原口は「どの試合を観ても選手がやりづらそうでした」と苦笑いした。写真:JMPA代表撮影(滝川敏之)

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「どの試合を観ても選手がやりづらそうでした」
 
 原口元気が苦笑した。
 苦笑の素は、長く深い芝である。
 
 ワールドカップの場合、大会期間中はFIFAがベースキャンプ地を管理しており、ピッチは各試合会場と同じ状態(長さ)に整えられている。広大な国土を持つロシアは各開催地でピッチの状態が異なるが、ワールドカップを見ていると原口が言うようにどの会場も基本的には芝が長く、選手がやりづらそうにプレーしている。
 
 実際、メッシはドリブルにキレがなく、クリスティアーノ・ロナウドも不規則な回転をするドリブルをほぼ封印し、カウンターの矢に徹していた。選手たちが放つグラウンダーの縦パスをよく見ているとボールがブレ球のようになっている。長い芝はパス主体のチームを始め、それぞれのチームの戦いに大きな影響を与えているのだ。
 
 日本も長い芝の影響を受け、対応に苦慮している。
 
 GKの東口順昭は「びっくりするぐらい変化する。真っ直ぐにころがらず、波打つように変化するのでバックパスは特に気を付けないといけない」と、GKとして長い芝の難しさを実感している。
 
 原口も「裏狙いのパスも止まるし、パスでけっこうやり過ぎるとつかまるなというイメージがある」と、パスを回す際、ボールが不規則に動いたり、止まったりするのを狙われる可能性があるので、注意しなければならないと考えている。
 
 長友佑都、宇佐美貴史、大島僚太も同様の印象を抱いており、日本の選手は一様に「長い芝でプレーする難しさ」を感じている。
 
 それは日本の選手が長い芝に慣れていないからだ。
 
 日本代表が最終予選や親善試合で使用する埼玉スタジアムは20ミリで整えられており、試合の時にはチームの良さを出せるように水を巻いてボールスピードを高め、よくボールが転がるように管理されている。ガーナ戦が行なわれた日産スタジアムはさらに芝が短く、全体が15ミリに揃えられていた。
 
 現在、日本代表のキャンプ地であるロシア1部リーグのルビン・カザンの施設は24ミリに整えられている。コロンビア戦が行なわれるサランスクは、さらに芝が長いという話だ。
 
 芝の長さが2ミリ違うだけでボールタッチの感覚、パスの感覚、身体に感じる疲労感が異なるという。原口と乾貴士、武藤嘉紀がカザンでの初日、長い芝でボールが止まり、ブレるように動くので、どうやればイメージ通りのドリブルができるのか、意見を交換し合った。ドリブラーにとっては芝の長さは得意の型で仕掛けられるかどうかの生命線になるからだ。
 
 芝が長いと引っ掛かりが強すぎてしまうので、ポイントで芝を切るようにしないと芝がスパイクと絡まってしまう。馬力が必要とされ、その分、スタミナの消耗度も早い。また、パスも通常の感覚で出すと精度やスピードが落ちてしまう可能性がある。日産スタジアムと10ミリ以上違う芝の差を自分の身体と感覚に染みこませていかないといけない。
 
 ワールドカップのような質が高く、高度に集中した試合では、小さなミスが許されない。

 日本は、いつもの自分たちのプレーを出しにくいピッチコンディションの中、ミスを許されない戦いを強いられ、勝つことが求められる。これは非常に難易度が高い。
 
 それがワールドカップなのだが、ただ日本だけが長く深い芝に苦しむのではなく、コロンビアも同じ状況だ。最終ラインからビルドアップ時、コロンビアがいつも通りにボールを回しているようであれば、ボールが止まるのを見越して取りにいくことができる。そういう狙いを含めて、選手たちは深く長い芝にどのくらいアジャストする能力を見せて戦えるか。
 
 10ミリの長さの克服ができれば、勝機が見えてくるはずだ。
 
取材・文●佐藤俊(スポーツライター)