2018年1月に本格稼働を開始したカリフォルニア州クパチーノにあるAppleの新社屋「Apple Park」で、建物の1階に設置された巨大なガラス窓に従業員が激突するという事故が続発しているとのことです。従業員の中には出血して救急車を呼ぶほどのけがを負う人も出ている模様で、当局からの指導も受けたAppleは対策に乗り出しています。

911 recordings reveal Apple’s problem of employees walking into walls | Ars Technica

https://arstechnica.com/tech-policy/2018/03/i-walked-into-a-glass-door-911-recordings-from-apples-new-campus/

Apple’s glass walls result in 911 calls | TechCrunch

https://techcrunch.com/2018/03/05/apples-glass-walls-result-in-911-calls/

Apple Parkは巨大なドーナツ型をした4階建ての建物で、全面がガラスで覆われているのがデザインの大きなポイントとなっています。ガラスを用いることで周囲の風景に溶け込み、周りの木々と一体化したような効果が感じられるデザインなのですが、この試みが思わぬ弊害を招いてしまっています。

2018年1月に従業員が以前の本社から引っ越しを始めて新本社に移りだした直後から、このガラス窓に激突する人が続発する事態が生じています。しかも、そのうち少なくとも3人は緊急通報「911」をダイヤルして救急車を呼ぶほどの事態となっています。ある従業員の男性が地元の新聞San Francisco Chronicleの取材に対し、「建物の外に出ようとしていた時に、Apple Parkの1階にあるガラスのドアに激突しました」と語っており、その際には救急車を呼んだとのこと。



また、その男性の2日前にあたる2018年1月2日にも、大きめの「事故」が起こっています。この日はAppleの従業員が新社屋への移動を開始した日で、Appleから911の通報の際に「ガラスの壁面に走って突っ込み、頭を打った人がいます。頭には小さなけががあって出血しており、少しうろたえている状態です」と説明して救急車を呼んでいます。

さらに同じ1月2日には別の中年男性の従業員がガラス窓に激突。その際にも911通報が行われており、通話記録には「従業員がガラスの窓に激突して頭を打ってます。まぶたの辺りに切り傷があります」という音声が残されており、この男性は数針縫う処置を受けるほどのけがを負っています。しかしこれらの事件で、実際に病院に搬送されるほどのけがを負った人がいなかったことは不幸中の幸いといえそう。

San Francisco Chronicleは2018年3月2日付けの記事で、地元の市当局がAppleに対して注意力散漫な従業員がガラスの窓やドアに激突するリスクについて警告を行っていることを報じています。また、消防法でもこのような事態を避けるために、ガラス窓に適切な表示を行うことが定められています。

House of pane: Apple was warned of glass danger - San Francisco Chronicle

https://www.sfchronicle.com/business/article/Apple-was-warned-about-glass-danger-by-Cupertino-12723598.php



この件に関してはAppleでも問題視しており、不動産関連の担当役員であるDan Whisenhunt氏は「この問題に取り組んでいます」と語っています。救急車が出動する事態を受け、Appleはガラスに視認性を高めるためのシールを貼る対処をとっており、San Francisco Chronicleによると「緊急通報が行われるほどのアクシデントは発生していない」とのこと。事態が改善されたのなら好ましいことですが、果たしてこの通報の際にはiPhoneの緊急通報機能が実際に使われたかのか、少しだけ気になるところです。