井の頭公園内にある「お茶の水」の湧き水で、鷹狩の休憩時に徳川家康がお茶をいれたという逸話があります。



2017年の井の頭公園100周年記念企画として「井の頭千人茶会」プロジェクトが発足し、今年「井の頭千人茶会 Green Tea Picnic 2018」の開催が決定。流派・形式・茶葉など問わず、ピクニック感覚で楽しめるということで筆者も足を運んでみました。

開催日に込められた想い


開催日は5月2日。「お茶の関係者の方々にとって大変忙しい日なのですが、無理を言ってご参加いただきました」と語ってくれたのは、実行委員代表の高橋桂子さん。



実はこの日は毎年「茶摘み」が始まり、この日にお茶を飲むと長生きするともいわれる「八十八夜」なのでした。散歩客も多く、たまたま公園に足を運んだことをきっかけにお茶を飲む人もいました。



日本茶、紅茶、発酵茶から新種のお茶まで!さまざまなお茶を堪能


会場には茶人ブース、野外ステージ、物販ブースなどが登場。茶文化を体験できる茶人ブースでは、チケット購入で様々なお茶を体験できます。

イケメン執事さんたちが優雅なティータイムを演出してくれる「CHEZSICA(プライベートサロン シェシカ)」。こちらの紅茶教室では、スリランカのお茶『キリテー』をおすすめしてもらいました。「スリランカは粉ミルクが主流です。全粉乳なので濃厚でまろやかですよ」とのこと。



まずは好みの茶葉を選び、粉ミルクを入れます。




そして混ぜるために、激しいパフォーマンス! そのお味は……うん、美味しい! 「粉ミルクだからこその、ブクブクという泡立ちがいいんですよ」との説明。納得です。




お隣のThe Tea Companyでは、日本茶の飲み比べ。オシャレなボトルが目をひきます。「レストランでのワインのように、お茶の味わいを楽しんで欲しい」そうです。




ボトルからお茶を注ぐ、ちょっと不思議な体験。フルーティな香りを楽しむお茶もあれば、色合いも濃厚で食事が進みそうなお茶もあります。同じ日本茶でも全然違うんですね〜。外国人のお客さんが一杯一杯丁寧にテイスティングしていたのが印象的でした。




大妻女子大学のブース「お茶大学」では、古代中国の黒茶の茯茶(フーチャ)と、近年新しく開発されたギャバロン茶の、新旧2つを提供。




効能の説明展示に加え、お茶に関する多くの著書がある“お茶博士”こと大森正司名誉教授がいらっしゃり、ご自身の経験に基づく多様なお茶話を伺うことができました。




スリランカの本場の茶園や国内外の買い付けをはじめ、紅茶の本質にこだわるレンファハウス。今回は八十八夜のイベントにちなみ、今年の国産品種新茶をプロのこだわりで厳選したそう。花粉症の症状を和らげるとして有名なべにふうきや、べにふうきの親品種などを飲み比べる事で、品種による特徴の違いを感じ、紅茶への興味を深めて欲しいとのこと。




また一度に20杯分の紅茶を淹れる「大量紅茶の淹れ方」も披露。湯を上から注ぐことでポットの中の茶葉の対流を促します。片手で軽々と持ち上げていますが、実は3リットルもの湯が入っているのでコツがいる達人技です。



家康に選ばれたのは、あのお茶でした


井の頭公園野外ステージでは、ペットボトルの「綾鷹」の監修などしている 上林春松本店代表・上林秀敏氏のトークセッション。



昨年2017年の5月に「井の頭千人茶会」キックオフイベントを開催した際に「井の頭公園で当時家康公がどんな“茶”を飲んでいたのか?」という企画を実行委員メンバーが独自に歴史調査。三鷹「井心亭」で室内イベントを開催しました。その調査の結果、宇治の上林春松本店が浮上。そこで今回、徳川家をはじめ大名や将軍家に重用された宇治御茶師の後裔でもある、上林氏をゲストにトークセッションが行われました。

家康・信長・秀吉など武将とのお茶の関わりをはじめ江戸時代の茶文化 (宇治のお茶を江戸城へ届ける「お茶壺道中」は、徳川家の大名行列に次ぐほど重要視されていたとか)など話が尽きません。戦国武将と茶の湯の話から「茶」のルーツを探ってみると、武将と茶は切っても切れない関係だったようです。



最後に語られた「上林春松本店は進化にも柔軟に対応している。自分たちよりもお客様のニーズにこだわる」とのメッセージが印象的でした。

お次は白い「茶室」の紹介。京都の八幡市と東京藝術大学のコラボにより製作したものです。八幡市にある国宝の石清水八幡宮で、崖にせり出す「空中茶室」が発掘されました。それを再現したのが「新・空中茶室 そら」。新規性を取り込み、空中を雲に見立てています。






今回この「新・空中茶室」を借りて、ステージ上で特別茶会「癒しの音色茶会」も開催されました。 コンセプトは日頃の疲れやしがらみを忘れ、ハープやギターの生演奏の音色を聞きながら五感を癒してお茶をたのしんでもらいたいというもの。本格的なお点前パフォーマンスと井の頭池を借景に、優雅な気分で癒しの一服を楽しみました。




全国のお茶から地元の隠れた名店まで。和文化再発見


物販ブースも色とりどりです。鹿児島エリアで注目なのは「鹿児島100円茶屋」。色、味、香りと三拍子そろった鹿児島の一番茶と鹿児島の郷土菓子セットが100円で味わえます。



銘菓かるかんも、あんこ入り・塩豆入りなど種類豊富。折角だから、持参したマイ湯呑でいただきましょうかね。ほどよい甘さと、濃厚なお茶がたまりません。気にいった鹿児島銘菓は、お土産として数百円で購入可能です。



さらに「千人茶会」は地域コミュニティの活性もテーマのため、井の頭公園近くのお店も多く出店。もちろん茶葉や和菓子の店もあります。




紅茶に合う洋菓子やパンも販売されていました。




さらには和文化つながりということで、愛媛の砥部焼や、奈良の手編みの靴下のお店も出店。試しに靴下を購入したら、和紙製で肌触りと風通しが爽快でした。




こういうイベントへの出店は初めて、と語ったのは遠藤製餡さん。あんこ菓子が詰め放題と大サービスでした。




最後に代表の高橋さんに、改めて今回のプロジェクトについて伺いました。

「井の頭千人茶会の発足時から変わらない『三本の柱』があります。ひとつめは『茶文化そして和文化の文化啓蒙』、ふたつめは『茶処をはじめとした地域連携・地域交流』、みっつめが『お茶の苗木を育て→たしなむなど、食育や都市農業につながる茶文化コミュニティの活性化』です。

公園100周年事業に向けて2016年からスタートしている茶の苗木育成プロジェクトをはじめ、『お茶』をキーワードにさまざまな活動を行っています。今回は大変嬉しいことに、千人茶会プロジェクトの主旨に賛同した方たちが茶の苗木を1年がかりで育て、新芽をつんで事務局ブースにお茶を持ってきてくださったり、 成長記録をまとめたファイルをプレゼントしてくださったりしました。

『お茶』をコミュニケーションツールに、お茶が好きな人もそこまでお茶に興味がなかった人も みんなが交流できる夢のあるプロジェクトに育てていきたいと思っています。そして定期的に『世界の茶文化研究室』などワークショップを開催しております。お茶の素晴らしさをユニークな切り口や企画で多くの方に知っていただくきっかけや橋渡しができたらと考えてます」



身近なお茶から楽しいことが広がるなあと感じた、素敵な八十八夜のグリーンティピクニックでした。



(高柳優/イベニア)