ジメジメとした憂鬱な季節といえば梅雨。昨年は九州南部で6月6日頃、東北北部で7月1日頃に梅雨入りした。
 その時期になると、古傷の痛みや頭痛、憂鬱な気分を訴える人たちがいるが、それらは“気象病”の可能性がある。同病について英語では、メテオロパシー(meteoropathy)という名称があるが、日本国内では正式な病名ではない。それだけ認識されていないということだ。
 梅雨時期だけでなく、快晴の日とどんよりとした雲の日を比べれば、体調に違いがあることは多くの人が経験していることだろう。

 気象病外来を開設している『せたがや内科・神経内科クリニック』の久手堅司院長はこう説明する。
 「気象病は、気圧差、温度差、湿度を要因とし、めまいや吐き気、頭痛、肩こり、首こり、全身の倦怠感、関節痛、うつ症状、不安が強くなるといった様々な症状を引き起こす病の総称です。当院で気象病外来を開設し1年半が経過しましたが、こうした症状を訴える患者さんが、下は小学生から上は80代の方まで新患で70〜100名が来院します」

 梅雨時期に体調不良を訴える人が多いのはなぜなのか。
 「梅雨時期の体調不良は、気圧の変動がポイントです。普段、日常生活で気圧を意識することはあまりありませんが、実際には1平方メートル当たり10tの重さが体に加わり、この外からの圧力に対し体内の圧力がバランスを保っているため意識せずに生活できているのです」(同)
 気圧の変動は、ポテトチップスの袋が、気圧の低い上空の飛行機内でパンパンに膨れ上がっているのをイメージすると分かりやすい。

 それでは、気圧の変動はどのようなメカニズムで体に影響を与えているのか。
 久手堅院長が続ける。
 「まず、気圧は耳の奥の内耳にあるセンサーで感知されます。飛行機に乗り、高度の変化(気圧の変化)に伴い、耳の調子が悪くなった経験がある方もいるでしょう。内耳で感知した気圧は、内耳につながっている平衡感覚に関係する前庭神経を通じ脳へ伝わります。さらに、脳から視床下部に中枢がある自律神経へと伝わり、自律神経で異常を感知して、交感神経、副交感神経のバランスが崩れ様々な症状が現れるのが気象病のメカニズムです。寒暖差(前日比と同日内の日内変動)が7℃以上あると、皮膚の温度のセンサーを介し、自律神経が温度調整をするために疲労してしまう。これも、寒暖差による気象病です」

 自律神経とは、緊張時や運動時などに優位に働く交感神経と、リラックス時などに優位に働く副交感神経からなる。
 「来院される患者さんの多くが仕事で長時間パソコンと向き合うデスクワークで、プライベートでもスマートフォンを長時間利用したりと自律神経のなかでも交感神経が優位に働いている緊張状態にある時間が長いんです」(同)

 気象病には、その他にも男性より女性のほうがなりやすいことや、ピークは女性が20代〜30代、男性が30代〜50代、さらに冷暖房が効いている環境ですごすことが多い場合や、姿勢が悪い、運動をほとんどしない人などに見られる傾向があるという。
 また、気圧の変動に敏感なため、中にはゲリラ豪雨を予測できたり、沖縄に台風が近づくのを遠く離れた東京にいながら察知できる人もいるというから驚きだ。

 気象病と診断されると、どのような治療を受けるのだろうか。『せたがや内科・神経内科クリニック』では、頭痛やめまいに効く漢方薬や乗り物酔い用の薬を処方するという。
 「乗り物酔いは、車内で頭が揺れることによって気持ちが悪くなる。同様に、気象病も気圧によって頭部が揺らされる状態と考えられます。天気予報やインターネットで気圧をおおよそ把握しておけば、事前に不調が起きそうか予測できるので、酔い止め薬を服用することで症状を軽減することができます」(同)