コンビニ業界の知られざる裏側を、内情に詳しいライターの日比谷新太さんがレポートする当シリーズ。前回の「コンビニの24時間営業」に関する話題に続き、今回取り上げるのは「大手コンビニチェーンの決算結果」について。セブンイレブン・ファミリーマート・ローソンの3大チェーンによる三つ巴の争いも今や過去の話で、現状ではセブンイレブンが店舗数・売上高ともに一人勝ち状態。2番手争いもどうやらファミリーマートが制しそうな状況で、ローソンはかなり厳しい立場だと分析しています。

売上前年割れが続くローソン

昨年の話ですが、セブンイレブンの2017年10月の既存店売上高が63か月ぶりに前年割れとなったことは、当連載でも取り上げましたのでお覚えの方も多いかと思います。

2度の台風襲来による客足の鈍りが原因と考えられ、その月はローソン・ファミリーマートも前年割れとなったのですが、ではその後の3大チェーンの既存店売上高はどのような結果になったのでしょうか。

以下は、昨年度の3大チェーンにおける既存店売上高の推移を表にしたものです。

実は前年度割れは、翌月の11月も続いていました。その後はセブンイレブンは持ち直したものの、ファミリーマートは前年超えと前年割れを繰り返す状況。ローソンに至っては昨年10月以降、5か月連続で前年割れとなる厳しい結果となっています。

そんななか、先日4月11日に行われたローソンとファミリーマートの決算発表。結果は以下の通りとなり、翌日の朝刊紙は「ローソン大幅減益」「ファミリーマート営業赤字」と報じました。

いっぽうで、この2社より先のタイミングで発表されたセブンイレブンの決算は、増収増益と絶好調でした。三強寡占化といわれて久しかったコンビニ業界でしたが、現状では寡占化がさらに進んで「一強その他」という構図になりつつあります。

ローソン、ファミリーマートの決算発表の明暗

さて、ともに厳しい決算となったローソンとファミリーマートですが、決算後の株価に関しては明暗が分かれました。

決算発表翌日、4月12日の株価推移を見てみると、ローソンが7,180円から6,600円まで一時落ち込む結果となったのに対し、ファミリーマートのほうは8,970円から9,350円まで急騰する結果となりました。

両社の間で、なぜこのような差が出たのか。それは、ローソンが店舗数を増やすことで売上高を上げるという、従来からの常套手段を続けているのに対して、ファミリーマートはサークルKサンクスとの統合を進めるなかで、店舗数や売上の減少を厭わず不採算店舗や重複店舗を整理したことを、市場が前向きに評価したからだと考えられます。

不採算店舗の閉鎖や、より良い立地へのスクラップ&ビルドを進めたファミリーマート。それらの処理により、現存損失で284億円を計上しました。

くわえて興味深いのは、直営店舗数の変化です。一般的にコンビニチェーンにおける本部直営店とは、その収益性よりもマーケット占有や、フランチャイズオーナーが見つかるまでのつなぎとして出店しているケースが多いのです。実際、本部直営店では本部社員が店長として勤務しているため、人件費などのコストが高くなり、収益性が低くなる傾向にあります。

ファミリーマートの直営店舗数を見てみると、ここ1年で356店から299店に。サークルKサンクスのほうも373店から143店に減っています。合併したサークルKサンクスの直営店を減らすのはわかりますが、ファミリーマート自体の直営店舗も整理の対象となっているのは、正直驚きです。

前期決算が営業赤字となったファミリーマートですが、このように収益性改善へのアクションを積極的に行っていることを、市場は評価したのです。逆にローソンは、これまでと同じ経営を続けており、将来に向けたビジョンが見えにくいと見られたのです。

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