<特定の友人と仲良くする「ベストフレンド」という概念がなくなれば、登校するのも辛くない?>

2人だけがわかる合図や交換日記、時には喧嘩や擦れ違いもあるけれど片割れのような「ベストフレンド」の存在は、幼少期から思春期そして一生続くかもしれないかけがえのない宝物だ。

しかし「ベストフレンド」はもういなくなるかもしれない。いや、正確に言うとこの言葉を友人に当てはめるのが、禁止されるというのだ。

先ごろ、複数の欧米メディアが報じたのは、一部の学校で生徒が「ベストフレンド」と称する友人を持つことを禁じる校則を設ける動きが増しているというニュース。CBSによると、ヨーロッパの一部の学校ではすでに導入に向けて動き出している。

毎日学校に行くのは恐怖心から

この動きは単に仲の良い子を引き裂くものではなく、子供たちの友情の輪を広げることに狙いがあり、多くの教育者も支持しているという。

実際に「ベストフレンド」禁止を校則に盛り込むと噂されるのが、イギリス王室のジョージ王子が通う私立小学校「トーマス・バタシー」だ。臨床心理学者のバーバラ・グリーンバーグ博士の協力のもと、「ベストフレンド」解体の先陣を切るとみられている。

グリーンバーグによると「これまでもアメリカやヨーロッパの一部の学校では『ベストフレンド』というフレーズを禁止する動きはあった」そうで、これは「非常に興味深い社会実験」だと話す。

グリーンバーグはこの動きを手放しに賛成するわけではないが、「ベストフレンド」禁止が進められる背景にはしっかりとした根拠がある。

そもそも子供が毎日登校するのは、「仲間外れになること、親友と呼べる存在がいないこと、そして親友だと思っていた子が自分から離れていくことに対する恐怖があるため」と指摘する。これを変えるために重要なのは、子供たちに排他的ではなく包括的なグループであるように教えることだと説明している。

学校がやろうとしていることは、特定の子供同士が密接な関係になったり、「ベストフレンド」と呼べる存在を持つことを禁止することはできないが、複数の友人を持つよう促す試みだと考える。

ニューズウィーク日本版ウェブ編集部