注目の3歳牡馬クラシックがいよいよ幕開け。第1弾の皐月賞(中山・芝2000m)が4月15日に、第2弾の日本ダービー(東京・芝2400m)が5月27日に行なわれる。

 今年の3歳牡馬も質の高い面々がそろっているが、現状では「2歳王者」のダノンプレミアム(牡3歳)が頭ひとつ抜けている。昨年末のGI朝日杯フューチュリティS(12月17日/阪神・芝1600m)では、後続に3馬身半差をつける圧勝劇を披露。年明け初戦となった前哨戦の弥生賞(3月4日/中山・芝2000m)でも、「全勝対決」で注目されたワグネリアン(牡3歳)との勝負を難なく制して、クラシックの絶対的な「主役」となった。

 だが急遽、その「主役」が皐月賞を回避。牡馬クラシックの行方はにわかに混沌としてきた。皐月賞にしろ、ダービーにしろ、激戦必至な状況でまったく予想がつかない。

 そこで、3歳牝馬に続いて3歳牡馬についても、競走馬の目利きに長(た)けた安藤勝己氏に分析・診断を依頼。そして、皐月賞、ダービーでの活躍が期待される、独自の「3歳牡馬番付」を選定してもらった――。


横綱:ダノンプレミアム(牡3歳)
(父ディープインパクト/戦績:4戦4勝)

 皐月賞まではこの馬でいけるんじゃないかな、と思っていただけに、突然の回避には驚いた。ダービーとなると何とも言えないけど、これまでの実績からすれば、現状では世代トップの評価は妥当ではないだろうか。

 とにかく、弥生賞は強かったね。外枠で前に壁が作れない状況だったけど、カーッといってしまうようなことはなかった。前を追いかけてはいくんだけど、ある程度までいくと、それ以上はいかないで、うまく2〜3番手で折り合えていた。

 それで、直線に入ると(後続を)一気に突き放していくんだからね。着差は1馬身半差だったけど、2着以下とはそれ以上の力の差を感じたよ。

 跳びに柔らかさがあって、リズムよくいくと”どこまでも伸びる”という印象。(レースを)安心して見ていられるし、レースぶりが完成している。

 もうひとつ、この馬のいいところは、走るたびに馬体重が増えていること。完成したレースぶりを見せていながら、馬体的にはまだ成長を続けているということだからね。頼もしい限りだよ。

 ダービーで不安があるとすれば、切れ味勝負になったとき。それでも、そう大きく負けることはないと思っている。



毎日杯を制したブラストワンピース

大関:ブラストワンピース(牡3歳)
(父ハービンジャー/戦績:3戦3勝)

 大関と関脇はダノンプレミアムと未対戦の2頭で悩んだけど、あえてハービンジャー産駒のこの馬を上にした。ディープ産駒ばかりじゃあ、面白くないからね(笑)。

 ハービンジャー産駒は、派手さはないけど、ここ一番に強い。欧州系でスタミナ豊富だから、距離面でも魅力がある。この馬は、前走・毎日杯(3月24日/阪神・芝1800m)を勝ったあと、皐月賞には向かわず、ダービーに直行するそうだけど、血統的な適性からして、いい判断だったと思うよ。

 おそらく完成度という点では、ダノンプレミアムをはじめ、皐月賞のトライアルを使った馬たちには、まだ及ばないと思う。でも、先にいってよくなりそうという雰囲気は十分に感じられるから、期待どおり成長してくれれば、ダービーでは皐月賞組の強力なライバルになるだろうね。

 いいところは、何と言っても終(しま)いの脚。後方から豪快に差し切ったゆりかもめ賞(2月4日/東京・芝2400m)とは違って、毎日杯では前で折り合いをつけるレースに徹していたけど、それでも最後の脚は強烈だった。直線ではインの狭いところに入っていったんだけど、まるでそれを楽しむように、素早く抜け出してきた。ひとつ、ひとつ課題を克服しつつあるという感じがしたね。

関脇:キタノコマンドール(牡3歳)
(父ディープインパクト/戦績:2戦2勝)

 この馬も完成度という点では、ブラストワンピースと同様、皐月賞トライアルの上位馬たちには及ばないと思う。ただ、仕上がってきたら、先々はもっと走ってきそうだという予感がある。それが、ダービーまでに間に合うのか、あるいはその前の皐月賞でも走ってしまうのか、そこは何とも言えないところだけど、将来性への期待を多く含んで関脇の評価にした。

 そもそも馬体に緩いところがあって、仕上がりが遅れていたから、厩舎サイドとしてはここまで、「ダービーに間に合えば……」というスタンスで使ってきたらしい。2戦目のすみれS(2月25日/阪神・芝2200m)も(厩舎としては)半信半疑で、当初は皐月賞出走も考えていなかったみたい。

 それが、あの強い競馬だからね。道中はずっと最後方を追走し、4コーナー手前から大外を駆け上がっていくと、直線ではグイグイと力強く伸びて差し切り勝ちを収めた。

 普通、キャリア2戦目であれだけの競馬はできないよ。それができたということは、素質の高さ以外の何物でもないと思う。この馬には、もっと奥がありそうな感じがするね。


小結:ステルヴィオ(牡3歳)
(父ロードカナロア/戦績:5戦3勝、2着2回)

 皐月賞トライアルのスプリングS(3月18日/中山・芝1800m)は、この馬の特徴がよく出たレースだった。本来であれば、直線半ばで先頭に立ったエポカドーロがそのまま押し切るような展開。それを、しぶとく捉えて並んで、最後は競り合いからほんの少しだけ差し切った。ほんと、よく捕まえたよね。

 あの並んでからの強さが、この馬の持ち味。つまり、いい勝負根性を持っているということだよ。決して派手さはないけど、いつもきっちり結果を出しているタイプ。

 だいたい、2回負けているとはいえ、いずれも勝ったのはダノンプレミアムだからね。裏を返せば、ダノンプレミアム以外には負けていないってこと。その実績から能力の高さは明らかだよ。

 それでも、小結という評価にとどまるのは、馬体の迫力が今ひとつだから。ちょっと詰まった感じがあるのも気になる。こういうタイプは、距離が延びることがプラスにならない。皐月賞はいいレースをしてくると思うけど、ダービーとなると、ちょっと厳しいかもしれないね。

前頭筆頭:エポカドーロ(牡3歳)
(父オルフェーヴル/戦績:4戦2勝、2着1回、3着1回)

 スプリングSはハナ差で負けたけど、この馬もよく踏ん張った。勝ったステルヴィオに並ばれてからも、あっさりとかわされることなく、最後までしぶとく粘っていた。あの”しぶとさ”は捨て難い。

 それに、この馬の場合は”前で競馬ができる”という強みがある。切れ味勝負という有力馬が多い分、後ろでけん制し合って、結果”前が恵まれる”ということが競馬ではしばしばあるからね。

 そうした展開の利がなかったとしても、この馬は並の逃げ馬じゃない。スプリングSの前、あすなろ賞(2月10日/小倉・芝2000m)が圧巻だった。道中、他の馬に絡まれて楽な展開ではなかったものの、最後は後続に3馬身半差をつけて逃げ切り勝ちを収めた。

 スプリングSにしても、ペース的にはそれほど恵まれた展開ではなかった。それでも、あれだけの競馬ができたのだから、逃げ、先行有利と言われる皐月賞がスローな流れになったら、一番面白いのはこの馬。無論、ダービーだってわからない。展開の利はあるし、しぶとい馬ほど距離をこなせるからね。

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 この他で気になる馬を挙げるとすれば、グレイル(牡3歳/父ハーツクライ)とオブセッション(牡3歳/父ディープインパクト)。

 グレイルは馬体が薄くて、ひ弱そうな馬だから「こんなんで走るの?」と思っていたら、デビュー戦、2戦目の京都2歳S(2017年11月25日/京都・芝2000m)と強い勝ち方をした。その結果を見て、「今年はこれやな」と思ったんだけど、前走の共同通信杯(2月11日/東京・芝1800m)で惨敗(7着)。まだ成長途上ということなんだろうね。

 オブセッションにも同じことが言える。デビュー2戦目のシクラメン賞(2017年12月2日/阪神・芝1800m)では、ふらふら走りながらも、すごい時計で2連勝を飾った。ゆえに、弥生賞ではこの馬を本命にしようかと考えたくらい。ところが、こちらも弥生賞では気の悪さを見せて惨敗(7着)を喫してしまった。

 ただ、どちらも素質は一級品。この春に間に合うかどうかは微妙なところだけど、先々走ってくるのは間違いないと思う。そういう意味で、まだ見限るのは早いかな、と。

 最後に、弥生賞2着のワグネリアン(牡3歳/父ディープインパクト)と、GIホープフルS(12月28日/中山・芝2000m)の勝ち馬タイムフライヤー(牡3歳/父ハーツクライ)についても少し触れておこう。

 正直、どちらも完成し切っていて、これ以上”奥”があるとは思えない。

 ワグネリアンは切れ味だけはあるというタイプで、中山は明らかに不向き。ダービーがスローのヨーイドンという瞬発力勝負になったときだけ、わずかにチャンスが巡ってくるかもしれない。

 タイムフライヤーは、前走の若葉S(3月17日/阪神・芝2000m)がさっぱりだった。メンバーがかなり弱かったにもかかわらず、見せ場なく5着敗戦。能力が一枚落ちると思う。安藤勝己(あんどう・かつみ)
1960年3月28日生まれ。愛知県出身。2003年、地方競馬・笠松競馬場から中央競馬(JRA)に移籍。鮮やかな手綱さばきでファンを魅了し、「アンカツ」の愛称で親しまれた。キングカメハメハをはじめ、ダイワメジャー、ダイワスカーレット、ブエナビスタなど、多くの名馬にも騎乗。数々のビッグタイトルを手にした。2013年1月31日、現役を引退。騎手生活通算4464勝、うちJRA通算1111勝(GI=22勝)。現在は競馬評論家として精力的に活動している。

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