面白みに欠けるメンバー、と言ったら失礼だろうか。ロシアW杯の日本代表である。
 
 ベテランを外せとも、若手を選べとも言うつもりはない。W杯で戦えるコンディションが整っているなら、本田圭佑も、岡崎慎司も、香川真司も日本に必要な戦力である。

 彼らならではのモチベーションがある。ブラジルW杯での悔しさだ。最後のW杯になることも考えられるロシアで、4年前のリベンジを果たす──それこそは、彼らを含めたブラジルW杯のメンバーが胸に宿す思いだ。

 対戦相手の立場で考えてみる。ブラジルW杯のメンバーが11人を数える日本は、コロンビアやポーランドにどのように映るのか。経験を持ったチームと評価されそうな一方で、驚きのないチームとも思われてしまいそうだ。

 長友佑都も、香川も、本田も、岡崎も、対戦相手からすれば既知の存在である。それだけでない。4年前以上に、彼らは脅威の存在となっているのか──迷わずに首肯することが、僕にはできない。

 4年前に比べて衰えたとは言わないが、対戦相手に与える威圧感が増しているとは思えないのだ。日本にとっては計算が立ち、信頼を寄せられる選手たちではあるものの、対戦相手からすれば分かりやすい選手が多いのである。

 ならば、5月21日からの合宿に参加していた浅野拓磨、井手口陽介、三竿健斗を選ぶべきだったのか。合宿のメンバーからも漏れた中島翔哉、久保裕也らは、やはり必要だったのか。

 ここでも迷わずに首を縦に振れない。浅野と井手口については、5月31日の会見で西野監督が説明したように、ゲーム勘やゲーム体力に不安が付きまとう。実戦から離れていた選手は、プレーの選択肢がどうしてもセーフティになりがちだ。安全第一のプレーでは、相手に脅威をもたらせない。若さが秘める大胆さが、影を潜めてしまう。彼らを選ぶことには、リスクがあった。

 中島と久保はどうか。

 移籍1年目のポルトガルリーグで2ケタ得点をマークした中島は、いまもっとも勢いのある日本人アタッカーと言っていい。久保はクラブ事情でリオ五輪の出場を断念した悔しさを温めてきた。サイドアタッカーの枠で彼らを入れても良かったはずだが、経験者を押しのけてメンバーに加えるだけの明確な理由は、残念ながら見つけにくい。

 サッカー専門誌の元編集者だった経験から言うと、今回のメンバーはとても、とても悩ましい。チームのシンボルは誰か、雑誌の表紙にするとしたら誰かと聞かれたら、かなり迷ったすえに吉田麻也か長谷部誠を選ぶ。吉田はCBで、長谷部はリベロでの起用も視野に入るボランチだ。どちらも攻撃的な選手ではない。

 つまり、日本の攻撃は不確定要素を含んでいるということである。それでW杯を勝ち上がることができるのか。疑問符を打たざるを得ない。

 W杯イヤーのテストマッチで結果を残せず、直前の壮行試合で完敗を喫したことなどから、今回のチームは2010年の南アフリカW杯のチームに似ていると言われる。しかし、岡田武史監督は二度目のW杯だったのに対して、西野監督は今回が初めての采配だ。川口能活や中村俊輔のようなサブの立場でチームを盛り上げるベテランが登場するのかも、現時点では分からない。8年前の本田のような新鋭の野心家も見当たらない。10年W杯との共通点ばかりではないのだ。

 スケジュールを細かく見ていくと、実は本当に時間がないことに気づく。ガーナ戦の次に練習をするのは、オーストリアへ移動した6月3日になる。前日はミュンヘン経由での長時間移動だから、この日は軽めの練習になるだろう。

 翌4日から本格的なトレーニングに入るとしても、7日はまた移動である。8日のスイス戦を挟んで9日も移動で、10、11日とトレーニングをしたら12日にはパラグアイ戦だ。

 翌13日にはオーストリアからベースキャンプ地のカザンへ移動し、5日間のトレーニングを挟んで19日のコロンビア戦を迎える──。

 限られた時間で成果を求めようと考えたときに、西野監督は計算できるチーム編成に辿り着いたのかもしれない。それが、面白みに欠けるものだとしても。