5月15日までの期間限定で「オトナの焦がし醤油オニオンソース」と、「わんぱくクリーミーチーズソース」のソースも選べるチキンマックナゲット(筆者撮影)

マクドナルドでは4月25日から5月15日まで、サイドメニューの「チキンマックナゲット」を、期間限定のソース2種をプラスして展開している。チキンマックナゲットを購入するとついてくるソースを、バーベキューソースとマスタードソースの定番ソースと合わせ、4種類のなかから選べるのだ。

今回展開される限定ソースは、「オトナの焦がし醤油オニオンソース」と「わんぱくクリーミーチーズソース」だ。


「オトナの焦がし醤油オニオンソース」(左)と「わんぱくクリーミーチーズソース」(写真:日本マクドナルド

後者はこれまでにも期間限定で発売したことのあるテイストで、好評につき再登場。チェダーチーズを使った濃厚でクリーミーな味わいが特徴で、子どもに人気のソースだ。

新登場したソースの工夫点は?

そして今回新登場の「オトナの焦がし醤油オニオンソース」は、焦がし醤油にしいたけのうま味や玉ねぎなどを加えているとのことで、なにやら本格的な雰囲気が漂う。

工夫点をマクドナルドに聞いたところ、「焦がし醤油のロースト感とオニオンのうま味のバランスに苦労しました。ロースト感が強すぎたり、オニオンのうま味が弱いとバランスが悪くなるので、ちょうどいい配合を何度も試しました。しいたけのうま味は隠し味で、ナゲットに合う味わいになっています」(日本マクドナルド広報担当の當山心氏)とのことだ。

では、この本格的なソースをチキンマックナゲットに合わせると、どのような味のハーモニーが奏でられるのだろうか。試食してみた。実はマックナゲットを食べるのは今回が初めて。薄味で衣のサクサク感が特徴的に感じられるのは、ソースを楽しめるようにという意図なのだろうか。これに、焦がし醤油のソースを少しつけて食べる。

“焦がし”のネーミングは伊達ではない

まず感じられるのは醤油だれの甘み。広く好まれる甘辛い味がベースとなっている。そして“焦がし”のネーミングは伊達ではなく、しっかり苦さもある。確かにオトナの好みそうな味と言えるだろう。その奥から、しいたけや玉ねぎのうま味、甘みが余韻のように口内に広がる。マクドナルドでは販売していないが、アルコールと合わせてもよさそうだ。

ただ、しっかりした味のためか、1人で黙々と5ピース食べているとちょっと飽きがきてしまう。やはり何人かでつまむのがおいしい食べ方のようだ。できれば、ソースも何種類か組み合わせたい。


ナゲット15ピースを5月15日まで、30%引きの390円で発売。ソースは3つつけられる(写真:日本マクドナルド

今回の期間限定ソース展開に合わせ、マクドナルドではナゲット15ピース570円を、30%オフの390円で販売している。

マックと言えば、まず目が行くのがハンバーガーやポテト、シェイクなど。ナゲットは「名脇役」と言ったところだろうか。しかし最近になって、その見方にも変化が現れているかもしれない。まず、久しぶりにマクドナルドに入店したとき驚いたのが、セットにナゲットも含めたサイドメニューが自由に組み合わせられるようになっていた点だ。脂質や糖質が気になる人にとっては、選択肢が増えるのはうれしい。もっとも、このメニュー形態に変更したのは3年前だそうだ。

では、マクドナルドにとってチキンマックナゲットは、どのような位置づけなのだろうか。

「日本では1984年から販売している、不動の人気を誇るマクドナルドを代表するサイドメニューです。セットのサイドメニューとしてだけではなく、ちょっとした小腹を満たしたり、15ピースはご家族やお友達同士でシェアしたりと幅広い年齢層の方にさまざまなシチュエーションでお楽しみいただいております」(當山氏)

今回のような限定ソースのキャンペーンも定期的に行ってきている。たとえば2017年には、2月、4月、8月、12月に展開。

「今年2月のキャンペーンでは人気バーガー『チキンタツタ』と『チキンタルタ』の味わいを再現したソースを販売していますし、そのときのシーズンやテーマに合わせてさまざまなソースを期間限定で販売させていただき、いずれも大変ご好評いただいております」(當山氏)

ちなみに、2017年4月に発売されたソースは「オトナのわさびマヨソース」と「わんぱくてりやきマヨソース」で、このたびと同じく、親子を強調。ゴールデンウイークを含む期間とあって、ファミリー層へのアピールを狙ったと言えるだろう。反対に12月からのキャンペーンはクリスマスシーズンを含むため、「夢のオマールエビソース」、ワインが隠し味に入った「贅沢チーズフォンデュソース」など、プレミアム感のあるテイストとなっている。

マック好きの人にチキンマックナゲットについて聞くと、「定番ソースが2種類しかなく、このようにほかの味が楽しめるのはめったにない。もっとやってほしい」「ほかのチェーンではソースが有料なので、無料のマックはすばらしい」などの声がある。確かに、今回発売の焦がし醤油や、オマールエビといった、こだわりのソースが無料で味わえるのはお得感が高い。

異物混入などが頻発した過去

マクドナルドと言えば、触れないわけにいかないのが2014年の7月以降に起きた、期限切れ鶏肉使用や異物混入などの事件だ。消費者の信用を失い、2015年度の全店売上高は3765億円と、前年度の4463億円より大きく落ち込んだ。

しかし2013年に日本マクドナルド代表取締役兼CEOに着任したサラ・エル・カサノバ氏のもと進められたリカバリープランにより、2016年度には事件前と同程度の4385億円に復活、2017年には4901億円となっている。業績アップの理由を同社では「おいしくてお得感のあるメニューのご提供、お客様にも一緒に参加いただけるプロモーションの企画、既存店舗の改装、人材への投資によるお客様の店舗体験の向上などが相乗効果を発揮した結果」(當山氏)と考えている。

リカバリープランでは、食の安心・安全に取り組み、品質管理をホームページなどで「見える化」したほか、カサノバ氏自身が47都道府県を回って全国の母親と話し合う「タウンミーティング with ママ」を行うなど、母親などの消費者目線を取り入れてきた。また、2016年末時点ではモダンな店舗は全体の67%だったが、店舗投資率を高め、2018年末に90%に引き上げるべく、店舗改修等を加速させている。商品の包装なども、SNS映えを意識しておシャレなデザインに変更。それらが総合的に功を奏し、「事件前」とはブランドイメージが大きく変わったと言えるだろう。

今後の展開としては、商品のおいしさへのこだわりは変わらず続け、さまざまなキャンペーンと合わせて、消費者目線での提供に力を入れていくようだ。たとえば、2017年には「おいしさ向上宣言」をうたい、プレミアムローストコーヒーをリニューアルするなど、定番商品のおいしさを強化した。2018年には、「もっと、おいしさ向上宣言」を掲示。皮切りに、カフェラテをリニューアルした。

「2014年ワールドチャンピオンのバリスタ監修により、豆の種類、焙煎、エスプレッソの抽出、ミルクの温度、マシンの細かいセッティングまでこだわったカフェラテをご提供しています」(當山氏)

また、よりリッチで濃厚になったソフトクリームをサクサク食感のワッフルコーンで楽しめるスイーツ「ワッフルコーン」3種を新レギュラーメニューとして4月25日から販売している。


ビッグマック50周年を記念し、「ビッグマックBLT」490円(写真)と、「ビッグマックベーコン」450円も期間限定で販売(筆者撮影)

3月19日からは、午後5時以降、レギュラーメニューの定番バーガーに+100円でパティを倍にできるサービス「夜マック」を開始。2017年6月より一部地域で展開し、好評だったことから地域を全国へと拡大した。肉ブームによるハンバーガー需要拡大、グルメバーガー志向はもちろん、マクドナルドとしては、「夜はしっかりと食事をしたい」というニーズを意識しての展開のようだ。ファストフードの代名詞のようだったマクドナルドが、ディナーのジャンルに入ったのは目覚ましいことである。

消費者の信頼を取り戻すための体質改革

キャンペーンやイベント、期間限定商品などの話題づくりも、頻度が高くかつバリエーションが豊富だ。毎週のように新商品やキャンペーンの発表を行っており、アニメやアパレルブランドなど、さまざまな企業とのコラボも。5月9日からは、お客からの人気投票により、次のレギュラーメニューとなるバーガーを決定するキャンペーン「食べて投票!あなたが選ぶレギュラー争奪オーディション」など、参加型のイベントも加えて工夫を凝らしている。

一方で、全店売上高の最高値は2010年の5427億円だ。2017年が4901億円であるから、完全復活と言えるまでにはいまだ道のりがある。ただ日本では、ここ数年で食に対する考え方も、食の志向も大きく変わった。同社はそうした厳しい環境のなかで体質改革を行い、消費者の信頼を取り戻すことができてきたと言える。これを継続し、利益を上げ続けていけるかが今後の課題だ。