本拠地初先発で圧巻の投球を披露したエンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

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本拠地のアスレチックス戦で7回1死まで完全投球を見せた大谷

 エンゼルス大谷翔平が8日(日本時間9日)、アスレチックス戦で本拠地初登板初先発に臨み、先頭から打者19人連続斬りという圧巻の投球を見せた。7回1死から初安打を浴び、完全試合の夢は断たれた。完全試合であることを理解しながらも、その先を見据えマウンドに立っていたと語った大谷の「前代未聞のメンタリティ」に、米メジャースポーツを取材する名物コラムニストは感銘を受けている。

「彼はワンダフルだった。打者としてだけではなく、投手としても一流の片鱗を見せてくれた。個人的には最も驚かせられたのは試合後の記者会見だよ。地元の記者が質問したんだ。完全試合だと知っていたか?、と。その答えは23歳とは思えない。精神的な成熟に感銘を受けた」

 こう語ったのは米スポーツメディア「スポーティングニュース」のジョセフ・ディポリート記者だ。ロサンゼルスを拠点にエンゼルス、ドジャースというMLB球団のみならず、NHLロサンゼルス・キングス、アナハイム・ダックスやNBA、MLSなど様々な競技で取材活動を展開。取材記者会見でも激しい身振りとともに大谷やマイク・ソーシア監督に質問をぶつけている名物コラムニストだ。

 7回を1安打12奪三振無失点と快投した大谷は、先の質問に日本語でこう答えている。

「ヒットを打たれてないのは知ってましたけど、完全試合をしようという感じはなかった。むしろいつ出るか待っていた。出た時にどう気持ちを整理して次のバッターにしっかり向かっていけるかが大事。そういう意味では、打たれた後にフォアボールを出したのは今日よくなかったこと」

米名物コラムニストのジョセフ・ディポリート氏「前代未聞のメンタリティ」

 完全試合に向かっていることを意識しながらも、ヒットを打たれる事態を想定。偉業を達成できなかった後に、精神的に崩れないことを念頭に置いていたという。そして、7回1死から初安打を許し、四球を出したことを課題に挙げていた。ディポリート氏は会見場で、23歳の日本人ルーキーの発言に思わず刮目したという。

「23歳でこんな発言をするアメリカ人のアスリートを私は知らない。前代未聞のメンタリティだよ。彼は常に先を見ているのだろう。世界最高の野球選手になるのだ、と。彼は常に最終的なゴールを常に見つめているから、こういう発言が出てくる。私はとにかく驚いた」

 メジャーリーグのみならず、米メジャースポーツも取材するディポリート記者は数え得られないほどスターを取材してきたが、偉業を逃した後に、その先を見据えていたことを淡々と明らかにした選手とは出会ったことがなかったという。

「彼の才能は間違いない。それは誰もが知っている。世界中には運動、学業、芸術の分野で様々な天才がいる。だが、その才能を際立たせ生かすのは、常に精神力だ。オオタニは自分の才能を理解している。そして、自分の才能を分析することができる。これは彼の2倍ある年齢の選手でも困難なことだと思う」

 ディポリート氏はこう続けた。マイク・ソーシア監督は大谷の美徳について「恐ろしいほどの冷静さと高度な分析力」と表現していたが、「ソーシアの見立ては正しい」と名物コラムニストは語る。

「NPBという日本で最高のレベルで18歳から活躍できた。それが個人的には、オオタニという人間の持つ、高度な規律正しさを証明している。彼はすでに30代の経験深い名手のような精神的な成熟を兼ね備えていることも分かった。何かを定義するにはまだ時期尚早だが、野球に対する献身性、精神的な強さ、個人的にはこれがオオタニの序盤の成功の鍵になったと思う」 

 米スポーツを震撼させる「Shohei Ohtani」の人間力が垣間見られた“完全試合未遂”後の記者会見。あまりに泰然とした23歳の新星に、名物コラムニストも感服した様子だった。(Full-Count編集部)