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前回は、超高齢社会におけるライフモデルとして、今まで前提としてきた3ステージ型の人生モデルが通用しなくなり、マルチステージ型の人生モデルが登場するということを述べました。今回は、マルチステージ型の人生モデルに移行するために、私たちに何が必要なのかを考えてみたいと思います。

○有形資産と無形資産

まずは、有形資産です。これは従来の3ステージ型の人生モデルでも重視されていたもので、現金や銀行預金に代表される金融資産、マイホームなどの不動産がこれに相当します。これらの重要性は今更言うまでもないでしょう。人生モデルが新しくなっても、市場経済が続く限り、引き続き重要な役割を果たしていくことになると考えられます。

加えて、有形資産と同じくらい重要なものとして、無形資産を挙げます。無形資産とは、基本的には目には見えないもので、お金には換算できない要素を含んでいます。

よって、値段を付けにくく、売買するのが難しいという特徴があり、計画や投資が難しいとされます。例えば、高度なスキルや知識、肉体的・精神的な健康、仕事仲間や友人といったものです。

○無形資産の3分類

『LIFE SHIFT』の著者であるリンダ・グラットン氏は、無形資産を3つのカテゴリーに分類しています(※1)。

第一は、生産性資産です。仕事の生産性を高め、所得とキャリアの見通しを向上させることに役立つ資産です(※2)。代表的な生産性資産は、身につけたスキルと知識ですが、他にも相互の信頼で結ばれた強力な仕事仲間のネットワークや、まわりの人からの好ましい評判といったものも生産性資産となります。仕事の生産性を高めるものとして、スキルと知識が必要なことは納得される方も多いでしょうが、その生産性を発揮するためには、仕事仲間や評判といったものも重要になります。

第二は、活力資産です。私たちに幸福感と充実感をもたせ、やる気をかき立て、前向きな気持ちにさせてくれる資産です(※3)。肉体的・精神的健康や心理的幸福感といったものが該当します。

長寿化が進むにつれ健康の価値はより大きなものになります。50歳のときに病気で働けなくなるダメージは、人生70年時代よりも人生100年時代の方がずっと大きいからです。不健康の代償は、経済的な面はもちろんのこと、それ以外の面でも甚大なものになりかねません。バランスとの取れた食事、定期的な運動といった、わかっちゃいるけど継続は難しいことに着手する必要があります。

加えて、精神の健康と幸福感を維持には、前向きな親しい友人たちのネットワークが役に立ちます。友人とのネットワークは、私たちに支えと安らぎを与えてくれます。しかし、私自身も経験がありますが、このネットワークは、例えば仕事に忙殺され、連絡を取ることを怠っていると消失していきます。老婆心ながら、若手社会人の皆さんには、親しい友人たちとのネットワークを維持していくために、ぜひ自ら行動してほしいと思います。

第三は、変身資産です。これは人生の途中で変化と新しいステージへの移行を成功させる意志と能力を指します(※4)。言い換えれば、移行につきものの不確実性への対処能力を高める要素になります。それは、自分についての知識、多様性に富んだネットワーク、新しい経験に対して開かれた姿勢といったことです。

自分についての知識をもっている人は、外的要因により忙しい毎日を強いられたり、仕事や居住地が変わったりしても、自分のアイデンティティが脅かされているとはあまり感じないそうです。また、新しいことを始めるためには、それまでよりも広く多様性に富んだ人的ネットワークに触れることも必要です。そこでは、新しい価値観、規範、態度、期待に触れられるからです(※5)。加えて、実際に行動するためには、「過去に例のない大胆な解決策を受け入れる姿勢、古い常識ややり方に疑問を投げかけることをいとわない姿勢、画一的な生き方に異を唱え、人生の様々な要素を統合できる新しい生き方を実践する姿勢 も必要になります(※6)。

(※1)リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット『LIFE SHIFT - 100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)127ページ

(※2)リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット『LIFE SHIFT - 100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)128ページ

(※3)リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット『LIFE SHIFT - 100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)144ページ

(※4)リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット『LIFE SHIFT - 100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社) 157ページ

(※5)リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット『LIFE SHIFT - 100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)165ページ

(※6)リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット『LIFE SHIFT - 100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社)166ページ

○最後に

今回は、マルチステージ型の人生モデルに移行するのに必要なものとして、無形資産を中心に述べました。しかし、それは無形資産が有形資産よりも重要であるからという理由ではありません。有形資産も無形資産と同様に重要です。しかし、従来のライフモデルでは、有形資産の獲得ばかりに目が向き、無形資産が軽視されがちであったので無形資産を中心に取り上げてみました。

また、有形資産と無形資産は完全に切り離されているわけではありません。有形資産は無形資産の形成にも役立ちますし、逆に無形資産が有形資産の形成を強く後押しすることもあります。したがって有形と無形の両方の資産を充実させ、両者のバランスを取っていくことが必要ではないでしょうか。

○山田敬幸

一級ファイナンシャルプランニング技能士。会社員時代に、源泉徴収票の読み方がわからなかったことがきっかけでFPの勉強を始める。その後、金融商品や保険の販売を行わない独立系FPとして起業。人生の満足度を高めるためには、お金だけではなく、健康や人とのつながりも大切であるという理念のもと、現役世代の将来に向けた資産形成や生活設計に対する不安の解消に取り組んでいる。