たくさんのアニメや映画、絵本などにも描かれ、人々に愛されるペンギン。丸みを帯びたフォルムや、ヨチヨチと歩く姿に癒される人も少なくないだろう。見ると思わず笑顔になってしまうキュートなペンギンだが、意外な素顔が隠れているのをご存知だろうか。

鳥なのに……ペンギンの不思議 その1



そもそもペンギンとはどんな生き物か。案外、知らない人も少なくないのでは? ペンギンは鳥類にもかかわらず、進化の過程で飛ぶことはやめてしまったため、その分、泳ぐことに特化した。だから海の中で餌を追いかけるときかなりのスピードで泳ぐことができるのだ。生息エリアは南半球のみ。もし、北半球にすんでいたら、シロクマの格好の餌食になってしまうだろうから、地球はうまいバランスでできているものだ。

ついペンギン=寒い南極の生き物とイメージしがちだが、アフリカ大陸やオーストラリア、進化論で有名なガラパゴス諸島まで、実に広範囲にわたって分布している。オーストラリアに生息する最小サイズのペンギンは、フェアリー(妖精)ペンギンとも呼ばれ、地元の人たちによって大事に保護されている。赤道にほど近いガラパゴス諸島にいるのは、その名もガラパゴスペンギン。賢さで暑さをしのぎながら暮らす固有種だ。

大小の差や生息域の違いはあれど、ルックスはおおむね胴長短足。だがそれは見た目にそう見えるだけで、実は長い胴体の中に足が隠れている。歩くときはちょうど椅子に腰かけているような格好になるので、よちよちとなっても仕方がないというもの。もし、博物館などで骨格標本を見る機会があったら、意外に長い足を確かめてほしい。

愛こそ全て! ペンギンの不思議 その2



成長すると体長が120cmほどにもなる、ペンギンでは最大級のコウテイペンギン。過酷な南極でブリザードが吹きすさぶ中、集団になってじっと寒さに耐えながら足の上に卵をのせて温める姿をドキュメンタリー映像で見た人もいるだろう。実は、極寒に耐えて我が子を守るのは全てオスのペンギンで、卵が無事にかえるまで、約2ヵ月間も飲まず食わずで守り抜くというから驚かされる。

また、パートナーに選んだメスと基本的に一生添い遂げるのもコウテイペンギンの特徴。卵を産んで海に帰ってしまった相手を責めることなく、我が子を守りながらひたすら嫁を待ち続けるなんて……。現代社会のワーキングウーマンには、夢のようなパートナーかもしれない。

研究者も虜に



寒さに耐えるため1万羽ものコロニーを作って集団生活を送るかと思えば、赤道直下の暑さをしのぎながら暮らし続けたりと、知れば知るほど不思議がいっぱいのペンギンたち。その愛らしいルックスや驚くような生態に、どっぷり魅了されてしまう研究者は少なくない。『国際ペンギン会議』が開催されるなど(第1回は1988年にニュージーランドで開催)、世界中で研究対象としても注目されている存在なのだ。

日本でも『ペンギン会議』が定期的に開かれており、研究者や愛好家など、3千人もが集うというからかなりの規模だ。その発起人の一人が、日本におけるペンギン研究の第一人者、上田一生氏。40年以上も研究し続けても興味が尽きないのだから、ペンギンとはなんとも奥深い生き物らしい。

そんな熱心な研究者の1組が、2017年12月の学術誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』で新たな発見を発表した。ニュージーランド南島で、体調は177cm、体重は100kgを超えるという新種の巨大ペンギンの化石が見つかったというのだ。から、6千万年ほど前のものとみられ、ペンギンの化石では最古級のものだという。

きっとこれからも、研究者や愛好家たちによってペンギンにまつわる“びっくり”は、どんどんと飛び出してくるにちがいない。知るほどに驚き、見ればきっと癒されるペンギンワールドちょっとのぞいて見てみては?

Writer:橘川有子
(提供:ヨムミル!Online 写真:(C)Greg Marshall(C)Jason Collier/Arrow Media)