日本初公開も多数展示!新宿で「イギリス風景画の巨匠 ターナー 風景の詩(うた)」展

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◆日本初公開も多数展示!新宿で「イギリス風景画の巨匠 ターナー 風景の詩(うた)」展

《セント・オールバンズ・ヘッド沖》 1822年頃 水彩・紙 39.8×68cm ハロゲイト、メーサー・アート・ギャラリー (C)Mercer Art Gallery, Harrogate Borough Council
イギリスを代表する風景画の巨匠、ターナー。独特の光と空気感に包まれた美しい作品は多くの芸術家に影響を与え、当時のヨーロッパはもちろん、明治時代の日本の画家たちも憧れたという。そんなターナーの描いた第一級の風景画を、約120点も展示する展覧会が新宿で開催される。作品の多くが日本初公開というのも、見どころのひとつ。卓越した技術で表現された、近代ヨーロッパの美しい風景を存分に楽しんで。


《ソマーヒル、トンブリッジ》 1811年展示 油彩・カンヴァス 92×122cm エディンバラ、スコットランド国立美術館群  (C)Trustees of the National Galleries of Scotland
第1章は初期の優れた作品が多い、記録的な性格の「地誌的風景画」
2018年4月24日(火)から7月1日(日)まで、新宿の「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」で「ターナー 風景の詩(うた)」展を開催。会場は、イギリス美術研究の第一人者クリストファー・ベーカー氏の監修による4つの章立てで、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775〜1851年)の魅力や風景画の真髄に迫る構成となっている。

第1章は「地誌的風景画」で、描かれた場所が特定できるような記録の意味合いの強い絵画を集めた。

《ソマーヒル、トンブリッジ》は、イングランド南東部にあるカントリー・ハウス(ソマーヒル)で、貴族などが建てた邸宅を描いたもの。ターナーは、邸宅をそのまま中心に描かず、前景の水面から岸、岸から丘の上と、見る者の視線を邸宅へ誘うような構図で見せている。奥行きのある画面の広がりが心地よい作品で、こちらは日本初公開。


《風下側の海岸にいる漁師たち、時化模様》 1802年展示 油彩・カンヴァス 91.5×122cm サウサンプトン・シティ・アート・ギャラリー (C)Bridgeman Images / DNPartcom
海に囲まれたイギリスでは、「海景」も重要なテーマのひとつに
イギリスは四方を海に囲まれているだけに、ターナーの作品でも「海景」は重要なテーマのひとつ。航行する船や、港の風景など、海を描いた作品は数多い。そこで、第2章は「海景―海洋国家に生きてー」として、海洋にかかわる作品を展示。

トップ画像の《セント・オールバンズ・ヘッド沖》はイングランド南西部の岬で、大砲を備えた船や帆船など、複数の船が描かれている。さまざまな船の種類を描き分けていて、ターナーは船に関する知識も高かったみたい。

また、ターナーは「海景」を描く時に、自然の脅威に対する人間の無力さもテーマにしている。《風下側の海岸にいる漁師たち、時化模様》は、荒れた海で懸命に船を操る漁師の姿だけど、この一場面からもそのテーマが伝わってくるよう。


《モンテ・マリオから見たローマ》 1820年 水彩、スクレイピングアウト・紙 29.8×41.5cm エディンバラ、スコットランド国立美術館群 (C)Trustees of the National Galleries of Scotland

古代ローマやルネサンスなど、イタリアへの憧れを描いた作品も
第3章は「イタリアー古代への憧れー」。1819年、44才の時に初めてローマを訪れたターナーは、生涯を通じてイタリアの景色や古代文明を主題にした作品をいくつも描いている。当時のイギリスでは、古代ローマやルネサンスなどのイタリア文化が芸術家たちの憧れでもあった。

《モンテ・マリオから見たローマ》は、初めてイタリアを訪れた翌年の作品。この旅で、ターナーは市内各地を巡り、23冊のスケッチブックに約2000点もの素描を残したそう。モンテ・マリオはローマ北部の丘で、画面の右にはサン・ピエトロ大聖堂のドームも見える。

古代文明の美を残す遺跡や、物語性のある風景に取り組んだターナー。南ヨーロッパの明るい光は、その作品に明るい色調をもたらしているよう。


《スノードン山、残照》 1798-1799年 水彩、スクレイピングアウト・紙 52.7×75.6cm エディンバラ、スコットランド国立美術館群 (C)Trustees of the National Galleries of Scotland
崇高な山岳風景も多数。独特の光と空気感に包まれた作品を堪能して
当時の芸術の概念の中では、「絵になる」ことと並んで「崇高である」ことが大切だったという。ターナーは、「崇高なる自然の美」を表現できるものとして「山岳」に魅せられる。そのスケッチのために、イングランドの湖水地方をはじめ、スコットランドの高地やヨーロッパのアルプスにまで足を運んで、崇高な山岳風景を描いてきた。第4章は「山岳ーあらたな景観美をさがしてー」と第して、山岳の絵画にスポットを当てる。

《スノードン山、残照》はイギリスのウェールズ地方北部にある山で、荒涼とした景観ながら、壮大なスケールを感じられる作品。ターナーの山岳を主題にした作品の中では、人間は小さく、自然は雄大に描かれ、山の持つ圧倒的な力や存在感が伝わってくる。

水彩画、油彩画、版画など、多彩な表現の中で、独特の光や空気感に包まれたターナーの作品。フランス印象派をはじめ、多くの芸術家に大きな影響を与えた風景画の巨匠の作品を、この機会にじっくり味わってみては。