金メダルを獲得したショーン・ホワイト【写真:Getty Images】

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平野に決め返した“奇跡の連続4回転”…試合後に告白「今朝までできなかった」

 平昌五輪は14日、スノーボード男子ハーフパイプ決勝が行われ、“カリスマ”ショーン・ホワイト(米国)が97.75点をマークし、2大会ぶり3度目の金メダルを獲得。全体最終で登場した最終試技で平野歩夢(木下グループ)を逆転し、涙の逆転Vを飾った。平野が五輪史上初めて2連続で成功させた「ダブルコーク1440」の連続技を決め返したホワイトは「今朝までできなかった」と告白。極限まで追い詰めた平野らライバルを「誇りに思う」と称賛した。地元紙「ニューヨーク・タイムズ」が報じている。

 その勝負強さは本物だった。2本目に珍しく転倒し、迎えた3本目。95.25点をマークしていた平野を超えるには平野の決めた大技で対抗するしかない。2本目で日本の19歳は「ダブルコーク1440」の連続技を決めていた。記事では全体最終試技を前に追い詰められた絶対王者の状況を、こう伝えている。

「1440に着地するだけでは十分ではなかっただろう。ホワイトはヒラノに対抗するには1440を連続で決めるしかなかった。彼はやらなければ、批難される。ホワイトはパイプ高く急上昇すると、衝撃的に困難なトリックに挑み、すべて成功させた。その結果、97.75。3度目の金メダルを勝ち取ったのだ」

 3度目の金メダルを決めたカリスマは泣いた。雄叫びを挙げ、雪の上で膝まずき、感動を爆発させた。記事によると、ホワイトは2大会ぶりの歓喜の瞬間を、こう明かしたという。

大怪我の悪夢を振り払った歓喜「乗り越えるべき障害はたくさんあった」

「自分は最高のライドができたことを知っていたから、誇りに思えた。(負けても)胸を張りながら去ることができたんだ。得点が発表されて、勝った。もう震えたよ。喜びがこみ上げすぎてきた。ここに来るまでたくさんのことがあった。ニュージーランドでクレイジーなケガをして、顔面を割ってしまったんだ」

 昨年10月の練習中に転倒し、顔面を62針縫う大怪我を負ってしまった王者は「今日、ハーフパイプで自分が怪我した同じトリックをできた。だから、乗り越えるべき障害はたくさんあったんだ。すべては乗り越える価値はあったんだよ」と話し、過去のトラウマを払拭する果敢なチャレンジだったことを明かした。

 最も王者を追い詰めたのは、2大会連続銀メダルを獲得した「AYUMU HIRANO」だった。記事では「間違いなく、若きヒラノは2回目に彼を超えた。2連続で1440を決めた。ホワイトが2回目で転倒した時、歴史に残る決勝戦の舞台は整った」と報じた上で、ホワイト自身は3本目をこう振り返ったという。

王者を追い詰めた平野の“連続4回転”「朝、ここに来るまではできなかった」

「正直、これは自分が今までで成し遂げた最も困難なランの一つだった。自分はこのコンビを連続ですることはできなかったんだ。14(1440)から14(1440)は朝、ここに来るまでは。だから、自分のパフォーマンスはすごく幸せだ。ここまでずっと自分を押し上げてくれた他のライダーを誇りに思うんだ」

 平野は1月にXゲームで史上初となる4回転を連続で成功させ、話題を呼んだ。しかし、19歳の日本人に打ち勝つに是が非でも必要となった連続技は試合当日まで成功させることができなかったという。

 極限まで追い詰められたからこそ、ぶっつけ本番で連続技に成功できた。31歳にしてかつてない高みに到達したホワイト。ここまで押し上げてくれたのは、平野歩夢という好敵手だったのかもしれない。(THE ANSWER編集部)