「悪いところばかり出たレースでしたね」

 関西の競馬専門紙記者がそう漏らすのは、前走の弥生賞(3月4日/中山・芝2000m)で2着という結果に終わったワグネリアン(牡3歳)のレースぶりについて、だ。

 何が悪かったのかというと、まず「馬体減」、次に「入れ込み」、それから「コーナリングのまずさ」と「加速の遅さ」だという。

 トライアルということで、弥生賞は結果よりも内容重視。陣営としては、連勝記録などは意識せず、いかに次、つまり本番につながるレースをするかを心がけた。

 ゆえに、仕上げは馬体的にも、精神的にも余裕残し。”負け”はある程度覚悟していた。

 だが、結果は2着と何とか格好はつけたものの、一方で、この馬の現時点における”限界”をも露呈する形となってしまった。

 先述した「コーナリングのまずさ」に加えて、この馬はスタートしてスッと好位につける競馬ができない。これらをまとめて言えば、「器用さに欠ける」わけで、何よりその「器用さ」が求められる中山コースの適性が低いことが明らかになったのだ。


弥生賞では苦杯をなめたワグネリアン

 勝ったダノンプレミアム(牡3歳)とは1馬身半差。トライアル仕様で、「悪いところばかり出た」というマイナス面を考慮すれば、次、本番の皐月賞(4月15日/中山・芝2000m)では、「何とかなる」という計算が成り立つかもしれない。

 しかも、その”最大のライバル”ダノンプレミアムが皐月賞出走を急遽回避した。戴冠のチャンスは一段と増しているが、中山での、あのスムーズさを欠く走りを見た陣営のトーンは、下がる一方だという。前出の専門紙記者が語る。

「ダノンプレミアムが回避したとはいえ、中山で行なわれる皐月賞には『不安がある』と、陣営は慎重な姿勢を見せています」

 振り返れば、強豪相手の新馬戦を制し、2戦目のオープン特別・野路菊S(2017年9月16日/阪神・芝1800m)も完勝して連勝を飾ったワグネリアン。以来、種牡馬、厩舎、オーナー、そして生産牧場までダービー馬マカヒキと同じということで、一気に期待と注目を集めた。

 そして、注目度が高まる中、GIII東京スポーツ杯2歳S(2017年11月18日/東京・芝1800m)も快勝し、一躍クラシックの有力候補となった。

 とはいえ、デビュー前の評価は決して高くはなかった。陣営のスタッフや主戦の福永祐一騎手も、レースを走る前はこんな印象を口にしていたという。

「馬体が小さくて迫力がないし、調教での走りも抜けているという感じがしない」

 その後、デビュー戦で上がり32秒6という末脚を繰り出して評判馬を下しても、その評価は大きく変わらなかった。「時計はすごいけど、(後続を)離して勝ったわけじゃない。ハナ差で勝っただけ」と、福永騎手のコメントもあっさりしたものだった。

 それが、2戦目の野路菊Sで1頭だけいい脚を使って快勝すると、評価は一変。「ホンマに走るんかなぁ」と半信半疑だった福永騎手も、「この馬、見直した。走る」とかなりの手応えを口にした。

 翌春のクラシックを意識するようになったのも、この頃からだった。そして、続く3戦目は果敢に東上。東スポ杯2歳Sに挑戦した。

 ワグネリアンは、そこでも難敵相手に完勝した。クラシック本番へ、余裕を持って臨めるだけの賞金も加算。急上昇中だった周囲の評価と期待に、見事に応えた。

 ここまでは、まさしく順調そのものだった。

 それだけに、陣営にとって弥生賞は誤算だった。

 スムーズさを欠いた走りはもちろんのこと、たっぷりと休養をとったにもかかわらず、前走比マイナス4kgと馬体面での成長も一切見られなかったからだ。

 ワグネリアンにとって、初めての試練。はたして、巻き返しはあるのだろうか。専門紙記者が再び語る。

「陣営としても、前走の結果から皐月賞は『何が何でも勝たなければ……』というレースではなくなった。おそらく、そこにピークを持ってくるような仕上げはしてこないでしょう。とすれば、終(しま)いの脚だけで、ある程度上位には来ると思いますけど、正直、勝ち負けは難しいと思います。

 ともあれ、もともと厩舎もジョッキーも、春の最大目標は日本ダービー(5月27日/東京・芝2400m)に置いていました。そういう意味では、そこまでに立て直しを図る時間ができたわけですから、かえってよかったのかもしれません。

 この馬にとって『何をするのがダメなのか』というのも弥生賞でわかった。さらに皐月賞でもいろいろなことが試せるわけです。それらで得た教訓を生かすことができれば、ダービーでは巻き返しが可能でしょう。ダノンプレミアム相手にも、いいレースができるのではないでしょうか」

 ダービーの舞台となる東京では、東スポ杯2歳Sを圧勝している。多少エンジンのかかりが遅くても、それが決して致命的なマイナスにはならない。

 不得手な中山で、ダノンプレミアムとはコンマ2秒差だった。得意舞台に変われば、十分に逆転できる差である。

「それを実現するためにも、注目すべきは馬体重。弥生賞で減った体がどこまで戻っているか。皐月賞で8kgほど、さらにダービーで6kgぐらい増えていれば、理想なんですが。そうすれば、あの自慢の末脚に、さらに磨きがかかるはずです」(専門紙記者)

「二兎を追うものは……」の例えもある。目標が大きければ大きいほど、狙いはひとつに絞ったほうがいい。弥生賞の結果は、いわゆる「災い転じて……」ということかもしれない。 まずは目前の皐月賞。ワグネリアンにとっては、さらなる成長と課題修正を図るレースとなりそうだ。あくまでも勝負は次、”ライバル”との再戦の舞台ともなる日本ダービーである。

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