一人暮らし男性の割合が高い区と、一人暮らし女性の割合が高い区ははっきり分かれていました(写真:プラナ / PIXTA)

「2040年には全世帯の39.3%、約4割が単身世帯になる」というニュースが今年の初めに話題となりました。この数字は、国立社会保障・人口問題研究所が5年ごとに発表している「日本の世帯数の将来推計」の最新版によるものです。単身世帯、いわゆる一人暮らし世帯の増加が止まりません。


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4割といわれると多いと思われるかもしれませんが、すでに2015年の国勢調査の時点で単身世帯率は34.5%ですから、実はそれほど驚くことではありません。

さらに言えば、その5年前の2010年には、かつて標準世帯と考えられていた「夫婦と子」世帯を単身世帯が数で上回りました。日本の世帯類型の中で一番多いのがもはや一人暮らしという形態です。

東京で暮らす現役世代の半分が一人暮らし

都道府県別にみると、単身世帯率がもっとも多いのは東京都です。単身世帯の中には65歳以上の高齢単身世帯(配偶者と離別・死別)も含みますが、20〜50代に限定してもその比率は変わりません。全国の総世帯に占める20〜50代単身世帯の割合は、全国では男22%、女13%ですが、東京都だけで見ると、男29%、女20%となり、東京の高齢世帯を除くほぼ半分はこの20〜50代の年齢層の単身世帯で構成されていることになります。


今回は、現役世代の単身者の中でも、特に未婚の単身世帯に注目してみたいと思います。単身世帯といっても、その中には有配偶の単身赴任者もいますし、離別・死別した結婚歴ありの一人暮らしも含みます。国勢調査のデータから未婚単身世帯を抜き出すと、東京都では男65万世帯、女48世帯と合わせて約114万世帯が該当します。これは、東京の単身世帯のうち57%、約6割が未婚の一人暮らしだということです。

次に、年代別に見てみます。50歳時点の未婚率である生涯未婚率が急上昇したのは1990年代からですが、1995年と2015年とで、男女別各年代別で未婚の単身者の増減について表したのが次のグラフです。


実は、20代の未婚単身者は男女とも減少しています。晩婚化が進む中で意外な気もしますが、少子化に伴う若年層の人口減少、かつて集団就職などで大挙上京した20代層の減少、そもそも20代のうちに都内で一人暮らしをする経済的余裕がなくなった……などいろいろと要因は考えられます。

一方で、男女とも35歳以上の年代はすべて未婚単身の比率が増えています。男性は50代での未婚単身者の増加が顕著ですが、女性の30〜40代の未婚単身者の増加率が抜きんでています。40代前半の女性は20年前より2.5倍近くに増大しています。

なぜ、東京に住む40代の一人暮らし未婚女性がこんなに増えたのでしょうか?

男余り区と女余り区がはっきり分かれた

そこで、40代の未婚単身者が23区のどこのエリアに住んでいるかを調べてみました。各区単位で未婚単身男女の人口比(男/女)を算出し、女性比率が高い指標はマイナス表示としています。


こちらを見ると、ある傾向が見えてきます。男性が多いのは古き良き下町、女性が多いのは洗練されたおしゃれな町。もっと言えば、男性が多い江戸川区、足立区、葛飾区などのエリアは、どちらかというと一般的に家賃が低い場所であるのに対して、女性が多いエリアは、目黒区、中央区、港区など家賃が高いエリアと言えます。これは、40代だけの特徴なのでしょうか?

そこで、全年代の男女差分のランキングも調べました。


男性は、20〜50代まで江戸川区が1位を独占です。しかも、65歳以上の高齢者含めてベスト3すべてが江戸川区、足立区、葛飾区の3区で占められていました。

一方、女性は、20〜30代で世田谷区が上位に、40代以上で港区が上位にという多少の変動はありますが、目黒区、中央区、港区という3区が強いことは間違いありません。

なお、この比較はあくまで男女の人数比の差で見たものです。絶対数で見ると、20〜50代男性が多く住んでいるのは、上位から大田区、新宿区、世田谷区、杉並区の順ですし、女性も同様に、世田谷区、杉並区、大田区、新宿区の並びとなります。男女とも、順位の違いこそあれ、人数として多いのは大田区、世田谷区、新宿区、杉並区の4区です。

もちろん、居住地は職住接近の要因など働いている場所にも影響されます。特に、女性の場合は、帰宅時間との兼ね合いや治安の良さなども勘案されるべきでしょう。だとしても、すべての年代においてここまで如実に男女の違いが出るのは非常に興味深いと思います。

男の未婚の一人暮らしが家賃の低い所に住み、女の未婚の一人暮らしが家賃の高い所に集中する理由とはなんでしょうか?

年収と未婚一人暮らし男性世帯割合に強い相関

2013年の総務省統計局「住宅・土地統計調査」確報集計の世帯人員1名の年収階級別統計データより、年収300万円未満の構成比と40代未婚単身男女比との相関を見てみます。(注: 「住宅・土地統計調査」では配偶関係及び性別・年齢は分けられていませんので、未婚以外の離別・死別単身者も高齢者も含む総数値)


低年収世帯の比率が高い区ほど、男性未婚単身世帯比率が高くなり、逆に、高年収世帯の比率が高い区ほど、女性未婚単身世帯比率が高くなるという強い相関関係が見られます(相関係数0.68315)。つまり、目黒区、中央区、目黒区に住める女性というのは明らかに年収が高い人が多いわけです。言い換えると、40代未婚の一人暮らしの場合、女性は高収入が多く、男性は低収入が多いということです。

住居は必ずしも賃貸とは限らず、持家である場合もあります。同じ2013年「住宅・土地統計調査」から単身世帯の男女別各年代別の持家比率を見てみると、30代までは単身男性の方が持家比率は高いのですが、40代前半で男女の比率が同じになり、40代後半では単身男性25%に対して、単身女性32%と逆転します。それ以降の年代は単身女性の方が常に持家比率が高いままで推移します。

私は、かつて結婚する意思の低いソロ女にインタビューした時がありました。その定性調査でも「40代になって結婚を断念した未婚の一人暮らしのソロ女は、家を買いがち」という傾向が顕著だったことを思い出します。

低収入の男性と高収入の女性が生涯未婚に陥りやすいという現実は、以前『女性が直面する「稼ぐほど結婚できない」現実』という記事でも書きました。一人暮らしの未婚女性が増えているということは、それだけキャリア志向で経済的に自立している未婚女性が増えているという証拠でもあり、この層は「自分より収入の低い男性と結婚するくらいなら、一生未婚でいい」と考える傾向もあります。

だからこそ、自分のソロ活動人生を謳歌するために、住みたいエリアに住む。場合によっては、ローンを組んでマンションなどを積極的に購入する。そのために20代のうちから貯蓄に励むソロ女も多いことでしょう。

未婚単身男女に広がる格差

一方で、40歳になっても非正規雇用などで低収入の男性は、持家購入など夢のまた夢です。自分の収入の範囲内で住めるエリアを探せば、必然的に家賃の低い下町エリアしか選択肢が残されていません。家賃・水道光熱費と食費を合わせたら可処分所得のほとんどを使い果たし、貯蓄するゆとりすらないという状態なのです。

40代未婚の一人暮らしという同じ境遇であっても、内実は両極端の格差が開いていると言えますし、高収入・アップタウン在住のソロ女と低収入・ダウンタウン在住のソロ男というふたつの層は、マッチングすることもないどころか、出会うことすらあり得ないわけです。職場も遊ぶ場所さえ違うわけですから。

東京23区の未婚一人暮らし男女それぞれの住む場所の違いから見えてくるのは、可視化されない「身分・階級の違い」なんではないでしょうか。