太陽光パネルで生み出した電気を貯蓄しておき、ピークシフトによる電気料金の節約や万一の災害時の非常用電源として利用するために、テスラの「Powerwall」などの家庭用蓄電池が市販化されています。しかし、「Powerwallなどは高すぎる」とばかりに、ノートPC用のリチウムイオンバッテリーを活用して、Powerwallを自作する人がアメリカを中心に増えているそうです。

People Are Using Old Laptop Batteries to Build Their Own Versions of Tesla's Powerwall

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DIYで家庭用蓄電池を作る人は、基本的には「18650」リチウムイオンバッテリーを使います。18650はノートPCのバッテリーなどに使われる直径18mm、長さ65mmの電池で、最も汎用性の高いリチウムイオンバッテリー。汎用性が高いということで、最も安価なリチウムイオンバッテリーともいえます。



ノートPCなどで使われるリチウムイオンバッテリーの多くはリサイクル可能ですが、廃棄処分の過程でリサイクルされないものも多いとのこと。DIY家庭用蓄電池では価格の安い中古の18650が活用されることが多く、家庭用蓄電池を自作することはPowerwallなどの既製品よりもはるかに安く作れるというだけでなく、リチウムイオン電池のリサイクルにも役立つというメリットもあるそうです。

なお、当初は容量7kWhで始まり2代目モデルで14kWhに容量が拡大したPowerwallに対して、その倍にあたる28kWhのDIY家庭用蓄電池を作るユーザーはDIY家庭用蓄電池の掲示板にはよく見かけられ、屋根にある40枚の太陽光パネルとともに40kWhの蓄電能力を持つ家庭用蓄電システムを自作する猛者まで現れており、「既製品の性能では物足りないので作ってみた」という人も中にはいるようです。

オーストラリアのピーター・マシューズ氏による40kWhのシステムは、以下のムービーで公開されています。

18650 DIY Powerwall Built from used laptop batteries ⚡ - YouTube

中古のノートPC用バッテリーをリサイクルして家庭用蓄電池を自作したマシューズ氏。



システムは金属製のロッカーの中にしまっているとのこと。



安全のため、ロッカーは南京錠で施錠しています。



ロッカーの扉を開けるとシステムが登場。



バッテリーの蓄電状況を示すモニターも設置されています。



ずらりと並ぶ18650のバッテリー。



テスラのPowerwallが1120本使っているのに対して、マシューズさんのシステムは4倍の4480本の18650バッテリーを使っているとのこと。



束ねられた再生品の18650バッテリーには、温度や電圧をモニターするためのセンサーが取り付けられています。



大量のバッテリーを壁にぶら下げるために、マシューズ氏はバッテリーホルダーを自作しました。



高い工作精度で製作されているというバッテリーホルダー。



18650バッテリーを束ねるためのプラスチックホルダーも自作。



落下防止のガードも取り付けており、万一の事故を防ぎます。



屋根には40枚の太陽光パネルを設置。



発電した電気の3kW分は「PCM 60X」、1.5kW分は「PIP 4048」という太陽光発電コントローラーで管理しているそうです。



発電した電気は35平方ミリメートルのケーブルでシステムに供給されます。



ジャンクションボックスにはヒューズを取り付けて、過電流を防止。



サーキットブレーカーも設置。



さら水冷システムも設置しており、システムの熱で家庭用の温水を作り出しているとのこと。



バッテリーの状態をモニターするためのディスプレイの裏には……



システムを稼働させるための型落ちのPCを搭載。すべてWi-Fi化済みです。



センサーの情報を受け取る各種追加ボード。なお、バッテリー状況やコントローラーを監視したデータはスマートフォンに送られ、遠隔から常に状況が把握できるようシステムが組まれているそうです。



マシューズ氏は家庭用の電力すべてを自作の太陽光発電&蓄電システムでまかなっているそうです。



市販されていない大容量のシステムを市場価格よりもはるかに安く作れるという魅力のあるDIY家庭用蓄電池は、製作過程で発電や蓄電に関する知識が得られるメリットがあるとマシューズ氏は考えています。しかし、知識や経験が足りないせいで火災事故を発生させる人もいるそうで、太陽光発電&蓄電システムの自作は安全管理を正しく行えることという一定のハードルがあるようで、安易にマネするのはオススメできません。