わずか1試合で退団…元西武の“渡り鳥投手”は日本をどうみたのか?【インタビュー】
「ただ日本では非常によくしてもらいました」
アレクシス・キャンデラリオという名を聞いてもピンとこない野球ファンが大部分であろう。昨シーズン、西武ライオンズで公式戦に1試合登板(0勝1敗,防御率21.00)したのみ、シーズン途中に加入し、終了を待たずに自由契約となってしまったドミニカ共和国出身,35歳のベテラン右腕だ。
ファンに全くインパクトを残さず日本を去って行ったキャンデラリオだが、入団時には日本が9ヶ国目のプレー国となることで話題になっていた。ドミニカの地元紙にも”渡り鳥プレーヤー”として紹介される彼の野球人生に迫ろうと、母国のウインターリーグでプレー中の彼に話を聞いてみた。
――9カ国目(日本、米国、メキシコ、ベネズエラ、パナマ、ニカラグア、オランダ、イタリア、ドミニカ共和国)となった日本の野球はどんな印象でしたか
「非常に競争力の高いリーグで、いい選手が多いです。自分が慣れ親しんだ野球とは多少システムは違いますが、同じ”野球”であることに違いはないですよ」
――残念ながら結果を残すことはできませんでしたね
「日本の野球にアジャストする前に終わってしまった感じです。一軍登板の機会は1試合だけだったので。もう少しチャンスがあればまた違ったかもとは思います。ただ日本では非常によくしてもらいました。相手に敬意を持つこと、きちんと規律を持つこと、野球だけでなく、文化も学べました」
――あなたのようなベテランが日本の二軍にいることは退屈だったと思うのですが
「そんなことは全くないですね。いつだって学ぶことはできます。優秀な若手も多いですし、一軍にいようが二軍にいようが学べることは多いですよ」
――パフォーマンス的な面で成功はできませんでしたが、そうしたあなたの姿は日本の若手にもよいお手本となったのではないかと思います
「そうだといいですが。とにかく、ベストを目指して根気強くがんばって練習することですよ」
「MLBに行く牧田(和久)ともよく話しましたよ」
――様々な国でプレーされていますが、そうしたオファーは代理人が探してくるのでしょうか?
「代理人と契約していた時期もありますが、今は契約していません。ただ基本的には自分で探しています。その地でプレーしている友人が紹介してくれたり、また知人のつてを頼ってみたりなど、自分でコンタクトしてきました」
――外国生活にアジャストしていく秘訣はあるのですか
「おそらく、他者をリスペクトしなさいという父親の教えが大きいのではと思います。日本だろうと、ニカラグアだろうと、オランダであろうとその場所の文化をリスペクトし同じように暮らすことを心掛けました」
――そういう意味では日本の生活は満足できましたか
「もちろんですよ。唯一言葉だけは理解できませんでしたが。ただ英語ができる人も多かったですし、コミュニケーションに困ることはなかったですよ。MLBに行く牧田(和久)ともよく話しましたよ。非常に落ち着いた国ですし、私自身落ち着いた暮らしが好きなので生活しやすかったです」
――確かにあなたは踊って騒いでという典型的なドミニカ人という感じではありませんよね
「(笑)少し落ち着いたタイプですよ」
――外国でプレーすることに躊躇とか不安はないですか
「プレーできるところでするだけです。不安もないですし、それが人生だと思っています」
「建設現場や塗装の仕事なんかをやりました」
――地元紙には、あなたが一時期生活のために野球を離れ、メキシコや米国で肉体労働などを行っていたとありました
「ええ、本当です。建設現場や塗装の仕事なんかをやりました。それでも練習は続けていました」
――そうまでしてもモチベーションを切らさずにいられた理由は何でしょうか
「家族のためです」
――日本の野球選手は、海外に出ることが不安なのかは分かりませんが、あまり米国以外の国でプレーしようという人がいないのが現状です。
「もちろん、生まれ育った文化や習慣が違いますからそういう不安があるのは当然です。それでも世界を知るというのは素晴らしいことですし、旅をする中で異文化を受け入れるというのは、野球選手としてのキャリアだけでなく一人の人間としてもプラスになりますよ」
――今は新シーズンのチーム探しをしているところですか?
「いいえ、これからです。今はハードにトレーニングするだけです」
――どこの国でプレーしたいという希望はないのですか?
「どこでもいいですよ(笑)」
ひととおり質問を終え、雑談をする中で、あなたの人生におけるモットーはと聞くと「Saber es poder(知は力なり)」と間髪入れずに答えてくれた。これまでにも多くのドミニカ人選手と話をしてきたが、彼ほど知性を感じさせてくれる選手にはお目にかかったことはない。
そして、幾多の逆境を乗り越えて多くの国で生き抜いてきたという内面から溢れてくる力強さは、彼に人としての深みを与えている。短い期間ではあったが、日本の若手選手たちがキャンデラリオから何かを学んでいてくれていたらと切に願う。
選手として大きな成功を得たとは言い難いこれまでの彼のキャリアだが、数字的な結果を収めるだけが成功を意味するのではないことを彼から教わった。まだ今季の所属先は未定ということだが、きっと彼のことなら自分で道を切り拓き、世界のどこかで野球を続けていることだろう。



