躍動したシーズンを終えた中島。落ち着いた口ぶりで欧州1年目を振り返った。 写真:徳原隆元

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「楽しみたいな、という気持ちで行った」ポルトガルでのシーズンは、日本サッカー期待のMFをまたひとつ成長させた。

 昨夏にFC東京からレンタルという形でポルトガルのポルティモネンセへ移籍した中島翔哉は、自身のキャリア初となる欧州の舞台で躍動した。

 5節のベンフィカ戦で先発起用されると、すぐに定位置を確保。チーム内でも頼られる存在となり、終わってみれば、29試合に出場して10ゴール・12アシストという渡欧1年目として申し分のない結果を残した。

 今シーズンのポルトガル・リーグの年間ベストイレブンにも選ばれた中島は、5月16日に行なわれた取材で、「(ポルトガルのサッカーが自身に合うことを)想像はしていたけど、最初からこんなに出られるとは思っていなかった」と明かし、日本とポルトガルの違いを口にした。

「プレースピードが日本より速く、強さの部分で相手のパワーが日本よりも強い。それに慣れたことは、大きいと思います」
 

 ポルトガルにはポルトやベンフィカ、さらにはスポルティングといったチャンピオンズ・リーグでも上位進出を果たしたことがあるクラブが居並ぶ。そうした世界的なチームと直接ぶつかったことで、中島は自信を深めていった。

「日本では、試合の中で『ちょっと落ち着かせよう』っていう時間があるんですけど、ポルトガルではそんなにありません。特に、ポルティモネンセは本当にゴールを決めるためのプレーだけだったので、よりシンプルだと思うし、それがスピードの違いに繋がっていました。なので、難しいことはあんまり考えなかったです。

 自分は日本にいるときも、ボールを落ち着かせようという場面で仕掛けに行っていたので、こっちに来てからもそういうプレーができるように、と思っていました。ポルトガルのほうが、自分の特徴を出しやすい環境だったのかなと思います」

 ポルティモネンセ入りを決めた理由の一つとして、「最初に、2部にいたときの試合動画をYouTubeで見たのですが、そのときに凄く『ここに行きたい』と思いました」と明かした中島。そのときの“直感的”な決断は間違っていなかったのだ。
 2桁ゴール・2桁アシスト、さらにはリーグのベストイレブン入りと、これ以上ないデビューシーズンを送った中島には、すでにステップアップの噂が飛び交っている。

 鮮やかな技巧で決定的なプレーを連発するなど大車輪の活躍を見せ、『リトル・エンペラー(小さな皇帝)』とも謳われた日本代表MFには、今年1月にポルトが「金銭+保有選手の譲渡」という条件で獲得を打診したと報じられ、これに続くように、ドルトムント、ナポリ、マンチェスター・ユナイテッドといったメガクラブからの興味が、一斉に伝えられた。
 

 5月14日にFC東京からポルティモネンセへの完全移籍が発表された中島自身は、移籍をどう捉えているのか。気になる話題だけに、記者陣から質問が飛ぶと、「サッカーを楽しむことが大事だと思ってます」と落ち着いた表情で語った。

「移籍するとすれば、サッカーを楽しむことができるチームですね。まだ、具体的には考えていないです。ポルトガルという国も自分は凄く好きなので、色々ある選択肢のなかで考えていきたいです」

 純粋に“楽しめる環境”を追い求めてポルトガルに渡った中島は、残るにしても、新天地を目指すにしても、来るロシア・ワールドカップのメンバー入りも噂される俊英への興味は尽きない。

取材・文●羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb編集部)