資産の75%以上を失うショック経験で死亡率1.5倍に、米調査

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 この数年、社会・経済的な貧困は健康を損なうことが広く認知されるようになった。健康的とはいえない食生活やヘルスリテラシーの低さ、家計に占める医療費の低さなど理由を挙げれば切りがない。

 しかしいわゆる資産家でも、貧困層なみに健康リスクを負うことがある。それは、資産を大きくすったときだ。

 この4月に米国医師会雑誌(JAMA)で報告された米ミシガン大学の研究者らの追跡調査によると、2年間に資産から負債を引いた純資産のうち75%以上を失う「資産損失ショック」を経験した場合、ショックを経験していない人と比較し、全死亡率が1.5倍に上昇することが示された。

 同調査は、「リタイアメント生活と健康」との関係を分析するもので、1931〜41年生まれの男女8714人、登録時年齢51〜61歳(平均年齢55歳)が対象となっている。参加者は2年ごとに実施される対面調査に応じてきた。

 ちなみに、追跡期間は1992〜2014年末。米国経済に限っても、右肩上がりの成長を謳歌していた90年代から減速に転じた2000年代前半、サブプライムローンの破綻に端を発する株式相場の大暴落と、たった22年間のうちに景気の大変動を経験している。事実、参加者の実に4分の1以上が、純資産の75%を失う「資産損失ショック」に見舞われた。

 長い老後に備えた資産や自宅を失うことは、明らかな精神的ストレスで影響は計り知れない。

 同調査では「資産損失ショック」を経験した人は、短期的にうつ病や心機能障害、薬物乱用などのリスクに曝されることが指摘された。医療費を節約せざるを得ない状況に陥り、長期のうちに健康を損なうことも示されている。

 こうした影響が重なり、「資産損失ショック」経験者の死亡率は、最終的にもともと「純資産」を持たない、あるいは負債のみを抱える無資産層と同じ程度に上昇したのである。

 日本でも「老後に備えた資産形成」が注目されている。その際、余力以上の投資に潜む経済リスクと健康リスクに注意したい。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)