いよいよ注目の日本ダービー(5月27日/東京・芝2400m)が行なわれるが、今年の牡馬クラシック戦線は、はっきり言って”異常事態”にある。

 なにしろ、クラシック第1弾の皐月賞(4月15日/中山・芝2000m)では、上位2頭がそろって重賞未勝利馬だったのだ。こうした例は、1着ノーリーズン(15番人気)、2着タイガーカフェ(8番人気)が入って大波乱となった2002年まで遡(さかのぼ)らなければならない。

 加えて、ダービー本番で1番人気が予想されるダノンプレミアムは、皐月賞を1週前に回避して、弥生賞(3月4日/中山・芝2000m)からのぶっつけ本番となる。弥生賞とダービーは「関連性が強い」と言われるものの、それでも一頓挫ある馬がダービーで1番人気になるのは異例なこと。およそ3カ月ぶりの実戦にも不安が募り、今年の競馬界最高峰の舞台はレース前から”不穏な空気”に包まれているのだ

 そうした状況にあって、日刊スポーツの松田直樹記者も人気馬に疑いの目を向ける。

「クラシック初戦の皐月賞は、7番、9番、8番人気の馬が上位3頭に入る波乱となりました。では、ダービーはどうなのか? 過去の結果を振り返ってみると、比較的堅い決着に収まる傾向が強いです。過去10年のダービーは、1番人気が4勝、2着1回、3着3回、着外2回と8頭が馬券に絡んでいます。そのデータからすれば、1番人気を軸に据えれば当たりやすいと考えるのが、大方のファンが行き着く答えでしょう。

 ただ今年の場合、人気が予想される4戦無敗の2歳王者ダノンプレミアムと、3戦全勝で毎日杯(3月24日/阪神・芝1800m)を制したブラストワンピースが、ともに不安材料を抱えています。前者は皐月賞を回避しての臨戦過程、後者はこれまで一線級との対戦がなし。人気を額面どおりに受け入れるのは、危険だと見ています」

 とすると、どういった馬が狙い目になるのか。松田記者は「違う切り口から」と言って、これまで話題先行の感があった”あの馬”の名前を挙げた。

「魅力を感じるのは、キタノコマンドールです。キャリア3戦目の皐月賞で、大外を回って掲示板を確保(5着)。上がりタイムは、4着ステルヴィオ、6着グレイルと同じ、メンバー最速タイ(34秒8)を記録。その3頭の中でも、ゴールに向かっていく勢い、迫力はこの馬が一番でした。

 これまで3戦すべてで上がり最速の脚を使っていますが、全姉のデニムアンドルビーと同様、どちらかというとじわじわ加速していく”ディープインパクト産駒らしくない末脚”の持ち主。東京は初めてでも、こういった脚質の馬は間違いなくダービー向きだと思います」

 松田記者が脚質を重要視するのは、「近年のダービーの傾向から」だと言う。

「東京・芝2400mで行なわれるダービーにおいて、最後に待つ525.9mの直線は、スピードの持久力が不可欠。単純な切れ味だけでは、栄冠には届きません。そういう舞台にあって、僕の中ではあるセオリーがあります。それは、『皐月賞で最もいい末脚を使った馬を狙え』というもの。実際、近年はその傾向が強いのです。

 例えば、昨年のダービー馬レイデオロは、皐月賞では4コーナー15番手から追い上げて5着でした。上がりタイムは、出走馬2位の34秒0をマーク。ゴールに向かってグイグイと伸びる脚が印象的で、まだ余力が残っているように見えました。

 さらに、2016年のダービー馬マカヒキ(皐月賞2着)、2015年の二冠馬ドゥラメンテ、そして2014年のダービー馬ワンアンドオンリー(皐月賞4着)と、いずれも皐月賞で最速の上がりをマークしていました。一冠目で際立った末脚を見せた馬は、世代の頂上決戦において大いに狙う価値があります」

 一方、デイリースポーツの大西修平記者は、同じく皐月賞で上がり最速の脚を使ったグレイルのほうを推す。

「皐月賞では、ゲートで体勢を崩して出負けする苦しい展開にも怯(ひる)まず、後方から外、外を回る形で伸びてきました。そして、メンバー最速タイの上がりを繰り出して6着。『スムーズなら……』と思わせる内容で、明らかに良化途上だったことを踏まえれば、収穫の多い一戦だったと思います。

 もともとダービーを目標にしてきただけあって、中間の攻め気配は格段に良化しています。共同通信杯(2月11日/東京・芝1800m)で7着と敗れていますが、このときはパドックからテンションが高く、スタート後、他馬に寄られるようなところもあり、参考外の一戦。本来は広いコースのほうが合うタイプで、距離が延びることもプラスに働くと思います。

 週中の雨の影響が気になりますが、同馬は極悪馬場の新馬戦を勝っていますから、道悪は不問。道中でじっくりと脚をためられれば、勝機は十分と見ています」

 さらに松田記者と大西記者は、それぞれ”別路線組”からも穴馬を推奨する。松田記者は取材現場の感触から、トライアルの青葉賞(4月28日/東京・芝2400m)を勝ったゴーフォザサミットに食指が動くという。

「『1週前に馬が急激によくなった』という言葉は、かつて三冠馬のオルフェーヴルを管理していた池江泰寿調教師が、ダービー直前に得た感触をメディアに対して発したコメント。つまり、上昇度もダービー制覇への重要なポイントになります。

 そして今年、ゴーフォザサミットを管理する藤沢和雄調教師が、『(ゴーフォザサミットは)青葉賞では予想以上にいい競馬をしてくれた。東京がいいんだろうね。まだ馬がしっかりしていないから、これからもっとよくなる』と大一番を前にして、同馬の良化ぶりをかなり強調していました。昨年のレイデオロに続く、藤沢厩舎のダービー連覇の期待が高まります」

 大西記者は関西で行なわれた前哨戦、京都新聞杯(5月5日/京都・芝2200m)で最終切符を手にしたステイフーリッシュをオススメする。


京都新聞杯を快勝して日本ダービーに挑むステイフーリッシュ

「前走の京都新聞杯が圧巻の勝ちっぷり。道中は、前半1000m通過が58秒5と速いペースを2番手で追走し、直線に入ってからも力強い末脚を繰り出して、危なげない競馬で押し切りました。最後はまだ余裕があったほどで、底力を示すには十分な内容だったと思います。

 勝ち時計の2分11秒0も優秀。2走前の共同通信杯では10着と大敗を喫しましたが、それはその前のホープフルS(3着。12月28日/中山・芝2000m)から12kgも体重を減らした影響が大きかったと思います。京都新聞杯では16kg増としっかりと体を戻して、この中間もその体をキープしています。

 ホープフルSでは後方から追い込んで3着。そして、京都新聞杯では先行して好時計での圧勝と、自在性も兼ね備えています。今回はテン乗りになりますが、名手・横山典弘騎手なら、きっと持ち味を引き出してくれるはずです」 一筋縄では収まりそうにない今年の日本ダービー。「世代最強」の勲章を手にするのはどの馬なのか。注目のゲートインまで、まもなくである。

◆「◎」か、スパッと切るか。ダノンプレミアムこそ、ダービー最大の悩みだ>>

◆なぬっ? 安藤勝己はあの馬を切った。ダービーを読む「3歳牡馬番付」>>

◆エポカドーロが「皐月賞は恵まれた」を覆し、ダービーも勝つ可能性は?>>