個人経営のバーは素晴らしい立地条件にも関わらず、夜だけ営業により昼間はデッドスペース化してしまっていることがしばしば。今回は、筆者がそんなバーの週末の日中を利用し、週末ランチカフェを経営した経験をまとめております。破格すぎる条件でお店をスタートできるまでの経緯は、〜その1〜で!

週末カフェ経営で実感した想定イメージと現実のギャップ

恋愛系では「結婚をする前に相性がいいかどうか、まず同棲して判断すべき」なんて話をよく耳にしがち。これ、自分の店でもできるといいと思います。個人のカフェ経営と聞くと、なんだかまったりと甘やかな響きがしますよね。

しかし、実際は甘いもんじゃない!

……これが、週末カフェを始めた筆者が最初に持った感想です(笑)。前編で書いたような好条件で経営しているにも関わらず、コトミちゃんと筆者の時給は、平均500円を切っていました。週末の下北沢ランチ、細路地だけど1階路面店で、閑散としていたのです。

筆者達がやっていたのは一体どんなお店だったのかというと……。完全にターゲットを間違えていました。自信たっぷりの当時のメニュー構成がこちら。

<ランチメニュー>

・500円ワンコインランチ3種

・700円ランチ2種

※ドリンク、デザートはそれぞれプラス100円

<カフェメニュー>

・コーヒー単体300円〜

安いですよね。ランチメニューはなんと、ワンコイン&700円メニューのみ!

そもそも、コトミちゃんが夜のバーの店員で筆者はその常連。たった2人でやる、週末カフェです。建前では2人とも「バータイムより早く来たいバーの常連さんと、まったり楽しめればいいよね」と話しながらも、内心では「週末ランチだけ大繁盛店になっちゃったりしたら、おいしいかも!ウシシ」と目論んでいました。

そのため、「腕にそこそこ自信はあるけど、素人料理だし、安くしよう。下北沢には若い人が多いから、安い方が入りやすいよね!」とこのようなメニューを決定。安くてそこそこおいしければ、「ファストフードよりウチのほうがいい!」と思われるかもしれない、という考え方をしていました。

今思えば、本当にこれはド素人!大間違いだったのです。

この価格設定は、いうなれば平日の新橋向けでしょうか。安くてそこそこおいしいランチをかっこみに来る人が、どんどん食べて、どんどん回転しないと、採算が合わないのです。

採算面も問題なら、イメージ戦略も大間違い。コトミちゃんも筆者も下北沢付近に住んでいて、店がある場所も我々にとって、いつもの生活圏内でした。しかし、土日の昼間に下北沢に来る人々(お客様)はわざわざ下北沢まで来て、週末くらいはおいしいランチにお金をかけたい人々だったのです。

店の経営は大失敗でも女子として重要な武器は体得できた!

職業としてのコスパは最悪でした。ただ、筆者はこのカフェ経営で、とても重要な学習をしました。それは、女子のモテ要素です!

トンチンカンな経営のせいもあり、週末カフェに来るお客様は新規からリピートする人は皆無(笑)。ほとんどが、夜のバーのお客様。中でも独身男子は、毎週のようにリピートする人が何人もいました。

夜のバーのお客同士としては、筆者とそれほど仲良しでもなかった独身男子たちが、毎週のように週末ランチにやって来るのはなぜか?コトミちゃんがシフトに入っていなくて筆者だけと明らかに知っているときにも、彼らはやってきます。

正直言って、筆者はそれまで、人生でモテたことがまったくありませんでした(これは週1バーテンダーを経験する前の時期です)。

30代にして、女性らしい身だしなみをすれば、女性として扱われる程度の対異性スキルしか持っていなかったのです。つまり服装については多少モテ要素がわかるようになったけど、立ち居振る舞いについては全然わからん!俺は我が道を突き進むぜ!(幼稚園から女子校育ち)と、自由人すぎる状態。

それが週末カフェで、立ち居振る舞いのモテ要素も発見できたのです!週末カフェで得られた、バーの常連客としての筆者にはなかった要素はこちら。

(1)自分がお客でなくなったので、店員(でも、もともと知人)として丁寧ににこやかに相手に接する→感じのいい女

(2)自分が作った料理や、入れた茶などを、綺麗に盛り付けて提供する→料理上手

この2つと、さらにそれまでの筆者にたぶん無かったであろうイメージとして

(3)「メニュー設定失敗してるよね!でも、もうはじめちゃったし、常連のみんなは喜んでくれるから採算度外視でもいいや」とか愚痴ってる→ドジっ娘&人がいい雰囲気

なんと、こんなにもたくさんのものを得られました。実は、この3つがタッグを組んで独身男子を店に呼び寄せていたのです!それに気づけたのは、筆者よりずっと年下のコトミちゃんの発言のおかげでした。

干物女、男性の『外食』の選択要素に『感じのいい女性がいる店かどうか』が関わるという事実に気づく

週末カフェについて相談中、コトミちゃんに「サトシくんとかコウスケくん(バーの常連の独身男子達)って、なんであんな通ってくれるんだろう?」と尋ねたところ、とてもシンプルな答えが。

「女の人と話したいからじゃないですか?」

コトミちゃんは、若いけれどバーテンダー経験は積んだ子です。この言葉、パズルのピースがはまるようにしっくりきました!ご飯を食べたいだけなら牛丼屋や定食屋を選んだほうがいいはずの彼らが、週末カフェにやってくる理由は女の人と話したいからなのか……。

そして、モテないはずの自分にヒキができているとしたら、カフェ店員として新たに出現した要素の中にそれがあるに違いないと、前述のモテ要素が実感として発見できたわけです。

過去記事に「バーテンダーはモテる」と書きましたが、小規模カフェ店員もモテます。接客業を経験したことのない人には、こういう話し方だとモテるというコツを体得する、いいシミュレーションにもなりえるのです。

経営とモテ要素の両方を学べるのがバーの昼間活用である

いずれにしても、個人経営のバーの日中のデッドゾーンを活用してプチ起業という選択肢は、アリだと思います。

先日、情報番組で昼間だけカレーの人気店になるバーが紹介されていました。そういう業態で繁盛し、後に独立した店舗に成長するパターンは、実際に結構ある様子。

雑貨店など、商品陳列を前提とする業態は難しいと思いますが、飲食業やお稽古ごとの教室スペースとしてなど、昼間は閉まっているバーのスペースを活用できるアイデアはかなりあると思います。

デッドゾーン、デッドスペースを活用することで、本格的に起業するより負担の少ないプレ起業やプチ起業が可能になるのです。

「あのバー、昼間、貸してもらえないかしら?」

そんな目論見を抱いてバーに足を踏み入れる、というのも、ちょっと面白いかもしれません。

大家さんがうるさいと借りる側が大変な思いをすることがありますが、バーならお客として入って、大家さんのキャラクターを探ることができます(笑)。店舗起業を目指してらっしゃる堅実女子の皆様、ぜひ視野に入れてみてください!

カフェ経営で女子力は高められる!

<御神酒の手引>
バーのデッドゾーンには、無限の可能性が眠っている!

※ただし、通常のカフェ経営では食品衛生責任者と防火管理者の資格が必要です。バーの場合はオーナーが所持していますが、事前に資格を確認してからご検討ください。