味噌煮込みうどんなどの名古屋メシに使われる豆味噌の「八丁味噌」について、江戸時代から続く愛知県岡崎市内の老舗2社が、国の地域ブランド認定から除外されたままの異常事態になっている。

「八丁味噌は岡崎のご当地に限る」という2社の主張を受け付けなかったためだが、果たしてどうなのだろうか。

県の共有財産だとする名古屋の組合を地域ブランドに登録

江戸時代、徳川家康が生まれた岡崎城から西へ八丁(約870m)のところに、八丁村(現・岡崎市八帖町)があった。その地で伝統の味噌を生産し続けているのが、まるや八丁味噌と「カクキュー」ブランドの合資会社八丁味噌の2社だ。

八丁味噌とは、その地名に由来している。製法にもこだわっており、仕込みは木桶を使い、重石には天然石を積み上げるなどしている。


八丁味噌が使われる名古屋メシの1つ、味噌カツ

農林水産省は、産地と結びついたブランドを知的財産と認める地理的表示保護制度(GI)の導入を進めており、八丁味噌にも白羽の矢を立てた。

老舗2社では、八丁味噌協同組合を結成してGI登録を申請し、本場の厳格な製法のみを八丁味噌と認めるように国に求めた。しかし、国に認められなかったため、申請そのものを取り下げた。GI 登録には、2社を除く県内の醸造業者40社余でつくる県味噌溜醤油工業協同組合(名古屋市)も県の共有財産だとして申請しており、農水省は2017年12月、県味噌溜醤油工業協同組合をGIに登録する判断を下した。

これに対し、老舗2社は、輸出先のヨーロッパでブランド名が使えなくなるとして、国に不服申し立てをする意向だと、18年1月26日に各メディアで報じられた。

ニュースを受けて、ネット上では、2社を支持し、国の考えを批判する書き込みが多くなっている。

農水省は、本場の厳格な製法にこだわる老舗2社に反論

署名サイト「change.org」では1月28日、「ブランドを守るため、地理的表示における『八丁味噌』登録の改正を求めます」として、国などに再考を促す動きが始まった。2月7日夕現在で、700人超が署名に参加している。

農水省の知的財産課は7日、老舗2社の主張を認めなかった理由について、Jタウンネットの取材に次のように答えた。

「八丁味噌は現に、八帖町以外でも作られています。生産工場が愛知県内にあり、その名前の商品があります。サツマイモは鹿児島、コマツナは東京の地名に由来していますが、今やご当地だけのものとは言いません。八丁味噌は、県内だけで生産されていますので、『愛知のブランド』という受け止めでいます」

製法についても、2社との違いを認めていない。

「製法も、原理は同じです。2社が江戸時代から作っているのは事実ですが、例えば、石積みは圧力をかけるためのものです。天然石でなければダメということにはなりません。それは、製品の特長とは関係ないですね」

もっとも、2社を排除しているわけではなく、2社が八丁味噌を生産していることに変わりはなく、今後申請すればGI登録の可能性はあるとしている。2社が除外される形になったものの、名古屋の組合を登録したことで、結果的に海外のニセモノから守ることに役立つという。

2社除外の影響については、国内では、GIマークが貼れなくなるが、販売は従来通り続けられるとした。また、ヨーロッパでブランドが使えなくなる可能性はあるものの、「それまでに追加登録していただければ」と話した。

2社の不服申し立て意向については、「報道は知っていますが、申し立てがまだありませんので、コメントは差し控えさせて下さい」としている。