「想像で恋愛はできない」“結ばれない俳優”山田裕貴が語る、魅力的な女性像

恋愛作品において、報われない役どころを演じることに「慣れたもんですよ。僕が演じる役は、だいたい結ばれないから」と山田裕貴は笑う。その言葉は自虐でも何でもなく、彼が俳優人生を歩む中で見つけた、ひとつの自信のようにも感じられる。“結ばれない俳優”を自称する山田は、映画『となりの怪物くん』でも恋する相手から相談をされてしまう、切なすぎる青年を演じている。恋愛にシャイなところは高校時代の自分の姿と重なるところもあったと言うが、27歳になった今、その恋愛観に変化はあったのだろうか。

撮影/ヨシダヤスシ 取材・文/馬場英美 制作/iD inc.
スタイリング/小田優士(Creative GUILD) ヘアメイク/仲田須加

“ヤマケン”と同様、恋愛にシャイだった高校時代

映画『となりの怪物くん』は、累計発行部数が610万部を突破した大人気コミックが原作となっていますが、山田さんは原作を読まれましたか?
読みました。少女漫画はだいたい主人公たちが付き合うまでの話が多いと思っていたんです。でも、『となりの怪物くん』は相手のことを「好きかもしれない」と思う以前のところから始まっているのが新鮮でした。
本作はイケメンで天才だけど、予想不可能な行動で周囲から“怪物”と恐れられている吉田 春(菅田将暉)と、勉強第一の冷静かつ淡白な“氷の女”である水谷 雫(土屋太鳳)の恋物語。山田さんが演じられた山口賢二(通称:ヤマケン)は、春の元同級生で、変人だった春を変えた雫に興味を抱く青年。ヤマケンというキャラクターをどう捉えていましたか?
ヤマケンは雫のことを好きになっていくんですが、雫と春の関係に嫉妬したり、春をライバル視するようなことはなくて。自分と似た者同士の雫に「心を開くことが重要なんだ」と気づかせてあげる存在なんだと思います。だから、ヤマケンらしく雫の背中を押してあげられるよう、自分の役割を意識しながら演じていました。
とはいえ、ヤマケンが雫の相談相手となるように、自分の好きな人から恋愛相談をされたら切なくないですか?
好きな人となら、それが恋愛相談でも、話ができるだけでうれしいんじゃないですかね。もちろん、何としても相手を振り向かせたいという人もいるでしょうけど、ヤマケンの場合は雫のことが好きだからこそ、このままでいいと思っているところがあるのかも。
そんなヤマケンに共感するところは?
今の僕は、何でも思っていることを言ってしまうから、完全に春タイプなんだと思います。でも、高校時代を思い出すと、女の子と話すだけで顔が真っ赤になっていたり、連絡先を聞くことだけで2、3時間悩んでいたこともあったから、そこはヤマケンに近い部分があったのかもしれませんね(笑)。
高校時代はシャイボーイだったんですね(笑)。
野球しかやってこなかったから、好きな女の子とどう接していいかわからなかったんでしょうね。初めてお付き合いした人とも、手をつなぐのに4ヶ月ぐらいかかりましたから(笑)。でも、今は好きだと思ったら、すぐに相手に「好きかもしれない」と伝えちゃいます。それこそ、「ラテン系の男かよ」と思うぐらいストレートに気持ちを伝えられるようになったので、高校時代から考えると、自分でも振り切り方が極端だなと思います(笑)。

“結ばれないキャラ”を演じることに誇りを感じてきた

ヤマケンは物語的には欠かせないキャラクターですが、恋愛においては報われなさそうに見えてしまうポジション。そういう役柄を演じることについて、どう思いますか?
慣れたもんですよ。僕が演じる役は、だいたい結ばれないから(笑)。映画『ストロボ・エッジ』の安堂拓海もそうですし、ドラマ『イタズラなKiss〜Love in TOKYO』(フジテレビTWO)の金ちゃん(池沢金之助)もそう。まあ、金ちゃんは最後に別の人と結ばれますけど、安堂拓海なんてヤマケンと同じセリフがあるんですよ。
それはどういうセリフ?
「人の気持ちは変わるんだよ」って。それを伝える宣教師なのかなって思うぐらい、僕は“結ばれない俳優”なんですよね(笑)。
“結ばれない俳優”って、すごい表現ですね(笑)。
本当に結ばれない役が多いので、最近はそれを誇りに思ってきました。僕ほど結ばれない人はいないんじゃないかと思うし、結ばれないキャラなら「俺に任せろ!」的な(笑)。他の誰よりも一番悲しく演じられる自信があります。
たしかにヤマケンが雫に思いを告げるシーンは、結果がわかっているだけに、とても切なかったです。
ヤマケンはクールぶっているけれど、好きな女の子に対しては不器用。だから、最初のうちは雫と話をしていても、彼女の目を見ていないんですよね。それはあえて見ないようにしていました。それが最終的に雫の目を見て告白をするというのは、彼女の心を開かせる以上に、ヤマケンの成長でもあったのかなと思います。
雫とヤマケンが同類の人間だからこそ、感じられる思いなのかもしれませんね。
たぶん、そうだと思います。
それこそヤマケンは、超エリートでプライドが高いという設定ですが、山田さんにもそういうところがあったりしますか?
どうでしょうね。ヤマケンのようにエリートではないですけど、プライドという意味では、自分がこうと決めたら、それに向かって突き進むところはあるかもしれませんね。もちろん、人の意見は聞きますよ。でも、自分が決めたことに対しては曲げないところがあるというか。
頑固なところがあるんですね。
この前、僕が事務所のオーディションを受ける前に書いたブログを読んだら、今と言っていることがまったく同じだったんです。今は多少自分の受け皿が大きくはなっているとは思いますが、デビュー以前の考え方と軸がブレていないのは、自分でもスゴいなと(笑)。
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