今年もクラシックシーズンがやってきた。その開幕を告げるのは、3歳牝馬によるGI桜花賞(4月8日/阪神・芝1600m)。今年もハイレベルなメンバーが集い、熾烈な争いが期待される。


牝馬クラシックの「主役」と目されているラッキーライラック

 なかでも、注目されるのは4戦4勝の「2歳女王」ラッキーライラック(牝3歳)。前哨戦となるチューリップ賞(3月3日/阪神・芝1600m)でも危なげない勝利を飾って、「1強」といった評価さえある。

 はたして、同馬がこのまま桜花賞を制し、続く牝馬クラシック第2弾のGIオークス(5月20日/東京・芝2400m)まで戴冠を果たして「絶対女王」として君臨するのか。あるいは、「打倒ラッキーライラック」を成し遂げるような、新たな女王の出現があるのか。その戦いの行方は、多くの競馬ファンが気になるところだろう。

 そこで、競走馬の分析に長(た)けた元ジョッキーの安藤勝己氏を直撃。今年の牝馬クラシックに挑む面々の実力について診断・分析をしてもらい、独自の視点による「3歳牝馬番付」を選定してもらった――。


横綱:ラッキーライラック(牝3歳)
(父オルフェーヴル/戦績:4戦4勝)

 今年の3歳牝馬はレベルが高い。特にチューリップ賞組。時計も優秀で、あの時計(勝ち時計=1分33秒4)で走れば、例年なら桜花賞は勝てる。それぐらいのレベルだよ。

 そのチューリップ賞で2着に2馬身差をつけたラッキーライラックが、文句なしの横綱。この馬は、何よりレースがうまい。スッといい位置につけて、すぐに折り合える。馬のつくりという点でも、ゆったりとしていて乗りやすそうだ。

 気性面も素直な印象。オルフェーヴルの初年度産駒だけど、馬体も、気性も、父親には似てないというか、(父親の)悪いところが出ていない。だから、距離も案外持つような気がする。今のところ、隙なし、という感じだね。

 ただ、今まであまりにも完璧なレースをしすぎている。本番では、逆にそこが心配。勝ちっぱなしの馬って、レース展開がそれまでに体験したことのない流れになったりすると、それに対応できなくてコロッと負けるということがよくある。

 今は、ちょっとしたことで乗り替わりがある時代だから仕方のないことかもしれないけど、(ジョッキーが)一戦一戦、いいレースをしようと、これまで”試す”というレースをしてこなかった。それが、本番でどう出るか。まあ、重箱の隅をつつくような懸念材料にすぎないけどね。

大関:アーモンドアイ(牝3歳)
(父ロードカナロア/戦績:3戦2勝、2着1回)

 シンザン記念(1月8日/京都・芝1600m)で見せた末脚は見事だった。出負けして位置取りが最後方になったけど、道中少しも慌てず、直線を向くと前にいた馬たちをゴボウ抜きしていった。

 この馬のいいところは、何よりもあの豪脚。追えば追うだけ伸びてくる。よく言う「追ってからしっかりしている」というのが、一番の長所だろうね。3歳のあの時期に「牡馬相手の重賞で走らせよう」という陣営の意気込みも買いだ。

 しかも、この馬はまだラッキーライラックと戦っていない。いわゆる勝負づけが済んでいないわけで、そこに未知の魅力がある。

 父親が短距離馬ロードカナロアという点を不安視する声もあるようだけど、ロードカナロア自身、キングカメハメハの子だし、短距離しか走れない馬ではない。個人的にはそう見ている。現にマイルのGIを勝っているし、走らせれば2000mもこなせたと思う。

 アーモンドアイも、それぐらい(の距離)は持つんじゃないか。初年度産駒だから、成長力という点はわからないけど、それはラッキーライラックも同じ。レース間隔が開いているけど、牝馬だし、そこは心配いらないと思う。

関脇:リリーノーブル(牝3歳)
(父ルーラーシップ/戦績:4戦2勝、2着1回、3着1回)

 阪神ジュベナイルフィリーズ(2017年12月10日/阪神・芝1600m)が2着で、チューリップ賞は3着。どちらも勝ったラッキーライラックには及ばなかったけど、そもそもの能力が世代トップレベルにあるのは間違いない。

 前走のチューリップ賞では、やや力んで走っているような感じがした。トライアルということで、いつもより前で競馬をさせたんだけど、それが力みにつながって、末脚も少し鈍ったんだろうね。

 阪神JFより着順を落として、一見、差は広がったように見えるけど、前哨戦だから”試した”ということを考えれば、悲観することはまったくない。今度はこの馬本来の、折り合い重視で末脚勝負に徹するはずだ。

 この馬は見た目にも”力馬”という印象があるから、時計が速い馬場の競馬には限界がありそう。ラッキーライラックとの差は、速い馬場への適性の差とも言えるんじゃないかな。

 ということは、雨が降って重い馬場にでもなったら、反対に今度はこの馬のパワーが生きる。そのときは、ラッキーライラックを負かす可能性もあると、個人的には見ている。

小結:マウレア(牝3歳)
(父ディープインパクト/戦績:5戦2勝、2回1回、3着1回、着外1回)

 この馬もラッキーライラックには勝てないけど、リリーノーブルとは勝ったり、負けたりだから、能力的には世代トップレベルの1頭と言える。どんなレースでも最後は確実に伸びてくる、というのがこの馬の強み。勝負根性にもいいものがありそうだ。

 ただ、「確実に伸びてくる」というのは、「これ以上伸びない」という裏返しでもあるわけで、桜花賞の出走メンバーを相手にして、どれだけ条件が向いたとしても、この馬が勝ち切るイメージは沸いてこない。直近のチューリップ賞は2着なのに、3着のリリーノーブルよりも下に見たのは、そのため。

 それに、ディープインパクト産駒の超一流馬というのは、最初からズバ抜けて強いもの。でも、この馬の場合は負けたレースもあるし、レースぶりを見ても、そこまで「ずば抜けている」と感じさせるものがない。馬体も小さくて、大物感という点でも乏しい。

 そうは言っても、確実に自分の力だけは発揮する馬。勝てないまでも、上位には必ず食い込んでくるんじゃないかな。

前頭筆頭:トーセンブレス(牝3歳)
(父ディープインパクト/戦績:4戦1勝、2着1回、着外2回)

 前走のフラワーC(3月17日/中山・芝1800m)では、桜花賞には出走しないものの、オークスで惑星と目されているカンタービレ(牝3歳/父ディープインパクト)に激しく迫ってクビ差の2着。あのグイグイと伸びる末脚には見どころがあったね。

 もともと2歳時には、阪神JFで上位3頭に次いで4着に食い込んだ馬。しかも上がりは、ラッキーライラックと同じタイムでメンバー最速だった。能力的な裏づけがあったわけで、フラワーCくらいは走って当然と言える。

 この馬も、終(しま)いの脚がしっかりしているところが長所であり、最大の武器。フラワーCでもメンバー最速の上がり時計をマークしたし、展開がはまれば、上位に食い込んでもおかしくない。

 作戦的にも、後方待機の末脚勝負とはっきりしているから、その”決め打ち”が好結果を生む可能性はある。前が激しくやりあって、ペースが極端に速くなったりすれば、浮上するのはこの馬だよ。

 ただ、勝ちにいって勝てるか? となると、そこまでの強さは感じない。あくまでも展開次第だろうね。

 以上、桜花賞を踏まえて3歳牝馬の番付を選定させてもらったけど、オークスでもそれほど大勢は変わらないと思う。例年の傾向を見ても、距離が800m延びたところで、桜花賞の結果がそのままオークスでも反映されることが多い。特に、牝馬クラシックはそういう傾向にある。

 ゆえに、今年のオークスも例年どおり桜花賞組が強い、というのが個人的な見解。桜花賞をスキップして、オークスを目標とする何頭かに評価の高い馬がいるようだけど、それらは桜花賞組に比べると、戦ってきたメンバーが明らかに弱い。やはり、桜花賞組にはかなわないのではないだろうか。

 また、桜花賞のもうひとつのトライアル、フィリーズレビュー(3月11日/阪神・芝1400m)組も、チューリップ賞組に比べると、そのメンバーレベルは二枚も三枚も落ちる。個人的にはそう評価しているから、今年のクラシックではフィリーズレビュー組の出番はないと見ている。安藤勝己(あんどう・かつみ)
1960年3月28日生まれ。愛知県出身。2003年、地方競馬・笠松競馬場から中央競馬(JRA)に移籍。鮮やかな手綱さばきでファンを魅了し、「アンカツ」の愛称で親しまれた。キングカメハメハをはじめ、ダイワメジャー、ダイワスカーレット、ブエナビスタなど、多くの名馬にも騎乗。数々のビッグタイトルを手にした。2013年1月31日、現役を引退。騎手生活通算4464勝、うちJRA通算1111勝(GI=22勝)。現在は競馬評論家として精力的に活動している。

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