皮膚の色が白く抜ける? 「尋常性白斑」という病気をご存じですか?

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執筆:藤尾 薫子(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ

「尋常性白斑(じんじょうせいはくはん)」

は、水虫、円形脱毛症と並んで皮膚科の三大難治疾患と見なされ、俗に「しろなまず」とも呼ばれる皮膚の病気です。

命に別状はないのですが、患者さんの生活の質が低下して、社会活動に影響を与えることもあります。

世界的歌手の故マイケル・ジャクソンさんも罹っていたといわれています。

どのような病気なのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

皮膚の基底層に起こる尋常性白斑

皮膚は

表皮(ひょうひ)・真皮(しんぴ)・皮下組織

の三層構造になっています。

身体のいちばん外側の「表皮」はさらに、

角質層・顆粒(かりゅう)層・有棘(ゆうきょく)層

、そして、

基底層

によってできています。

基底層は表皮の一番奥側の真皮との境目にあって、95%を占める

「基底層細胞:表皮ケラチノサイト」

と5%ほどの

「色素細胞:メラノサイト」

からなっています。

そして、「表皮のもととなる新しい細胞を生み出す」、「基底膜で真皮をダメージから守る」、「メラノサイトがメラニン色素を放出して真皮を紫外線からブロックする」、という三つの役割を担っています。

尋常性白斑はこの基底層に分布している色素細胞が、何らかの原因で減少したり消失したりする病気です。

メラノサイトが減少・消失すると、紫外線から皮膚を守る色素ができないために、皮膚の色が白く抜けていくのです。

この病気は小児から高齢者まで幅広く発症しますが、10〜30代、とくに20代をピークに発症しています。

男女差はほとんどなく感染もしません。

しかし、三大皮膚病と称されるほど治りにくいともいわれています。

尋常性白斑の症状と原因

尋常性白斑の症状は、その名の通り、大きさがまちまちの白い斑点(白斑)が全身に出現します。

全身ところかまわず突然に色素が抜けて皮膚が白くなる病気です。

通常かゆみや痛みはまったくありません。

また、原因は先天的なものと後天的なものとに分けられていますが、日本皮膚科学会(公益社団法人)によると、先天的である場合、

メラニン色素合成遺伝子の変異や欠失

メラニン細胞内輸送分子の異常

メラノサイト幹細胞の異常

などが挙げられています。一方、後天的である場合、

自己免疫性の異常

酸化ストレスなどによるメラニン産生の障害

薬剤や化学物質によるメラノサイトの障害

感染症(梅毒など)

などが挙げられています。

とくに免疫システムに異常が生じて、自分の色素細胞を攻撃することで発症しているのではないかという「自己免疫性」が有力であるようです。

しかし、まだ原因解明には至っておらず、自律神経の異常が原因という説もあるようです。

尋常性白斑の治療法

治療には薬物療法と光線療法があり、おもに次のような内容になります。

「薬物療法」

・副腎皮質ステロイド薬:免疫の働きや炎症を抑える
・免疫抑制剤:免疫の働きを抑える
・ビタミンD3:皮膚細胞の増殖や炎症の抑制に用いる

「光線療法」

・紫外線療法:症状が出ている部位に紫外線を当てる
・脱色療法:皮膚の白斑が見られないところを脱色して白くする。
 身体の半分以上に白斑がでている、ステロイド薬や紫外線療法で効果が見られない、などのケースで施される


尋常性白斑は合併症を発症するケースが少なくありません。

それらの治療も必要となってきますが、次のような病気が挙げられています。

自己免疫性甲状腺機能異常(バセドウ病や橋本病など)

膠原病

シェーグレン症候群

慢性C型肝炎

糖尿病

円形脱毛症

悪性貧血

アジソン病

重症筋無力症

 など


尋常性白斑の患者さんは、他人の視線が気になって精神的ストレスが大きくなる傾向にあります。

また、治りにくいため治療が長期間にわたることが多いようです。

そのことを受けて、心理的負担を緩和するための「カモフラージュメイク」が効果をあげているといいます。

メイクアップ外来を設けている医療機関や、化粧品メーカーが医師の紹介がある患者にメイク指導をするなどのケースがあるようです。


<執筆者プロフィール>
藤尾 薫子(ふじお かおるこ)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供