森岡亮太が移籍したアンデルレヒトとはどんなクラブなのか【写真:Getty Images】

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今年で創設110周年。ベルギーで最も成功を収めたクラブ

 現地時間30日、日本代表MF森岡亮太がベルギーの名門アンデルレヒトに加入した。同国内のワースラント=ベフェレンと契約してから半年で見事にステップアップを遂げている。移籍先になったアンデルレヒトとはどんなクラブなのか、5つのトピックで解説する。

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 RSCアンデルレヒトが創設されたのは1908年のことである。ブリュッセル首都圏地域(日本の東京23区に相当)のアンデルレヒトが本拠地で、1909/10シーズンに地域リーグ3部で公式戦に初めて参戦した。

 トップリーグ初昇格は第一次世界大戦による中断を挟んだ後の1921/22シーズンで、1935年までは短期間に4度の降格と4度の昇格を繰り返す「エレベータークラブ」だった。しかし、1935/36シーズン以降は一度も降格せずトップリーグに君臨し続けている。

 いまではベルギー国内で最も成功を収めたクラブになり、予算規模もダントツ。欧州カップ戦でもタイトル獲得経験があり、国際サッカー歴史統計連盟 (IFFHS)による「20世紀のヨーロッパサッカークラブランキング」では堂々の10位に選ばれた。

レジェンドの名を冠した本拠地。新スタジアムも建設中

 アンデルレヒトの本拠地はコンスタン・ヴァンデン・ストック・スタデイォンで、約2万8000人を収容する(立ち見席が約6900席あるため欧州カップ戦では約2万2000人収容となる)。

 1917年から使用されていたスタッド・エミール・ヴァースを全面改築したのが現在のホームスタジアムで、クラブのレジェンドであり当時の会長の名前が冠された。だがこのスタジアムを使うのは来季まで。現在新スタジアムを建設中である。

 フォルティス・スタジアムと名付けられる予定の新たな本拠地は、欧州全土で分散開催されるEURO2020でも使用される予定。収容人数は6万人まで増え、完成後はベルギー代表のホームスタジアムとしても活用される。

国内リーグ優勝は最多34回。欧州でも実績十分だが…

過去の主な獲得タイトル

▽国内タイトル
1部リーグ優勝:34回
2部リーグ優勝:2回
ベルギーカップ:9回
ベルギー・スーパーカップ:13回

▽国際タイトル
UEFAカップ(現ヨーロッパリーグ):1回
UEFAカップウィナーズカップ:2回
UEFAスーパーカップ:2回

 アンデルレヒトがベルギ−1部リーグを制したのは34回にのぼる。これはクラブ・ブルージュの14回やスタンダール・リエージュの10回を大きく突き放し国内最多の記録。最近10シーズンで5度の優勝、4位以下は一度もない。1963/64シーズンから1967/68シーズンにかけての5連覇は、今も破られていないリーグ最多連覇記録として歴史に刻まれている。

 ベルギー国内でこれだけの存在感を放っていれば、当然欧州カップ戦の常連でもある。だが、チャンピオンズリーグでは一度もグループステージの壁を超えたことがない。UEFAカップ(現ヨーロッパリーグ)優勝1回、UEFAカップウィナーズカップ優勝2回、UEFAスーパーカップ優勝2回という実績は輝かしいものだが、いずれも20世紀に掴んだものだ。

 ただ1946/47シーズンの国内リーグ初制覇以降、一度も7位以下で終えたシーズンがないという事実はビッグクラブにふさわしい功績。女子チームも保有しており、こちらもリーグ制覇4回、カップ戦優勝10回と国内屈指の実績を誇る名門である。

コンパニやルカクを輩出。欧州屈指の育成型クラブ

過去の主な所属選手

エンツォ・シーフォ(元ベルギー代表/1982〜1987、1997〜2000)
セレスティン・ババヤロ(元ナイジェリア代表/1994〜1997)
ロレンツォ・スターレンス(元ベルギー代表、元大分トリニータ/1998〜2000)
ヤン・コラー(元チェコ代表/1999〜2001)
ソル・ギヒョン(元韓国代表/2001〜2004)
ヴァンサン・コンパニ(ベルギー代表、現マンチェスター・シティ/2003〜2006)
シェイク・ティオテ(元コートジボワール代表/2005〜2007)
ルーカス・ビリア(アルゼンチン代表、現ミラン/2006〜2003)
ロメル・ルカク(ベルギー代表、現マンチェスター・ユナイテッド/2009〜2011)
ジョルダン・ルカク(ベルギー代表、現ラツィオ/2011〜2013)
デニス・プラート(ベルギー代表、現サンプドリア/2011〜2016)
アレクサンドル・ミトロヴィッチ(セルビア代表、現ニューカッスル/2013〜2015)
シャンセル・ムベンバ(DRコンゴ代表、現ニューカッスル/2013〜2015)
ユーリ・ティーレマンス(ベルギー代表、現モナコ/2013〜2017)

※カッコ内は(経歴/トップチーム在籍期間)

 アンデルレヒトは欧州でも屈指の育成型クラブとして名を馳せている。今季からマンチェスター・ユナイテッドに所属するFWロメル・ルカクもアンデルレヒトの下部組織出身者で、2009/10シーズンには史上最年少16歳10ヶ月でベルギー1部リーグ得点王に輝いた。

 ベルギー代表の主軸でもあるマンチェスター・シティのDFヴァンサン・コンパニもアンデルレヒトの下部組織出身。今季からモナコへ移籍した20歳のユーリ・ティーレマンスは、5歳の頃から下部組織に所属していた。

 サンプドリアでブレイク中のデニス・プラートもアンデルレヒト育ちの選手である。また、下部組織出身でなくともミランに所属しているアルゼンチン代表のルーカス・ビリアや、ニューカッスルへ移籍したセルビア代表FWアレクサンドル・ミトロヴィッチなどアンデルレヒトをきっかけに飛躍した選手は数多く欧州に散らばっている。

 ベルギー国内屈指のビッグクラブでありながら、「育てて売る」ことに特化しているアンデルレヒト。森岡亮太にも活躍しだいではさらなるステップアップの道が残されている。

各国代表クラスが揃う攻撃陣。森岡亮太にチャンスは?

アンデルレヒトの主な現所属選手

▽GK
マッツ・セルス(ベルギー代表)

▽DF
ウロシュ・スパイッチ(セルビア代表)
イバン・オブラドビッチ(セルビア代表)

▽MF
マッシモ・ブルーノ(ベルギーU-21代表)
スベン・クムス(ベルギー)
レアンデル・デンドンカー(ベルギー代表)
ピーター・ゲルケンス(ベルギーU-21代表)

▽FW
ヘンリー・オニェクル(ナイジェリア代表)
アレクサンドル・キプチュ(ルーマニア代表)
ウカシュ・テオドルチュク(ポーランド代表)
フランシス・アムズ(ベルギーU-19代表)

 今季のアンデルレヒトの陣容はやはり国内屈指。だが、昨季ほどの勢いはない。昨年10月のハイン・ファンハーゼブルック監督就任後も波に乗れず、首位クラブ・ブルージュに12ポイントも水をあけられての3位に甘んじている。

 勢いが出ない最大の要因は前線の迫力不足。昨季22ゴールのポーランド代表FWウカシュ・テオドルチュクが開幕からスランプに陥って、ここまで4得点と鳴かず飛ばず。昨季のオイペンで大ブレイクを果たした20歳のナイジェリア代表FWヘンリー・オニェクルも、9ゴールでチーム内得点王として奮闘していた矢先にシーズン絶望の大けがを負ってしまった。

 ハーゼブルック監督が採用するのは、昨季率いたヘントと同じ3-4-2-1で、森岡亮太は2シャドーでの起用になると見られる。最近の試合で同ポジションに起用されている若い2人、ピーター・ゲルケンスとフランシス・アムズは前者が3ゴール1アシスト、後者は18歳で下部組織から昇格したばかり。それらを踏まえれば新加入の森岡が定位置を奪取するチャンスは十分にある。

 攻撃陣には欧州の代表クラスが揃っており、ワースラント=ベフェレンよりも良質なチャンスに恵まれているだけでなく、森岡自身のパフォーマンスがより結果に繋がりやすい状況に違いない。

 またハーゼブルック監督は昨季、ヘントで久保裕也を2シャドーの一角で起用してブレイクさせた実績を持つ。日本人選手の強みや扱い方を熟知した指揮官の存在も、森岡の活躍を後押しするかもしれない。

text by 編集部