日本の損失220億!韓国が"イチゴ泥棒"

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■韓国が日本のイチゴ品種を持ち出し自国で稼ぐ

日本で独自進化し、品種改良を重ねてきた国産フルーツ。その品質の高さは広く知られているものの、長く海外のマーケットに受け入れられない時期が続いてきました。しかし、近年になってイチゴやブドウなどの一部フルーツにおいて、香港、台湾、シンガポールなどのアジア諸国を中心に急激に輸出額を伸ばしています。

これらの国はフルーツを贈答用として贈る文化があり、日本のフルーツは高品質で贈り物になると受け入れられているのです。また、健康意識の高い富裕層が安い自国のフルーツを買わずに、わざわざ日本のフルーツを求めて列を作る姿も見られるようになりました。そんな日本のフルーツが今、韓国や中国に狙われ、苗木の流出が相次ぐ問題に直面しています。

イチゴは年々、大きく輸出額を伸ばしており、2016年は約11.5億円に達しています。これは11年度の約1.8億円と比較して5年間で約6.4倍になった計算です。また、農林水産省によるとシャインマスカットを含む日本のブドウは約4億円の12年と比較して、16年には約23億円となっており、わずか4年間で5倍に伸びています。ここ数年で日本のイチゴやブドウは海外に大きく輸出額を伸ばしており、これを皮切りに日本のコンテンツとして成長することが期待されていました。

しかし、そんな日本のフルーツの輸出額の伸びに冷水を浴びせる事件が立て続けに発生しました。昨年6月に「日本のイチゴ品種を韓国が持ち出し、自国で栽培して稼いでいる」と報道されました。その損失額は5年間で約220億円にのぼると、農水省が試算しています。現在日本が年間で海外に輸出している金額が約11.5億円(16年)に対し、損失額の1年分は44億円と輸出額の約4倍になる計算です。なお、約220億円という試算ですが、「韓国が他国へ輸出したイチゴをすべて日本産に置き換えた場合の金額」というのが計算ロジックになっています。

この流出により、韓国のイチゴブランドは国際的なスタンディングを獲得する橋頭堡とする可能性があります。韓国はすでに日本の約4倍もの分量のイチゴを輸出できているわけですから、それが続けばアジアにおけるイチゴの覇権争いで、韓国に後塵を拝する可能性があるのです。

■中国にシャインマスカットの苗木が渡った

さらに流出は続きます。今度はシャインマスカットの苗木が中国に渡り、現地で「食味極上」「品質抜群」との宣伝文句とともにネット販売されていることが明らかになりました。07年から5年間で中国の24の地域にて、勝手に栽培されていることをシャインマスカット開発元の農研機構(茨城県つくば市)が現地調査で確認しています。

農作物の新品種を生み出すためには深い知識や経験、膨大な費用と時間が必要です。苦労して生み出した新品種を勝手に栽培・販売されないよう、農林水産大臣へ「品種登録」することで、その品種の販売目的の増殖と販売権が認められるようになっています。

同機構は、今回の流出の原因とされる品種登録を中国でしておらず、その理由について「輸出は考慮していなかったから」としています。品種登録をしていれば勝手にシャインマスカットを栽培・販売する相手へロイヤルティを請求することができていたわけです。それを聞くと品種登録を怠った対応に不満が出てしまいそうですが、問題の本質は流出への意識の欠落ではなく、出願へのハードルの高さのほうだと考えています。

フルーツの流出を防止するための品種登録は10年という長い品種登録期間に加え、年間数十万円という高額な審査料を国ごとに払う必要があります。こんなにも品種登録の高いハードルを超えて、すべてのフルーツをすべての国で品種登録するということは現実的ではありません。

過去にはさくらんぼやカーネーションが、海外に流出したことが問題になっています。法の見直しが必要なときがきているのかもしれません。

(フルーツビジネスジャーナリスト 黒坂 岳央)