TIDAL、ビヨンセとカニエのストリーミング回数を水増しか。ロイヤルティ不正増額の疑い

音楽ストリーミングサービスTIDALが、ビヨンセとカニエ・ウェストの最新アルバム再生回数を数千万回も水増ししていたと、TIDALの生まれ故郷であるノルウェーで報じられました。もしこれが事実ならば、TIDALは身内アーティスト(いずれも当該アルバムリリース時点においてTIDALオーナーの一員)に対し、不正に多額のロイヤルティを発生させていたことになります。ノルウェー第3位の新聞Dagens Næringslivのウェブサイトによると、ユーザーIDと国名コード、数十億行もの曲名といった大量のTIDALの内部データを記録しているハードドライブをノルウェー科学技術大学のデータ・セキュリティとサイバー犯罪の専門家に分析してもらったところ、ビヨンセとカニエの再生回数が実際に比べ数千万回も多く記録されており、他のアーティストを犠牲にして高額なロイヤルティを発生させていたとされます。

TIDALはカニエ・ウェストのアルバム「The Life Of Publo」はリリース後10日間で2億5000万回、ビヨンセの「Lemonade」は15日間で3億600万回も再生されたと発表していました。当時のTIDALの加入者数は300万人程度であり、発表が事実ならばTIDALユーザー全員が、一人あたり1日十数回もこの2つのアルバムを"通し"で聴き続けた計算になります。

Dagens Næringslivは、特に多くの再生回数を記録していたTIDALユーザー数人にインタビューを実施、たとえば「記録どおり当該アルバムを1日に96回も再生したしていたか」などと実際に確認し、当然ながら否定のコメントを得ています。あるユーザーは「1日にビヨンセのアルバムを1日に180回聴いたか」と問われ困惑していたとのこと。

TIDALはRollingStoneからの問い合わせに対し「これは、われわれを『イスラエル諜報部員』、オーナー(つまりジェイ・Zとその仲間)たちを『コカイン密売人』と呼んだマスコミからの政治的な工作です」とコメント、報道がDagens Næringslivの2017年1月の記事(TIDALの加入者数300万人は水増しだと報じる内容)から続く攻撃だとしています。

たしかに、TIDALの内部情報をDagens Næringslivがどうやって入手したのは気になるところであり、情報そのものの信憑性も問われなければならないかもしれません。一方で、TIDALの加入者数に関しては、その収益に基づくアクティブユーザー数は100万人に満たないとする調査報告例もあることから、TIDALが発表した再生回数にも無理があると思われます。Dagens Næringslivは触れていないものの、再生回数が水増しされていたのが事実なら、もしかするとBillboardなどのチャート順位を押し上げ、TIDAL以外でのセールスに結びつけようとする意図もあったかもしれません。

ちなみに、ジェイ・ZはTIDAL買収の際、"アーティストにより良いロイヤルティを支払うこと"を目的のひとつとに掲げていました。とりあえず身内に関しては、その目的をしっかりと果たしているようです。