ザック担いでイザベラ・バードを辿る

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 イザベラ・バード(1831〜1904)は英国の女性旅行家、探検家、紀行作家。1878(明治11)年6月から9月にかけて、通訳兼従者として雇った伊藤鶴吉と、東京から北関東、奥州を抜け、北海道を旅した。その様子は、『日本奥地紀行』として翻訳出版され、今も読み継がれている。

 本書『ザック担いでイザベラ・バードを辿る』(あけび書房)は、バードが歩いた道を改めてたどったもの。類書はいくつかあるようだが、比較的新しい。

延べ109人が23泊24日

 本書の著者らはシニア世代。名古屋大学ワンダーフォーゲル部のOBたちだ。概ね1967年から70年ごろに大学を卒業しているから現在の年齢は70代前半というところ。現役をリタイアし、ちょっと暇を持て余していた昔の仲間が声を掛けあって、バードの道に再挑戦したのだ。本書はメンバーが分担、巻末に主たる執筆者として9人の名と経歴が載っている。

 海外のトレッキングなども経験してきた健脚ぞろい。とはいえ、1度の踏査行でバードの道を歩くのには何か月もかかる。すでに自動車道が整備され、興趣に乏しい道もある。ということで会津から越後、米沢、秋田など里山や古道が残るコースをリストアップし、年に2、3回ずつ、5年がかりで11回に分けて切れ切れにたどった。延べ109人が23泊24日で完歩した。

 バードは馬や牛の背にゆられたり、人力車に乗ったりしながら進んだようだ。なかなか険しい道も多い。「こんなところを馬に揺られて越えるのは馬も大変。乗っているイザベラも大変だったろう」と著者らは書く。

英国大使館がバックアップ

 本書は第一部が紀行編。日光、会津西街道・越後街道、羽州街道、蝦夷地、十三峠など主要な道ごとの紀行記。第二部がエッセイ編で参加者が「イザベラ・バードが見た日本の宗教観」、「バードと温泉」、「イザベラ・バードと明治初期の外国人旅行事情」などを綴っている。

 いずれも興味深いが、中でも目をひくのが、「女王陛下のイザベラ・バード」という論考。中年の英国人女性が突然来日して、日本の僻地行を断行した背景を、バードの人となりだけでなく、ヴィクトリア朝という時代背景から描く。

 確かにバードが生きた時代はヴィクトリア女王(在位1837〜1901年)と重なる。女性が元気になって、レディ・トラベラーが世界を席巻した時代だという。日本に来る前にバードはいくつものヒット旅行記を書いており、出版社も付いていた。彼女の奥地旅行は、在日英国大使館がバックアップしていたことも強調されている。日本の東北・北海道についての精緻な記録--では彼女は諜報員だったのか、という問いかけもしているが、著者の答えは否定的だ。いずれにしろ、なんだか正体のよくわからないバードという女性について、多角的に検討されており、理解が進んだ。著者らは名古屋大学のOBだけあって、本書は、単なるウォーク追体験記にとどまってはいない。さすが旧帝大だ。

(BOOKウォッチ編集部)