by Gaetano Virgallito

SNSアカウントやYouTubeチャンネルを持っている人の中には、「今日は子どもの誕生日!」「子どもを連れて遊園地にやってきました!」というコメントと共に、子どもの顔写真をアップする人がいます。中にはそれをもとに収益を上げている人もいますが、The Guardianは「子どもの顔写真をむやみにインターネットで公開するべきではない理由」をまとめています。

The 'sharent' trap - should ​you ever put your ​children on social media? | Life and style | The Guardian

https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2018/may/24/sharent-trap-should-parents-put-their-children-on-social-media-instagram

子持ちのブロガーやSNSユーザーが投稿する写真を見ていると、「アカウントを持っている本人よりも、その子どもの写真のほうがたくさん投稿されている」というケースを目にすることがあります。海へ遊びに来た時の記念写真、クリスマスのプレゼントで喜んでいる写真、生まれてすぐの赤ちゃんの写真が、SNSにはたくさん投稿されています。中には、まだ母親の中にいる時から白黒のレントゲン写真として、SNSに投稿されているパターンもあります。

近年では「SNSやYouTubeに子どもの写真やムービーを投稿し、広告料を得たりビジネスを展開するのはおかしい」という主張が強くなっています。2018年5月には4人の子どもを持つ有名なインスタグラマーであり、ビジネスも行っていたクレミー・フーパー氏のInstagramアカウントが凍結されるという事態にまで発展しました。48万人のフォロワーがいたクレミー氏のInstagramは閉鎖されたものの、夫であるサイモン・フーパー氏のアカウントはその後も運営が続けられており、サイモン氏のフォロワーは80万人を超えているとのこと。



by ld_germain

子どもを利用してビジネスを展開するまでに至る例は少数ですが、SNSを利用している親の多くは、自分の子どもの写真をオンラインにアップロードしています。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスが発表したレポートによると、日常的にインターネットを使っている親のうち4分の3が、オンラインで自分の子どもの写真や映像をシェアしています。

子どもが幼ければ幼いほど子どもの写真をシェアする割合が大きくなり、子どもの写真をシェアする親のうち半分近くは親や友達といった、少数の人々としか写真をシェアしません。ところが、子どもの写真をシェアする親のうち10%は、200人を超える多くの人々と子どもの写真をシェアしており、3%はブログやSNSといったオープンなウェブサイトで子どもの写真を公開しているとのこと。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの社会心理学教授であるソニア・リヴィングストン氏は、「たとえ子どもが幼くても、写真をオンラインで公開してもよいかどうか、しっかり話し合うことが必要です」と述べており、写真の公開について親と子どもがしっかりと話し合い、子どもの意思を親が尊重するべきだとしています。



by Aikawa Ke

臨床心理学者のジュヌヴィエーヴ・フォン・ロブ氏は、「オンラインに写真を公開することは、永続的なデジタルタトゥーとして残り続ける可能性があります」と語り、多くの親が子どもの写真をアップロードすることについて疑問を呈しています。また、ロブ氏は子どもが親を通してインターネットの使い方を学んでいくと指摘し、子どものうちから「人の写真を公開する際には、その人の許可を求めるものだ」と知っておくことが大事だと述べました。

ロブ氏は、子どもを持つ親にとって子どもの写真を公開して多くの親たちとつながり、さまざまなアドバイスや肯定的な言葉をかけてもらい、共感してもらうことは大きな助けになることを認めています。「しかし、それでも子どもが将来大きくなり、オンライン上に残った自分の写真を見てどう思うのか考えて欲しいのです。彼らは恥ずかしく思ったり、不安に思ったり、迷惑に思ったりするかもしれません」とロブ氏は言い、無許可で写真を公開することは親子関係に亀裂を入れるかもしれないと警告しました。

また、ノーザンブリア大学の法学部教授であるクレール・ベサント氏は、子どもにも親が公開する写真を削除するように求める法的権利があると主張します。「子どもはデータ保護法やEU圏内で発効したGDPRを使い、自分の同意なしに公開された写真の削除を求めることができます」とベサント氏は語っています。



by 55Laney69

イギリスのゴールドミス・カレッジで社会メディア論について講義を行うヴェロニカ・バラシ氏は、SNSへ子どもの写真を公開する親について「モラルパニックが起きている」と語り、とても容認できることではないと述べています。バラシ氏は子どもの顔写真がデータとして誰かに保存される可能性だけでなく、政治的な勢力によって子どもの写真が勝手に利用されてしまう危険もあると警鐘を鳴らします。

リヴィングストン氏によれば、子どもの顔写真をアップするブロガーやSNSユーザーの多くは、自分の子どもを肯定的な文脈で使うように気を付けているとのこと。しかし、「それでも親は子どもの顔写真がデジタルフットプリントとして記録され、広くシェアされる事態について、真剣に考えるべきなのです」と述べました。

マンチェスター・メトロポリタン大学でデジタルマーケティングの講師を務めるベックス・ルイス氏は、「子どもの写真を公開する時には、子どもの制服を写さないようにし、決まった生活パターンがあることを匂わせないようにしてください。また、親が服をはだけた状態の写真を公開したくないのと同じように、子どもも服がはだけた写真を見られたくないということを忘れてはなりません」と語り、写真をシェアする時の注意点を語ります。ルイス氏は加えて、写真の位置情報をオフにすることの重要性も説き、デジタル社会においては些細なことがプライバシーの流出につながると話しました。



by Rolands Lakis