2018年はワールドカップイヤーということもあり、サッカーの話題が豊富だ。ちょっとした親善試合の結果も「予選突破に黄信号」みたいな感じで大きく取り上げられるし、優勝国を予想する記事も多い。
普段サッカーを見なくても、このときばかりはテレビの前にかじりついて、もしくはパブなどに行って観戦する人は多いと思う。サッカーの面白さを味わえるのは、試合を実際に見てこそだ。スポーツニュースなどで結果だけを追ってもあまり面白くない。

というのが常識だと思っていたら、イタリアには試合映像のないサッカー中継があった。なんだそれ、ちょっと紹介してみたい。

必須だと思っていた試合映像が……ほんとにない


詳しい人にはあえて説明する必要もないだろうが、イタリアでのサッカー人気は高い。国内プロリーグであるセリエAはかつて世界最高峰のリーグとされていて、マラドーナとかジダンとか、説明の必要もないような超有名選手が数多く在籍していた。熱狂的なファンは日本以上に多い気がするし、なんだったらサッカーは国技の一つでもある。

そんなイタリアだから、サッカー中継なんていくらでもやっているだろうと思っていた。日本の野球中継みたいに、試合時間にテレビをつけたらすぐ見ることができると思っていたのだ。
ところが、セリエAの試合が毎回欠かさず放送されているのは有料チャンネルであって、無料の一般チャンネルではごく時々しか試合中継はない。代わりに放送されているのは以下のような番組だ。



試合終了後の夜などに放送される解説番組のようだが、こう見えてオンタイムで放送されているサッカー中継だ。ただし試合の映像は一切なくて、レポーターが試合をモニターで見ながら、その流れを口頭で説明するという形式。ラジオみたいなものだと考えれば分かりやすいだろうか。ちなみに、試合の重要な局面はその都度ボードで説明される。



最初は試合映像のないサッカー中継なんて意味あるのかと思っていたが、放映権料を払わずに番組制作できるためか一般チャンネルではよく見かける。よく見かけるということは見ている人も多いのだろう。
ちなみに、リーグの下位チームの試合だけでなく、ユベントスやACミランのような強豪同士の試合でも、この形式で放送されることは多い。

レポーターは、失点したら仕事を放棄してもいい


この番組は一応サッカー中継ではあるが、レポーターは特に中立的な立場というのは意識してなくて、なんだったら下の写真みたいにゴールが決まった瞬間は全力で喜んだりする。このあたりはパブで試合見ながら酔っ払っているおじさんとほぼ変わらない。




そして、贔屓のチームが失点した時は全力で悲しんだりもする。その間、レポーターとしての仕事はもちろん放棄するし、その後しばらくは不機嫌になって黙り込んだりすることもある。
仕事を放棄しているといえばそうなのだが、おじさんの様子が本気で悲しそうで「まあ、悲しいんだものしょうがないよな」という気分にさせられる。(こういう時は、別の人が勝手に喋る)



試合の様子はよく分からないけど、雰囲気は楽しめる


こんなふうに試合映像は見られないものの、得点シーンなどはボード解説があるし、何より登場しているおじさんが全力で喜んだり悲しんだりしているので、なんとなく試合の気分は楽しめる。ある意味ではサッカーの面白さをよく表現しているといえるのかも。

ちなみにこの日はユベントス対ACミランの試合だったが、つい最近までACミランに所属していた本田圭佑(のそっくりさん)が特別ゲストとして登場して度肝を抜かれる。そのまま解説でもするのかと思っていたら、ひとしきり場を盛り上げて退場していった。



試合映像のないサッカー中継、イタリアに来る際はぜひ見てみてください。試合の様子はあんまりよく分からないけど、なんとなく楽しい気分になれますよ。
(鈴木圭)