これから中古マンションを買おうとしている人が、チェックすべき場所とは?(写真:5x5x2/PIXTA)

「マンションは新築より中古」の流れが止まらない。2018年1月22日に発表されたREINS(レインズ:東日本不動産流通機構)の「首都圏不動産流通市場の動向」によれば、2017年の首都圏中古マンション成約件数は、前年比0.4%増の3万7329件と、3年連続で前年を上回った。2年連続で過去最高を更新しつつ、首都圏の新築マンションの発売戸数を引き離している。

中古を買ってリノベーションするスタイルが年々浸透

中古マンション市場が活況を呈す理由は、新築マンション価格の高騰によって需要の受け皿となったこと、中古マンションを買ってリフォーム・リノベーションをする志向が浸透し始めたこと、リノベーション事業に携わる業界プレーヤーが増加し、需要を満たしていることなどが考えられる。

2018年4月の新築マンション発売価格は、首都圏平均で5548万円(不動産経済研究所「首都圏市場のマンション動向」)と高止まりが続く中、中古マンション成約価格は3364万円(REINS)と2184万円も安い。ここまでの開きがあると、中古マンションを買って室内をすべて取り壊し、1000万円程度かけて造り替えても、なお新築とは1000万円以上の価格差があることになる。リノベーションによって個人の嗜好も反映できることも加味すると、中古マンションが新築マンションに比べて魅力的に映るのも当然といえるだろう。

しかし、中古マンションにも、やはり落とし穴がある。それはマンションの「管理状態」だ。この質のいかんによって建物の寿命はもちろん、現在から将来にわたる資産性に大きな差がつくことになるのは業界の常識だが、一般にはまだまだ知られていない。この質をきちんと見極めるには、やや専門的な知識が必要だ。しかし、実は誰にでも一定程度の見極めができる簡単なノウハウがある。これから中古マンションを買おうとしている人に、見逃してほしくないポイントについて伝えていきたい。

まずは「見た目」から考えてみよう。中古マンションを見学する際には、つい部屋自体に関心が行きがちだ。しかし、いきなり室内を見ることを焦るのはよくない。何よりも先に、「共用部」を注意深く観察してみるべきだ。たとえば、外壁はいい目安になる。昨今のマンションはタイル張りが主流だが、ざっと見渡してみて、タイルがはがれているところ、あるいは浮いているようなところはないだろうか。タイルは落下すればたちまち凶器となりうるうえ、このような状況を放置していれば躯体そのものが長持ちしない。

これは、廊下や階段の状態についても同じことがいえる。経年によって徐々に劣化していくのは建物の宿命だ。しかし、一定の幅や深さがあるひび割れや、一定量以上の白いカルシウム成分が浮き出てくる白華現象、コンクリート内部の鉄筋が水に触れたことで錆び汁がしみだしてくる現象などを長らく放置しておくと、建物内部を傷めることになる。マンション管理組合がこうした問題を把握しているかを確認し、わかっているのであればどのような対処を行う予定があるかを聞いてみよう。これは、不動産仲介担当に確認してもいいし、現地に管理人がいれば、直接尋ねてみてもいいだろう。

細かいところもチェックする価値がある

エントランスまわりの清掃状態や、ポストまわりの整理整頓具合など、細かいところもチェックする価値がある。掲示板に数カ月も前の古い情報が貼られていたり、貼ったものが破れている、整えて貼られていないといった事実からは、組合運営の質を推し量ることができる。

こうしたところが雑然としているのは、直接的には管理員の仕事が行き届いていないからだ。しかし、背後にはそれを容認している管理組合の存在がある。マンション管理について、その程度の関心しかないということだ。

また、管理組合運営の内実をきちんと確認することも重要だ。管理組合の総会や理事会の「議事録」は、これまで管理組合がどのように活動し、考えてきたかを把握することができ、そのマンションで繰り広げられている問題が明らかになる。たとえば、どの程度の管理費・修繕積立金滞納があり、それに対してどのような対応をしているか。駐車場や駐輪場、ごみ置き場、廊下、そして先に述べた外壁など共用部の使い方や、コンディションに何か課題があるのか。今後の修繕計画はどのようになっているかなど、マンションのさまざまな事情が記載されているはずだ。

また、「長期修繕計画」を見れば、今後の建物修繕予定がわかるのはもちろん、たとえば数年後に数十万円、時には100万円単位の修繕一時金が予定されていることも把握できる。多くのマンションでは、新築時に売り主が策定した長期修繕計画を、そのまま変更せずに使用していることが多い。しかし、大抵の場合、新築当初から当面の間は修繕積立金を低額に設定しておき、10〜15年目ごろに一気に数倍になったり、多額の一時金を徴収する計画となっている。

これは売り主が新築販売時に売りやすくするための措置で、表面的には買主に優しいように見える。ただ、買って住んだ後に徴収額がアップすることや、一時金が必要になることを、実は把握していない所有者も多い。優秀な管理組合は、早期にこの長期修繕計画を見直し、毎月均等方式にすることで途中の大幅アップや一時金徴収といった事態を回避している。

ところが、こうした議事録や長期修繕計画などの内部書類については、マンション購入予定者などの第三者に閲覧させることは義務ではない。あくまで任意で閲覧をお願いすることになる。筆者は20年前から、中古マンション取引時におけるこうした書類の提示義務化を訴えてきたが、現実にはそうなっておらず、実は閲覧に応じるマンションのほうが圧倒的少数派だ。

内部資料の閲覧に応じるマンションは自信がある

逆から考えると、閲覧に応じるマンションはその情報開示姿勢だけで好感が持てる。自らのマンション管理運営に自信があるとか、情報開示の重要性を理解している組合員が多いということだ。

修繕積立金の滞納がまったくないマンションは少数であるし、多くの人が住んでいる以上、共用部の使い方に課題が見当たらないマンションなどもほぼ存在しない。経年によって建物が劣化していくのも当然のことだ。要は、こうしたマンションの宿命ともいえる各種の課題について、所有者で構成するマンション管理組合がどんな取り組みをしているのか。その具体的な「姿勢」を見極めることが、中古マンション購入で成功するためには大事なのだ。

米国などでマンションを購入する際には、契約時には各種議事録を含むマンション管理にかかわるあらゆる書類が契約者に送られてくる。その膨大な書類を確認し、納得したといった趣旨で最終的に買い手もサインをする。情報開示が徹底しているし、それがよい管理をするインセンティブとなっているのだ。日本でも、マンション管理の質で思い切り資産格差がつくような世界を、筆者としても早く創りたいと考えている。