今や働く人の誰もが知る「マタハラ」という言葉。しかし、実際の適用範囲は広く、私たちがイメージする「差別的な発言をする」「退職に追い込む」ということ以外にも「不利益取扱い」に該当するケースは多いようです。今回の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では、「事業主が行う不利益取扱い」をクローズアップし、詳しく解説しています。

経営者は、マタハラについて、きちんと理解していますか?

マタハラ」という言葉が、だいぶ一般的になってきました。「マタハラ」とは、「マタニティハラスメント」の略語です。

広く一般的に使われるようになってきたマタハラですが、男女雇用機会均等法および育児・介護休業法では、「事業主が行う不利益取扱い」と「マタハラ」を区別して扱っています。今回は、このうちの「事業主が行う不利益取扱い」についてお話します。

たとえば、女性従業員が妊娠したので「解雇」にする。…許されませんよねぇ。許されないというのは、会社も十分わかっています。ですから、「妊娠したから解雇」などとは絶対に言いません。「勤務態度が悪い」とか「能力が足りない」などの理由を述べるのが普通です。

今までは、その解雇が本当に「能力不足」によるものなのか、それとも「妊娠したこと」が理由なのか判断が難しかったのです。ところが、今は違います。

妊娠から1年以内に行った解雇については、「妊娠による解雇」と判断され、違法となります。会社は、その解雇が「妊娠を理由としたものではない」ことを証明しなければなりません。

これは、会社にとって、かなりハードルが高いことです。妊婦だからといって、簡単に解雇はできなくなりました。

ちなみに、これは「解雇」に限った事ではありません。解雇・雇止め・降格・給料やボーナスの減額・不利益な配置等々、かなり幅広く不利益な取扱いとされます。これらを行った時は、会社は別の理由を証明しない限り違法となります。

もちろん、「妊娠」だけの問題ではありません。妊娠・出産はもちろん、産前産後休業や育休・看護休暇を取ったこと、残業や深夜業の免除を申し出たことなどを理由に、それから1年以内に行われた不利益取扱い(※)は、やはり違法と判断されます。妊娠や出産によって労働効率が落ちたことや、残業免除などで仕事量が減ったことは、不利益取扱いを正当化する理由にはなりません。

従業員の権利意識は、年々上がってきている気がします。そこに気を留めず、昔ながらの化石のような発想で対応していれば、必ず痛い目にあいます。そうならないためにも、会社は、労働者の権利やコンプライアンスにしっかりと気を配った経営が求められています。

以上を踏まえて、改めてお聞きします。

「経営者は、マタハラについて、きちんと理解していますか?」

※ 1年以内に行われた不利益取扱いとは、妊娠・出産・育休等の事由の終了から1年以内に行われたものをいいます。

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