人生に大切なことは建設現場で学んだ



土屋:失敗についても赤裸々に書かれていて、影山さんを身近に感じることができました。どん底だったと、いつから言えるようになりましたか?

影山:工事現場のアルバイトを辞めてからでしょうか。JAM Projectのファンは若くて、多感な時期を過ごしています。ファンレターなどで悩み相談をたくさんもらうんですよ。そういう年頃の子たちに、俺の話をすることで、武道館で好き放題やっているおじちゃんも悩みを乗り越えてきたんだな、じゃぁ自分も頑張ろうと思ってくれたら、すごく幸せだと思います。

土屋:影山さんは懐が広くて何でもOKのように感じますので、僕もつい相談したくなります。若い頃から頼りにされるタイプでしたか?

影山:昔はもっとおとなしくて口下手で、ネガティブシンキングでした。

土屋:そういうトンがっている時代があっての今でしょうか?

影山:ずっと同じでいられる人はいないんじゃないかと思います。成長することを社会が要求しますから。大事なのはそこから逃げないこと。

今は声も大きいし何でも言えますが、自分は元々そういう人間ではなかった。建設現場でアルバイトをして親方もやりながら家族を養っているうちに身についたんだと思います。

実は音楽業界より先に建設業界で成功したんですよ(笑)。あの業界は人を引っ張っていかなければいけませんから、自分も元気じゃないとダメなんです。そこで頑張ったから変わることができたのかもしれません。

土屋:僕、今41歳なんです。今の若い人は優秀な人が多くて、そんな中でこんな僕が…と不安になります。僕よりも年上なのに若い人を相手にしている影山さんのパワーはすごい。キラキラしている。

影山:JAM Projectを続けていく中で、若い人を無視しちゃいけないと感じているんです。ロックもすごく進歩しているけど、進歩はいつの時代も若い人たちが作っている。それを敏感に察知してJAM Projectにもエッセンスを取り入れたいと思っています。

EDMが流行れば、音楽をやっている娘と一緒に聞いて「お、かっこいいね〜」なんて言いながら参考にしているんですよ。

土屋:それは意図的に?

影山:意図してやっているうちに楽しくなってくるんです。実は今月から皿を回すDJを習いに行くんです。下北沢のバーにチアキくんというオールドスタイルのDJがいて、彼に『58歳のカゲさんが突然皿を回しだしたら、みんなビビるんじゃね?』と言われたので、挑戦してみようかなと思いました。

土屋:そのパワーの源は?

影山:楽しいから!アンテナを張り巡らせながら、それでいて好き嫌いには正直です。
JAM Projectでの活動は、体力的に限界だと思ったら後輩に任せる日がいずれくるでしょう。若くてパワーのあるシンガーが出てくれば、一緒にやろうぜと誘って、俺たちが常に進化し続けてきたマインドを受け継いでもらえたら嬉しいです。

土屋:出る杭と手を結ぶ。育てる感覚ではないんですね。

影山:歌は教えて出来るものではない気がしています。好きだから貪欲に獲得していくもの。でも俺はまだまだガンガン歌っていきますよ。

去年、40周年だったので本を出して、今年の2月14日には40周年の記念のアルバムを2枚出したんです。1枚は『影山ヒロノブBEST カゲちゃんパック〜君と僕の大行進〜』。
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もう1枚は自分のアコースティックライブと合いそうなアニソンのカバー曲を月に1回発表して、レコーディングしたバージョンをダウンロードでリリースしてきました。それが12ヶ月分たまったので、『誰がカバーやねんアニソンショー』というアルバムになりました。

そのアコースティックライブ、4月と5月に東京と大阪でやります。

土屋:アニソン界の神はよく働きますね。ロックをやり続ける姿も、ずっと青春してる感じがして、我々男の子は憧れます。

影山:振り返ればラッキーでした。40年も続けてこられたのは大阪から一緒に上京してきたLAZYのキーボード(井上俊次)が所属レーベル、ランティスの社長をやってくれたり、どん底の時には金はくれないけどライブをやらせてくれた山岸社長がいてくれたり。ターニングポイントで助けてくれる友達がいたのが大きかったと思います。

土屋:何が一番やりたいのか自問し続けた結果、現在のポジションにたどり着かれて、すごいです。

実は僕、今日対談するのは恥ずかしいと思っていたんです。今の自分にとって歌が一番でなければいけないのに、ほかに仕事があることで自分の本心をごまかしていて。

だから全てに前向き、貪欲な影山さんのお話を恐縮しながら伺っていました。これからは背筋を正して生きていきます、今日はありがとうございました!

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プロフィール


影山ヒロノブ

1961年大阪府生まれ。アニソンシンガー、作曲家、編曲家。77年、ロックバンド「LAZY」でデビュー。バンド解散後、ソロに。85年、アニメ・特撮ソングに出会い、以後アニソン界を代表するシンガーとなる。2000年、JAMProjectを結成。活動を世界に広げながら、作詞、作曲もこなす「アニソンアーティスト」としてその音楽を届けている。アルバム「影山ヒロノブBEST カゲちゃんパック〜君と僕の大行進〜」「誰がカバーやねんアニソンショー」が好評発売中。4月30日に大阪Music Club JANUS、5月17日に渋谷duo MUSIC EXCHANGEでアコースティックライブを開催。
影山ヒロノブオフィシャルサイト


土屋礼央

1976年生まれ、東京都国分寺市出身。RAG FAIR として2001年にメジャーデビュー。 2011年よりソロプロジェクト「TTRE」をスタート。ニッポン放送「土屋礼央 レオなるど」、FM NACK5「カメレオンパーティ」などに出演中。
TTREアルバム「ブラーリ」
土屋礼央 オフィシャルブログTwitter - 土屋礼央 @reo_tsuchiya