ジャイアントパンダ、シャンシャンの誕生は日本中の話題を集めた(写真:撮好おじさん / PIXTA)

ジャイアントパンダ、シャンシャンの誕生に沸く恩賜上野動物園

シャンシャンは2017年6月生まれ、同年12月より一般公開をスタートした。当初は抽選での観覧だったが、今年2月からは先着順での公開が始まっている。

朝9時30分に始まる観覧の整理券9000枚は平日でも10時過ぎには配布が終了するなど人気を集めている。シャンシャン効果を追い風に、来園者数は久々に年間400万人を突破。その経済効果は数百億円ともいわれる。

上野動物園は1882年に開業した、日本最古の動物園。同時に国内最大の入園者数を誇る。飼育・展示している動物は、ほ乳類で110種1157点、鳥類136種570点など、合計で370種2615点に達する。

たとえシャンシャンが見られなくても、この時期は春休みを利用したり、やや散り始めた上野公園の桜とあわせて動物園を訪れてみようという方も多いかもしれない。

情報公開請求でわかった!動物の「お値段」

そこで気になるのが展示飼育されている動物の価格はいくらなのかということだ。2011年に上野動物園にやってきたパンダのリーリーとシンシンについて、中国からの年間レンタル料が年間で約1億円に達することが話題を集めたぐらい。そのほかの動物の価格は明らかにされてこなかった。

都内にある上野動物園、多摩動物園、井の頭自然文化園、葛西臨海水族園の4つの動物園・水族館を管理するのは東京動物園協会(以下、協会)だ。東京都から指定管理者として、運営を委託されている。

そこで今回、東洋経済は東京都に対して情報公開請求を実施。上野動物園のために保有する動物、45種類370頭の価格(合計10億円)を入手し、1頭当たりの値段が高い順にランキングを作成した。

なお、リーリー、シンシン、シャンシャンの所有権は中国にあるため、東京都として価格はつけていない。また次ページ以降のリストのうち、上野にいるのは「58頭だけで、大半は多摩にいる。あちらのほうが広いのでぜひ行って欲しい」(上野動物園を所管する東京都建設局の東部公園緑地事務所)ということに留意されたい。


1位となったのは、ホッキョクグマの3708万円だ。

上野動物園には現在2頭のホッキョクグマがいるが、2012年3月に取得したことからイタリアのファサーノ・サファリで2008年12月に生まれたメスのデアだとみられる。

ホッキョクグマはIUCN(国際自然保護連合)が絶滅の危機に瀕しているとしている野生動物のリスト「レッドリスト」で絶滅危惧粁爐忙慊蠅気譴討い襦

世界最大の陸上肉食獣で、北極圏に生息。体長はオスで2.2〜2.5メートル、メスで1.8〜2メートルに達する。


1位はホッキョクグマ。価格は3708万円と結構なお値段だ(写真:ジャバ / PIXTA)

2位になったのは1頭当たり3000万円のインドサイとオカピ。上野動物園ではクロサイを飼育し、多摩動物園でインドサイを飼育するという分担をしているため、多摩のものだろう。

インドサイはインドからネパールの湿地帯に生息しており、体長は2.5〜4メートル、体重はオスで約2トン、メスで約1.8トンに達する。サイは現在生息する5種のうち4種が絶滅の危機にある。

意外?ゴールデンターキンのお値段

オカピは1901年に発見された珍獣で、アフリカ・旧ザイール北部の森林に生息している。ジャイアントパンダ、コビトカバと並び世界3大珍獣といわれている。シマウマに似ているがキリンの仲間だ。草原で生きるキリンが体長4メートルを超えるのに対し、オカピは森の中で暮らすオカピは肩高1.6メートルほどにしかならない。

4位はローランドゴリラ。上野動物園の説明によれば、アフリカに生息するゴリラはニシローランドゴリラ(生存数3.5万〜4.5万頭)、ヒガシローランドゴリラ(同3000〜5000頭)、マウンテンゴリラ(600頭)の3つに分類されるという。


5位になったゴールデンターキン。上野動物園は10頭も保有している(PhotoREX 21 / PIXTA)

上野動物園は7頭のゴリラを展示している。2006年3月に700万円で取得している1頭はオスのハオコかメスのナナと見られる。もう1頭、2011年5月に2500万円で取得した個体がいるが、詳細は不明だ。

5位はゴールデンターキン。ウシ科の動物でチベット、ブータン、中国の山岳地帯に生息するターキンの一種だ。その値段はなんと1頭当たり1500〜2199万円と、ゾウよりも高い。

ジャイアントパンダに比べて知名度は低いが中国では第一級保護動物に指定されているという。これも上野動物園では見られないため、多摩動物園で飼育しているものだろう。

7位にはゾウがランクインした。それぞれアフリカゾウは199〜500万円、インドゾウは500万円、セイロンゾウ(アジアゾウ)は100〜500万円となっている。

昔のゾウは安かった?

199万円の値段がついているアフリカゾウは1967年に取得となっているため、多摩動物園にいるアコと見られる。アコは、東アフリカからメスのマコとともに来園(マコは2011年に死去)。いつも2頭で一緒にいるゾウとして人気を集めた。

100万円のアジアゾウは1958年に取得されているため、多摩動物園にいるアヌーラだろう。1953年生まれで、国内最高齢のゾウでもある。

動物園で人気のアミメキリンは250万円で20位に、インドライオンは100万円で38位に入った。


こうした動物の価格はどう決められているのか。

東京都によれば、動物の入手方法は、野生で採取したり、交配によって子どもが生まれる、外部から購入・贈与・寄附、そしてほかの動物園と交換するといった手法がある。

上野動物園を管理する東部緑地公園事務所によれば「物品管理の規則上、100万円以上の物を『重要物品』として管理している」という。

通常、重要物品に関しては減価償却をするが、動物では行なっていない。そのため基本的には、購入価格がほぼ現在の価格(残存価格)となっている。身もふたもないが、動物が亡くなると除却するそうだ。

例えば、アフリカゾウのアコやアジアゾウはアヌーラの価格が、最近きたゾウに比べて安いのは、かなり古い時期、まだ動物が安かったり貨幣価値が違う頃に取得されたことが理由だ。

一方のゴールデンターキンは2003年〜2017年に8頭を1500万円で、2013年に2頭を2199万円で取得するなど、時期に関係ない価格となっている。「取得時期やタイミング、血統、オスかメスかで値段が異なる」(協会)と説明する。

100万円以下の動物は”点数”だけ管理

もうひとつ気になるのは、リストにある以外の動物の価格はどうなっているのかということ。

このリストに入っていないニホンザルやフラミンゴなど100万円以下のものは「『動物台帳』において点数のみの管理となっている」(東部公園緑地事務所)。つまり、100万円以下で取得した動物については価格がないことになる。

この価格を専門家はどう見るのか。『動物のお値段』などの著書があり、動物の売買を専門とする白輪剛史氏は「今の国際相場からすると、10分の1ぐらいの水準だ」と話す。

実際、IUCNのレッドリストで絶滅危惧A類に指定され、世界に4200頭が生存するに過ぎないとされるクロサイの値段が400〜450万円というのは、2位のインドサイ(3000万円)に比べて割安すぎる印象だ。

また希少な大型のオウムやインコが数百万円で取引されるものもある中で、“動かない鳥”として人気をあつめるハシビロコウが125万円というのは意外な値段といえるかもしれない。

数年前に人気を集めたレッサーパンダが150〜200万円するのに対し、カバの120万円、スマトラトラの150万円と、やや低めの価格設定になっている。

もうひとつ白輪氏が指摘するのは、日本の動物園の実態だ。予算が限られる日本の動物園は新たな動物を購入しようとしても、「おカネを持っている新興国の動物園に買い負けしている」(同氏)。

そこで「予算がないから、動物を集めて自分のところで(交配によって)増やし、ほかの動物園と交換する原資にしている。それが表れたリストだ」(白輪氏)という。

確かにリストにはチンパンジーが20頭、チーターが25頭、ゴールデンターキンが10頭と記載されている。協会は2016年度の活動報告書で「希少動物のチーターやゴールデンターキンの繁殖に力を注いでいる」と説明していることから、こうしたほかの動物園と交換したり、レンタルに出すために数多く保有している可能性が高そうだ。

価格はあくまで東京都の資産として登録されている簿価であり、実際の売買価格とは違う。個人が入手不可能な動物が多いだけでなく、動物園同士が交換に使うにしても「こんな安い価格で交換するのはとても無理」(白輪氏)という。

とはいえ、「動物園の多くは税金で運営されている。適切に税金が使われているか知るにはよいではないか」(白輪氏)。この春に、上野動物園に行った際には動物たちの新たな一面が見つかるかもしれない。