新馬は、デビュー戦でどの騎手を乗せたか、そして1勝した次のレースでどのレースを使ったか、そこを見れば、おおよその期待度がわかるという。

 その点からすると、クラシック第1弾の皐月賞(4月15日/中山・芝2000m)を勝ったエポカドーロは、当初あまり大きな期待を背負った馬ではなかったかもしれない。


皐月賞では圧倒的な強さを見せたエポカドーロ

 デビュー戦で手綱を取ったのは、北村友一騎手。近年、着実に勝ち星を伸ばしてきている優秀なジョッキーだが、いまだGI勝利のない、中堅どころである。

 また、京都で未勝利戦を勝ったあと、次に使ったレースが小倉の500万下・あすなろ賞(2月10日/小倉・芝2000m)だった。名の通った前哨戦などではなく、手っ取り早くローカルの条件戦で2勝目を取りにきたのだ。

 これは、少なくとも”エリート視”されている馬の使われ方ではない。

 関西の競馬専門紙記者が言う。

「エポカドーロが所属する藤原英昭厩舎は、現在全国リーディングのトップを快走。毎年のように上位争いをしている名門厩舎で、今年の3歳馬にもギベオンとか、グレートウォリアーとか、前評判が高くていい馬がたくさんいたんです。そういう中にあって、エポカドーロはあまり目立たない存在でした。入厩当初は『ダート向き』とか『距離の短いところがいい』といった声もあったくらい。

 でも、競馬にいくと、これがなかなかいい。スピードに見どころがあって、デビュー戦こそ敗れましたが、2戦目と3戦目は圧勝しましたからね。その結果を受けて、2勝目のあとに皐月賞トライアルのスプリングS(3月18日/中山・芝1800m)を使った。そこで、タイム差なしの2着。このレースのあと、藤原調教師はこう言っていました。『この馬が(クラシックを)勝つとしたら、皐月賞だな』と」

 期待の評判馬たちは、体調が整わなかったり、思ったほどには成長を見せられなかったりして、クラシックを目前にして足踏み状態が続いていた。エポカドーロはその間隙を突くように、実戦タイプの強みを発揮して徐々に頭角を現してきたのだ。

 それでも、藤原調教師のように「勝つなら皐月賞」とまで評価する人は、さほど多くはなかった。皐月賞における7番人気、単勝14.5倍という数字が、そのことを物語っている。

 さらに、実際に皐月賞を勝ってからも、”急上昇”というほど、エポカドーロの評価は上がっていない。

 なぜなら、皐月賞の勝利は、実力というよりも、むしろ展開や馬場など、いろいろと「恵まれた」と見る声が大きかったからだ。

 確かにエポカドーロは、今年の皐月賞における”ベストポジション”にいた。ハイペースで3頭の馬が先手を取るなか、そこから少し離れた後方馬群の先頭で、終始気持ちよく走っていた。加えて、後方に控える人気馬たちがその後ろにいて、お互いに”出”をうかがって動けずにいた。

 そして終盤、ハイペースで逃げた3頭は失速し、後方の有力馬たちはけん制し合っていた分、仕掛けが遅れた。レースは、まさにエポカドーロに「勝ってください」と言わんばかりに流れたのだ。

 エポカドーロに有利に働いたことは、まだある。レース当日の、重に近いやや重の馬場がそうだろう。

 エポカドーロ自身は苦にしないが、逆に、切れ味を身上とする後方待機の有力馬たちには、末脚が鈍る結果となった。

 なおかつ、この馬は直線の短いコースが滅法得意なこともある。

 未勝利勝ちしたのは京都だが、内回りのマイル戦だった。小回りの小倉もしかりである。反対に、同じ京都でも外回りの1800m戦で行なわれたデビュー戦は3着に負けている。

 こうした同馬の脚質を考えれば、当然中山はうまい。そのコース巧者ぶりが皐月賞で存分に生きた。

 先述の専門紙記者によれば、これらエポカドーロにとって好都合な条件となるかなりの部分を、藤原調教師はレース前から読んでいたという。そのうえでの「勝つなら皐月賞」という発言だった。

 とはいえ、単に「恵まれた」だけでクラシックは勝てない。それも、ギリギリ勝ったわけではない。

 ゴール前、後続にやや詰め寄られるシーンがあったものの、それでもそこから、さらにギアを入れ直して差を広げた。結果は、2着に2馬身差。これは、さすがに「恵まれた」というだけの着差ではない。

 皐月賞を2馬身以上の着差で勝ったのは、2012年のゴールドシップ以来のこと。目立たず、地道に、ではあっても、エポカドーロはレースを経験するごとに着実に力をつけ、地力をアップさせてきたことは間違いない。

 では、日本ダービー(5月27日/東京・芝2400m)はどうか。はたして、二冠達成の可能性はあるのか。

 ズバリ、ポイントはふたつ。ひとつは、東京コースをどうこなすか。もうひとつは、皐月賞のときにいなかったダノンプレミアムの存在だ。

 そのうち、東京コースの適性については、先の専門紙記者がこう分析する。

「はっきり言って(エポカドーロは)東京コースは向かないでしょう。左回りの経験がないこともマイナスです。

 ただ、あの調教師は何かやってきますから。先日のNHKマイルC(東京・芝1600m)でも調教を工夫することで、短距離馬で、明らかにマイルは長いミスターメロディを、勝ち馬からコンマ2秒差の4着。あわや馬券圏内というところまで導きましたからね。

 今度も、東京コースに対応するために、何か考えて調教をやっているはず。それが功を奏すれば……という期待はあります」

 もうひとつのダノンプレミアムの存在は、もっと厄介だ。

 皐月賞では逃げ争いをする馬の後ろで、1頭で悠々と走ることができた。だが、今度は同じような位置に「世代実力ナンバー1」と評価されるダノンプレミアムもいる、と想定されるのだ。

 おそらくエポカドーロが前で、それをダノンプレミアムがぴったりとマークする形だろう。そうなると、相当厳しい競馬を強いられることになる。

 それでも、ダノンプレミアムは一頓挫あって、ダービーはぶっつけ本番となった。どこまで体調が戻っているのか、一抹の不安がある。

 一方、エポカドーロは皐月賞後、短期放牧に出てリフレッシュ。再び専門紙記者がその様子を伝える。

「たまっていた疲れとか、ストレスがすっかりとれたのでしょう。厩舎のスタッフは、『さらによくなった。成長を感じる』と話していました」

 このマイナスと、プラスを考えれば、一概にマークされる「エポカドーロ不利」とは言い切れなくなる。

 皐月賞はここ3年、人気薄の馬が勝って、勝ち馬はダービーでは善戦止まりに終わっている。今年もその流れが続くのか、それとも、エポカドーロはその”善戦”の壁を打ち破るのか。 過去2頭の父は「英雄」ディープインパクト。エポカドーロの父は「怪物」オルフェーヴル。破天荒な血を受け継いでいる分、過去2年とは違う結果になっても不思議ではない。

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