「ブラジル大会の時は理想ばかりを追い求めてしまって、結局ワールドカップの舞台で失敗したじゃないですけど、結果が出なかったので。僕はそれを経験して、理想ばかりでは勝てないことを知った。とにかく自分たちが下手だということを、自分たちが強くないということをまずはしっかりと認めたうえで 自分たちにできるサッカーを1人ひとりが100パーセント出し切るって、ただそれだけかなと」
 
 自分たちが下手だということを認める──。ここで思い出されるのが、8年前、南アフリカ・ワールドカップ前の事前合宿での田中マルクス闘莉王の言葉だ。
 
「日本らしいスタイル、パス回しとかもちろん理想は大切だけど、下手くそは下手くそなりに泥臭くならないと」
 
 この闘将の檄もあり、それまで不調だった当時の日本代表はワールドカップの本大会でベスト16進出と躍進を遂げる。その原動力となったのは、戦う、走る、そうした根本的なファクターだった。今になって、改めて、長友は闘莉王ら大先輩の行動や言動を偉大だと感じている。
 
「今それが身に染みています。俊さん(中村俊輔)のあの行動、あの時の闘莉王さんの言動、そのすべてが染み渡るじゃないけど。自分にやれることはサッカー以外でもあるというのは感じているんで。あの時、どういう想いでね、ベテランの選手たちが僕たちに接してくれたのか、今になって痛いほど分かります」
 
 ロシアのカザンに入ってからの盛り上げ方についてはまだ「答が見つからない」という長友だが、すでに戦闘態勢には入っている。
 
「ただ、自分自身は自分にやれる最善のことをやっているつもりだしね。それを全部やり尽くして、それで出た結果ならなんでも受け入れられると思っていて。だからこそ、金髪もそうだし。それはチームのためでもあるし、自分のためでもあるし。もちろん、プレッシャーもそれ以上に掛かるし。でも、そのプレッシャーに打ち勝って、最高に躍動したいなという気持ちが強い」
 
 こうした言動を聞いていると、今の長友はもはや代表チームの揺るがない精神的支柱だ。闘莉王の精神はこの男の心にしっかりと刻み込まれている。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)

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