購入は1人2体まで、100体限定販売だった人形が、1人の男性によってすべて買い占められる騒動が起きた。人形はボークス社(京都府京都市)が販売する「スーパードルフィー」シリーズの1つ「ロリーナ」で、今回販売されたものは、イラストレーターの故・中原淳一さんの少女画をモデルにした特別版だった。京都高島屋で3月31日に発売されたが、当日中に売り切れた。

この騒動を受け、故・中原淳一さんのツイッター公式アカウントは4月2日、謝罪のツイートを投稿した。本来非がないはずの原画作者関係者までもが対応に追われた形だ。

「受注会の件では皆様にご心配、ご心痛をおかけし大変申し訳なく思っております。現在郄島屋さまが今後の対策を協議されております。決定次第弊社HPでもお知らせ致します。今しばらくお待ち頂けますよう、お願い申し上げます」

ネットでは、買い占めは転売目的ではないかという指摘が広がっている。今回の事態について、人形や美術品・レトロ雑貨の"鑑定士"である池田久美さんは、「買い占めは純粋な人形愛を踏みにじる行為だ」と残念がる。

「購入者は中国の富裕層に、2〜3割上乗せして転売できると見越していた可能性」

池田さんによると、「スーパードルフィーにはコアなファンが多い」という。

「スーパードルフィーは、高額で数量も限られているため、ファンはお金を貯めて『お迎え』(購入)します。人形を自分の分身のように感じ、『一緒に暮らす』という感覚のコレクターもいます。しかも今回の中原淳一さんの絵を再現した限定品は、完成度が高く、とても良くできています。会場に並んだファンは強い思い入れがあったのに、1人の男性客に買い占められて、悔しい思いや辛い思いをしていると思います」

商品はすでに中国の大手ショッピングサイト「淘宝網(タオバオ)」に8650元(4月3日のレートで約15万円)で出品されている。

中国のサイトに出品されているのはとても残念。おそらく男性は、2〜3割上乗せして転売できると見越して買い占めたのでしょう。海外では、メイドインジャパンの人形は完成度が高く人気があります。特に最近は、円安で日本に来る旅行者が増え、日本の人形についてSNSに投稿する人も増えています。SNSで拡散されることで、ドールファンの裾野が広がっていると感じます」

「ロリーナ」は1体12万4200円と安くはない。生活必需品ではないため、「余裕のある中国の富裕層」が購入している可能性もあるという。

「京都高島屋はその場で断ることもできたのでは」

共同通信によると、京都高島屋(京都市下京区)は先着50人に整理券を配布。ところが先頭に並んでいた男性が50人分の代金を全て支払ったという。この対応について、池田さんは「精算の時点でおかしいと気がつくはず。1人2体なのだから、その場で断ることもできたのではないでしょうか」と悔しさをにじませた。

5月には日本橋高島屋(東京都中央区)でも受注販売が行われる。今回の事態を受けて京都高島屋の広報担当社は、販売方法の改善を検討中だと言う。