「どう考えても賭博」580億円流出のコインチェック騒動を受けコメント【津田大介×東浩紀×夏野剛】

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 仮想通貨を発行する取引所「コインチェック」がハッキング被害を受けたことにより、580億円相当の資産が不正流通された「コインチェック騒動」。

 上記騒動を受けて、評論家・東浩紀氏、メディアアクティビスト・津田大介氏、ドワンゴ取締役・夏野剛氏が急遽集合。「仮想通貨について言いたい事を言う生放送」と題し、仮想通貨の現状や抱える課題について、お酒を囲んで気兼ねなくしゃべる生放送を行いました。

 「押した瞬間のレートで変換されているだけのゲーム」、「どう考えても賭博なのに、まったく規制が入っていない」、「ダフ屋の規制をやる前に、こっちの規制をやれ」など、3人の口から誰にも縛られない意見が次々と飛び出しました。

左から東浩紀氏、津田大介氏、夏野剛氏。 コインチェックに持っていかれた!

東:
 僕が聞きたいのは、現時点で今、コインチェックにいくら突っ込んじゃっているかです。

夏野:
 あずまんの場合は?

東:
 僕は、20万ですね。

夏野:
 20万で、返ってくる見込みが薄いと見たらいいんだ?

東:
 今、イーサリアム【※】を売っても、12万6000円しか売れないって出ているけど、20万円を突っ込んだまま動かせなくなっているので。

※イーサリアム
ビットコインと同じく、主要な仮想通貨の1つ。

夏野:
 アンケートをしている間に、乾杯を。あずまん20万おめでとうございます!

東:
 はい! って、何がめでたいのかわからないよね。でも、今回は俺も被害に遭ったから、こういうことを言ってもいいと思うんだけれど。ビッグ・ウェーブに乗った感ありますよ。

津田:
 確かにね。超当事者ですからね。

東:
 「きたか!」という感じだった。破綻したときに見たら、笑ったもん。「やべえわ、これ来たな」みたいな。ちょっと嬉しくなった(笑)。

津田:
 この当事者として語ることができる権利を……。

東:
 破綻してるよ。やべえ、みたいな(笑)。

夏野:
 それは、すごいエンターテイメントを与えているよ。

津田:
 しかも、200万とかだと笑えるけど20万ぐらいではね。

夏野:
 キャバクラで女の子に、3回ぐらい突っ込んだ感じ?

津田:
 このアンケートの9の【1000万円以上】の人がいたら、こんな番組を見ている場合じゃなくて、他のことをやるべきだと思うけど。

東:
 1000万円以上の人たちは、むしろいますぐネットをやめたほうがいい(笑)。これからは、ネットの情報にだまされないようにした方がいいよ。

夏野:
 結果いきましょう。

東:
 9いるのかな?

津田:
 9いるか!

一同:
 (笑)

東:
 ええ、本当に?

津田:
 絶対ネタでしょ? これ。

東:
 嘘だよ!

津田:
 コインチェックを買ってない。仮想通貨を持ってない人が押したいだけだよ。

東:
 7(〜500万円)あたりがリアルじゃない? 10.5%が。

夏野:
 でもね。よく考えて。この、二ヶ月のクリプトカレンシー(仮想通貨)に対する、一般庶民の反応がガラリと変わったんだよ。

 俺も結構、質問を受けるわけ。例えば、うちのシッターさんが「ミスター夏野は、詳しいよね? 主人と息子が仮想通貨のマイニング【※】をやろうとしている」と。

※マイニング
仮想通貨の取引記録を取引台帳に追記する作業は有志のコンピューターリソースを使用しており、追記作業を行った者には、見返りとして仮想通貨が新規に発行される。この新規発行に至る一連の行為を「マイニング」という。

東:
 いきなり?

夏野:
 クリプトカレンシーじゃない、マイニングとか言っているの。マイニングって今は、みんなすごい物量でコンピューターを回しているのに、そんな一般市民がパソコンをグルグル回したぐらいで、マイニングなんかできないじゃん。

 そして、「うちの旦那と息子がやってるこれは違法じゃないのか? 違法だったら、ビザが継続できなくなるから、日本にいられなくなる」って言うのよ。そんなレベルでやろうとしている時点で、これは仮想通貨の時代は終わったなと思った。

東:
 終わったんだ。始まったんじゃないのね。

夏野:
 だって、そういう素人が参入してきたら破綻するのは目に見えてるじゃない。

津田:
 ちなみに、その質問に対してはどういうアドバイスをしたんですか?

夏野:
 「違法にはならないから頑張れば? でも、チャンスはないよ」と。

津田:
 すばらしいアドバイスです。

東:
 わかる。僕も最近、地方都市に講演に行って、そこのまったく関係のない業界の人に「友達がマイニングをやり始めたんだ」と言われた時は、マイニングが流行っているんだとビビりましたよ。

夏野:
 さらにすごい事実があって。今、日本の個人金融資産は1800兆円を超えちゃっているんですね。ところが一方で、貯蓄ゼロの世帯が3%ある。

 これは、何を意味しているかというと、親の金でやっていて、親は「出川哲朗さんの宣伝は何をやっているのかわからないけど、儲かるかもしれない。」というときに、息子が出てきて「俺、マイニングやるからさ」とか「俺、ビットコインやるからさ」と言うと、じゃあ、1000万円ぐらいポン、と。

東:
 マイニングをやるって、PCをズラッと買ってくるわけ?

夏野:
 1台。で、1台買ってみてもマイニングができないから何をするかというと、取引所で買う方向に行くわけよ。

 で、親がメチャメチャ金を持っているわけ。今、1800兆円の個人金融資産の80%以上が、60歳以上が持っているからね。

津田:
 確かに、それで目端の利くやつが、1000万円とか突っ込んでいったら。

夏野:
 「億り人【※】」が増産されていますよ。でも、普通に所得税が課税されるからね。株式は20%だけど、仮想通貨は雑所得だから、1億円儲けちゃったら55%。

 しかも請求が来るのは、これから。3月に納税だから、そのときには阿鼻叫喚よ。

※億り人
株式投資などで億単位の資産を築いた人を指す俗な言い方。2008年の映画『おくりびと』をもじっている。

東浩紀のコインチェック体験記 東浩紀氏が利用中のアプリ「Coincheck ビットコインウォレット」

東:
 これが、俺の買っている現実だ! ちゃんと取引しているぞ!

津田:
 こういうことで、ネタにできるという権利のためだけに20万円を突っ込んだ。

東:
 これ、10秒ぐらいすると金額が変わるんだよ。今12万5970円。あ、80になった。今も値段が変わったんだけど。これ、僕はやりはじめてわかったんだけど、これがいいのよ。これは、高校生とかやったらハマるよ。

 だって、10秒毎に金額が変わるんだよ。夜中の午前4時に起きたら、時刻を見る前にコインチェックを立ち上げるようになる。「うーん。いやいや、まだいいか」と見て、また寝るの。

津田:
 買った翌日とかに破綻?

東:
 違う違う。僕が買ってたのは、ビットコインが1月中旬ぐらいで、すごく暴落したときに、暴落の3分の2くらいのところで買ったわけ。「ここで掴めば、これから結構ボンといくんじゃないか?」「ビットコインって下がると言っても、こういう感じだから」とか、素人考えでね。

 で、買ってみたら、「あれ? まだ下がっているよ。とりあえずこれ、元本割れは阻止しなければ」みたいな感じで、僕が20万突っ込んだのを20万6000円で売って、そのまま撤退する予定だったわけ。

津田:
 最初は、ビットコインを買って、6000円の利確をしたんだ。

東:
 そう。それで、「6000円、よし!」と。この3日間もすごく楽しんだし、もう充分だと思っていたんだよね。

 だけど、そのときに津田さんが前に言っていた。「ビットコインはダメかもしれないけど、イーサリアムは確実に儲かるんじゃない?」という言葉が耳にきて。「確かにイーサリアムはそこまで下がってないよな」と考えはじめて、イーサリアムを買っちゃったのよ。

津田:
 でも、それ、俺のせいでも、イーサリアムのせいでもなく、コインチェックという信頼できない業者を選んでしまった東浩紀の自己責任じゃないの?

東:
 でも、コインチェックの宣伝とかを見て、俺がやりたかったのはコインチェックだったの。一番のきっかけは、どこかのニュースで年末から今年にかけてのビットコインの急騰というのは、日本の個人投資家が支えているんだという。

夏野:
 そうだよ、86%。

東:
 そのニュースに、すごく関心を持って、「それはどういうことだ? なんでそんなに大量の日本人が行っているんだ?」と。それは、やっぱりアプリだろうと。ならばアプリを自分で使ってみるしかないなというところで、コインチェックのアプリを自分で使い始めてみたら、確かにハマって。チェックしていてずっと面白いのよ。

 俺は、ハマったときはもっと突っ込めば良かったと思っていたのよ。しかも、このアプリがすごく適当というか簡単で、20万突っ込むじゃん。で、「コインを買う」って書いていて、デフォルトでビットコインの変換の数字が書いてあるわけ。

 「購入する」ってボタンを押すと、普通は、ダイアログが出ると思うじゃないですか? 「いくら購入するんですか?」とか、「本当にいいですか?」とか、出ない。「購入する」というボタンを押したら、ビットコインが買われちゃっている。20万。「ええ! 全額ビットコインに行っちゃったの!? 俺は少し遊ぼうと思っただけなんだけど、まあ、いいか」って。

津田:
 bitFlyer【※】は、一応、「数秒間のうちに承認するか?」みたいなインターフェイスだから。

※bitFlyer
株式会社bitFlyerが運営する仮想通貨交換業取引所。

東:
 しかも、僕はやらなかったけど、右上の方に「レバレッジで買いますか?」みたいなメニューがあって(笑)。

津田:
 やばい(笑)。

夏野:
 危険(笑)。

東:
 これは、俺やってないんだけど、「100万円以下の入金の人の場合は、5倍までしか使えません」とか、書いてあるんだけど。つまり、5倍まで使えるの!? って。

津田:
 100万円分。

東:
 そう。100万円分使っちゃっていたら。

夏野:
 やろうやろう。

東:
 今は買えないから、やれない。

津田:
 レバレッジしていたら最高だったね。

東:
 レバレッジしてたら俺80万突っ込んでたよ。追証【※】を。

※追証
おいしょう。追加証拠金。代用有価証券が値下がりしたり、信用取引をしている銘柄に含み損が生じたりした場合、委託保証金が「最低保証金維持率」を保つために必要な額を下回った時に追加で用意する不足分の保証金のこと。

一同:
 (笑)

夏野:
 最高だね。

規制がかからない危険なアプリ

東:
 冗談じゃないよ。だからこれ、すごくやばくて、とんでもないアプリだと思ったもん。

津田:
 とんでもないアプリというよりか、とんでもないサービスなんじゃないの? それに、どう考えても賭博なのに、まったく規制が入っていないってことでしょ?

東:
 あと、クレジットカードでも買えるのもやばくって、クレジットカードだと、もっとパーセンテージが悪いんだけど。それも掲示板とかで悲鳴が上がっていて、だから、クレジットカードで買うと……。

津田:
 要するにクレジットカードの枠、全開で先物買いをするわけね。やばいね。

東:
 これが最悪なの。だから、現金を入れられなくても、今、ビットコインのチャンスを逃そうとしているとき、日曜深夜とか、今突っ込むべきなんだけど現金がない場合、クレカで100万までいける。ずるい。

津田:
 もう、このままじゃ俺はカード破産だ。だから、最後にコインチェックでやろうみたいな。bitFlyerには、そういうのなかったと思うんだけどな。

東:
 コインチェックは絶対やばいと思ったよ。だから、すごく楽しんで、破綻したときも大笑いした。

夏野:
 ゲーム感覚でやってると、本当に現金が来るっていうのは、みんなわかってなかったかもね。

東:
 そうでしょうね。チェックするとノータイムで変換されているから、もしかして売買されてないかもしれないわけでしょ? 単純にあの中で数字をいじっているだけで。

夏野:
 あれは、詐欺だよ。完全にノミ行為です。

東:
 完全にノーチェックだから、一応、例えば楽天証券とかだったら、売ってるらしき雰囲気があるじゃないですか? 「本当に売りますか?」というのもあるし、一応連絡が行って、向こうで売ってるんだなって感じなんだけど。

 これ、完全に、単に今押した瞬間のレートで変換されているだけだから。

夏野:
 しかも、本当にコインを買ってないし。

東:
 買ってない。それで、スプレッドだけ取っているんだとしたら、これ、とんでもないわけですよ。ひどいよね。

夏野:
 ノミ行為ですよ。ダフ屋の規制をやる前に、こっちの規制をやれって。

東:
 そうね。

夏野:
 ただ、長期的になるので、やっぱり時間がある人じゃないとこのゲームに参加できないんです。

対談中も相場から目が離せない

東:
 僕もそう思って、対談中にビットコインが22万円まで上がったんですよ。でも、対談中じゃないですか?

一同:
 (笑)

津田:
 対談中に金額を確認しているってことだよね。確認までしているんだったら、売っちゃえばよかったんじゃない?

東:
 これをいつやったのか? 津田さんと話してた時だよ。

津田:
 え? いつ?

東:
 津田さんの事務所で打ち合わせがあった時だよ。あの時、俺、ビットコインを確認してたんだよ。

津田:
 マジか!? すごい真面目な打ち合わせだったじゃん。

一同:
 (笑)

東:
 あのとき、22万か22万5000円ぐらいになっていて、「今行きたいな、でも、ちょっと一呼吸置くか」とかやっていたの。

津田:
 すごく難しい顔をしていたと思ったら、そっちだったんだね。

東:
 普段、TwitterはiPadでやっているんだけど、コインチェックはiPadのアプリがないから、iPhoneで見るしかなかった。

 だから、iPadとiPhoneを二重置きにしてたの。あれがやばくて、やたら見ちゃうんだよね。

津田:
 確かに、いつもと挙動が違ってやたら何かを見ているなとは思った。

投機が奪うのは金と時間

夏野:
 生々しいね。しかし、本当に時間がある人じゃないと、投機的な商品は無理。FXがそうじゃん。FXは為替相場で動きが遅いからいいんだけど、こっちは早いから。

東:
 これ、365日24時間で完全にやってるからね。

夏野:
 寝られない。麻薬だよ。

東:
 これ、僕も一週間やっただけでわかったけど、日本の連中が起きる直前というのが、結構値段が上がったり下がったりするの。

夏野:
 それはなんでかというと、取引の86%が日本人だから、少ない参加人数だと。

東:
 だから、午前4時ぐらいまでバーって上がっていってても、日本人が起き始めると、相場が逆に動きだすのよ。だから、「なるほど。4時ぐらいが狙い目」だとわかるの。

夏野:
 市場メカニズムの勉強になるね。

東:
 結構、一週間でも、ずっと見ているとわかるの。

夏野:
 じゃあ、経済学部の学生は、コインチェックに、まず10万払わないと学位はもらえない。

東:
 そのくらい勉強になりますよ。「3時から4時ぐらいなんだな」みたいなね。

夏野:
 しかし、その勉強は何の役にも立たないという。

東:
 しかも、消えちゃったからね。でも、今でも数字が動いているのが笑えるんだよね。12万5千740円になっているけど。これ、ちょっとずつ動いているんだよ。

 俺の総資産も。笑っちゃうよね。これ……(笑)。