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●最も売れるジャガーに? 伸びるコンパクトSUV市場に新商品

高級サルーンやスポーツカーのイメージが強いジャガーが、同ブランドで2台目となるSUV「E-PACE」を日本で発売する。伸びる市場に商品を投入するビジネス上の判断は理解できるが、それ以外に、ジャガーSUVを作る理由はあるのだろうか。SUVを作るのであれば、ジャガー・ランドローバーには、この車種を専門とするレンジローバーというブランドがあるにも関わらずだ。その理由を新車発表会で聞いてみた。

○先入観をくつがえす2台目のSUV、狙うは新規顧客の開拓

ジャガー「E-PACE」は、ブランド史上最速のペースで販売台数を伸ばすSUV「F-PACE」に続き、同社が市場投入するコンパクトSUVだ。新車発表会に登壇したジャガー・ランドローバー・ジャパンのマグナス・ハンソン社長によると、E-PACEはジャガーらしいスポーティーなキャラクターと実用性を兼ね備える日本市場に適したクルマだという。デザインはジャガーのスポーツカー「F-TYPE」にインスパイアを受けている。クルマの性能についてはこちらの記事を参考にしていただきたい。

ジャガー初のSUV「F-PACE」はハイペースで台数を伸ばしているそうだが、ジャガー・ランドローバー・ジャパンのマーケティング・広報部でディレクターを務める若林敬一氏は、E-PACEがF-PACEを超えて「最も売れるジャガー」になると予想する。

F-PACEより小型で価格もこなれたE-PACEでは、「ジャガーは値段が高くて、大きくて、自分よりも年上の人が乗るもの」というような先入観を持つ人にアピールし、新規顧客を開拓する構え。狙うのは30〜40代だが特に30代とし、世帯年収としては1,000万円以下の顧客の割合を6割くらいにしたいとする。また、主に男性が乗るものとの固定観念にも挑戦し、女性比率で4割くらいを目指したいとも若林氏は語っていた。

SUVを作る1つ目の理由は「市場の声」、2つ目は…

では、より具体的に、E-PACEではどのくらいの販売台数を狙うのだろうか。数値目標を掲げることは避けた若林氏だが、ヒントはくれた。まず、日本自動車輸入組合(JAIA)によると、2017年の日本におけるジャガーの新規登録台数は2,614台。販売台数の内訳では同ブランドで最も売れている「F-PACE」と「XE」がトップ争いを繰り広げており、この2モデルで総販売台数の7〜8割を売っているという。そして、E-PACEはF-PACEよりも売れるというのが若林氏の見立てだ。

さて、なぜジャガーSUVを作るかという冒頭に掲げたテーマに戻ると、まずは「売れるクルマだから」というのが1つ目の理由のようだ。実際のところ、世界的にクルマの需要はセダンタイプからSUVにシフトしているのが現状。日本でもミニバン、セダン、ハッチバックなどからの乗り換えが増えていると若林氏は分析する。シートが高く、荷室の広いSUVは「日本を含め、全世界の顧客が本当に欲しがっている種類のクルマだ」とはハンソン社長の言葉だ。ただし、ジャガーは市場の声に従って、仕方なくSUVを作っているのではない。

ジャガーらしいSUV、「マカン」がライバル?

SUVでもジャガーライクな走りを追求

ジャガーSUVに参入した理由の2つ目としてハンソン社長は、「最近は技術がとても進歩して、このタイプのクルマを、ジャガーとしてのキャラクターを保ったまま開発することが可能となった。例えばシャシーやボディなどの部分でだ」と語った。「車高が高いクルマであっても、“ジャガーライク”な走りを実現することができるようになった」として、ハンソン社長はジャガーSUVの出来栄えに自信を示す。つまり、売れるタイプのクルマを、ジャガーらしさを損なうことなく作れる環境が整ったことが、同ブランドがSUV市場に参入した理由というわけだ。

では、ジャガーらしいSUVの乗り味とはどんなものなのか。若林氏はジャガーの創業者であるサー・ウィリアム・ライオンズ氏の「車とは我々が創造しうるものの中で、最も生き物に近い」という言葉を引き合いに出しつつ、「ジャガーは動物のようなクルマといっているので、乗ってワクワクするとか、楽しいとか、癒されるといった効果も期待できる。E-PACEを選んでもらえれば、人生が豊かになる」とする。

SUV市場はまさに群雄割拠の様相を呈しており、価格帯やセグメントの分け方で考えた場合、E-PACEはBMW「X1」、ボルボ「XC40」、メルセデス・ベンツ「GLA」、レクサス「NX」、アウディ「Q3」などと競合するというのが若林氏の予想だ。しかし、選択肢が飽和状態のSUVセグメントで、あえてスポーティーな部分を突出させて商品化したE-PACEである以上は、「ポルシェの『マカン』とガチンコ勝負」(若林氏)をしたいという思いもあるようだ。