新書)辨野義己
 
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photo:Getty Images