2016年2月、不倫問題の発覚を受けて衆議院議員辞職を表明した宮崎謙介氏。不倫の代償は大きい。(読売新聞/AFLO=写真)

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妻に発覚するや大モメ必至の「不倫」。年間300件の離婚相談を受ける弁護士の中里妃沙子氏に、妻が夫を怪しいと感じる言動やきっかけを具体的に聞いた――。

■「スマホを手離さなくなる」は100人中100人クロ

不倫の恋――法律用語でいうところの不貞行為がバレるきっかけは時代によって変遷があり、最近顕著なのはLINEでのやり取りが動かぬ証拠になることです。逆に紙の手紙や口紅の跡、嗅ぎなれない香水の香りといった、かつてのドラマで定番だった「昭和の常識」的な発覚原因はほとんど聞かなくなりました。

妻が夫を疑い始めるきっかけで1番多いのは、態度や行動の変化です。妙にそわそわ、うきうきするとか、逆に妻が何の気なしに口にした言葉に対して急に声を荒らげるなど、逆ギレするようになる人もいます。夫の様子が普段と違うと感じた妻は、「なにをそわそわしてるの?」「なんでこんなに怒るの?」と不信がり、夫の行動に注意を向けるようになります。

そうなると、妻は夫のカバンや財布の中身、スマートフォン(スマホ)の通話記録やLINEの履歴などの“調査”に入り、やすやすと証拠を見つけ出してしまいます。

それまでロックなどかけていなかった自分のスマホにロックをかけるようになったり、片時も手離さなくなったりすることも、妻の不信を呼びがちです。とくに「スマホを決して手離さなくなる」は100人中100人に当てはまる、浮気の最初の兆候です。

相手の趣味に合わせて私服の趣味が妙に若くなるとか、いつもつけているネクタイの柄が変わる、それまで妻任せだった下着の購入を自分でするようになる、といった変化も妻は目ざとく見つけます。

■たった1枚のレシートの「捨て忘れ」で発覚

フェイスブックやインスタグラムなどSNSへの投稿も、不倫発覚の原因になります。

たとえば同じ日に同じ場所で撮影した写真を夫と不倫相手の女性それぞれが投稿し、妻がその両方を目にしてしまうというケース。当然妻は不審に思い、以後の投稿に目を光らせることになります。「女性と行動を共にしていた」と推察できる状況証拠を集めている妻もいるのです。

なんでもないレシートや領収書が妻の疑いを招くこともあります。男性の多くは油断しているかもしれませんが、怪しいと思ったら妻は夫のカバンや財布の中身をチェックします。その日は都内にいるはずなのに、鎌倉のコンビニのレシートが出てきたらおかしいですよね。

その場合、たった1枚の「捨て忘れ」が不倫発覚のきっかけになります。夫の浮気の証拠としてレシートを持ってきたある女性は、「この日は事情があって捨て忘れただけで、ほかの日はきちんと捨てていたのだと思います」と冷静に分析していました。

ホテルの領収書はどうでしょうか。見るからに怪しいので発覚のきっかけになることはあります。しかし、不貞行為の決定的証拠になるかといえば、それは別問題。詳細な領収書であっても、記載されているのは代表者の名前と宿泊人数くらいです。部屋のタイプがダブルで、宿泊者2名となれば男女で同衾した疑いが強まりますが、女性の個人名までは突き止められません。宿泊者の名前をホテルに問い合わせても教えてくれるはずはありません。

■独身女性が既婚の不倫相手宅に無言電話する理由

「あなたの夫は浮気をしている」という怪文書が妻に送りつけられてくることもあります。夫が社内の女性と浮気している場合に多いようです。職場結婚で、夫の仕事の能力を尊敬しており、浮気に全然気がついていなかった妻のもとに、差出人不明の手紙が届いたケースもあります。

妻の元同僚が善意で告発したのかもしれないし、優柔不断な男の態度にじれた浮気相手が「そろそろ態度をはっきりさせてもらおう」と、わざと暴露したのかもしれません。どちらとも考えられますが、女性心理から推測すると、後者の確率が高いと思います。

なぜそう思うかというと、次に紹介する無言電話のパターンと似ているからです。

ひんぱんに無言電話が入る場合、電話の主は夫の不倫相手であることが多いといわれています。2人が密会していると思われるときや、その直後というタイミングで妻のもとに電話が入るからです。そういうケースでは、やがて不倫相手の女性が自分との結婚を求めて、夫婦に離婚を迫るといった行動に出てきます。

浮気をしている男はみな、二股の状態をいつまでも続けようとしますが、相手が離婚を求めてくる「略奪系」の女性だった場合、遅かれ早かれ発覚するものと思ってください。

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▼ささいな予兆から不倫はバレる!
発覚編
1:怪しい行動
・そわそわする、うきうきする
・逆ギレなど過剰反応
・私服の趣味が変わる
・これまでしていなかったのに、スマホをロックする、パンツを自分で買うようになる
2:Facebook
・フェイスブックやインスタグラムなど、SNSへの投稿写真に不自然な点がある
・気づいたら妻はスマホのチェックを開始!
3:レシート
・ごく日常的な買い物レシートに注意!
・怖いのは1枚だけの「捨て忘れ」
・妻は不自然な日時や場所に反応する
4:怪文書
・差出人不明の手紙(怪文書)が届く
・無言電話が入る

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■寝ている夫の指先にスマホをつけて指紋認証

夫の行動や数々の状況証拠から「どうも怪しい」と感じた妻は、夫の身辺を調べ始めます。もちろんそのときは浮気を疑っています。妻たちはさまざまな手を使って、不倫を証明する証拠を探し出します。

浮気を確定する証拠として最もポピュラーなのがLINEの履歴です。ここ数年、不倫カップルが連絡を取り合う手段は電子メールでも手紙でもなく、圧倒的にLINEなのです。

最近の男女は電話もあまり使いません。私たちの事務所には60代の方も相談に見えますが、その世代でも男女間の連絡にはLINEを使っているケースがあります。

LINEアプリはいちいちパスワードを入れる必要がなく、スマホの認証さえクリアできれば、簡単に履歴にアクセスできてしまいます。起きている間は警戒してスマホを手放さない夫も、寝てしまえば無防備です。妻はスマホを探し出し、「これがスマホの認証パスワードではないか」と思われる言葉をいくつか入力して、やすやすと夫がLINEで交わしたやり取りを見てしまいます。当事務所に相談に来る女性は、こともなげに「夫の考えていることなんて、だいたいわかりますから」と口をそろえます。

最新のスマホには指紋認証を備えているものもありますが、そんなものは寝ている夫の指先にスマホをつければ済むことです。そうやってLINEで交わされた会話の画面を自分のスマホで撮影し、法律事務所に持ち込まれる方が多いのです。「妻にはスマホは見られてしまうもの」と覚悟して、問題のありそうなLINEでのやり取りは、すぐに削除しておくべきでしょう。

裁判の証拠として考えた場合、「不貞を行っている」と裁判所が認めるかどうかは、肉体関係を想起させる言葉が使われているかどうかがポイントになってきます。

そのものズバリの言葉でなくとも、比喩的な表現で「ああ、これは肉体関係のことだ」とわかる場合は「アウト」です。たとえば「食べちゃうぞ」といったいい回しでも、前後の話のつながりから「これは肉体関係があった」と推察されるケースがあります。

一般に浮気相手とのLINEは、次第にエスカレートしていきます。読んでいて赤面するような“行為”の中身を赤裸々に書いている場合もよくあります。最初から何も書かなければいいのですが、当事者たちは「いけない恋」に舞い上がってしまい、つい書きたくなってしまうのです。これはもちろん「アウト」です。

反対に「今度、一緒に食事しましょう」程度の誘いは、妻を怒らせるかもしれませんが、不貞の証拠にはなりません。「2人きりで食事しましょう」も「セーフ」です。

恋人に送るメッセージには、ハートマークがたくさんつくのが常ですが、それも証拠にはなりません。LINEなどのやり取りでは、恋人同士でなくてもそうしたやや大げさなメッセージが行きかうことも珍しくはないからです。また、裁判では一般にキスをしたくらいでは不貞行為とは認められません。この程度の愛情表現は、疑わしくはあっても「アウト」とまではいいきれないのです。

■アプリ「Find iPhone」で夫の現在位置を知る妻

不倫に関する訴訟では、相手を特定することが必要です。特定して初めて、その相手に損害賠償請求を行うことができるからです。夫の浮気を確信した妻にとって、次は浮気相手の氏名を知ることが関門となります。

夫が浮気のためにホテルを利用し、それをインターネットで予約した場合、予約サイトから確認のメールが届きます。夫のスマホをチェックしていれば、そのメールを読むことができます。「男1女1」というように男女別に人数が記載されているだけのメールでも、「夫が女と泊まった」ことまでは証明できます。しかしサイトによっては宿泊者全員の名前が記載されていることもあり、その場合はメールによって浮気相手を特定することができます。

より確実なのが航空券の予約確認メールです。とくに海外便であればパスポート通りの名前と年齢が搭乗者全員分、記載されています。国内便でも全員の名前は記載されているので、見つければ妻は夫が誰と一緒に旅行に行ったのかを知って、訴訟を始めることができます。

旅行関係の予約確認メールは飛行機の搭乗やホテルのチェックインのために必要となる場合もありますが、心当たりのある方はできるだけ早く消しておくべきでしょう。

スマホにはGPSを利用して紛失した端末を見つけるための機能があります。iPhoneなら「Find iPhone」というアプリです。これを利用すればパソコンからスマホの現在位置、すなわち夫の居場所を知ることができます。妻が夫のアカウントとパスワードを見破っていれば、この機能を使って夫のスマホの現在位置を探知でき、夫が今どこにいるかは常に妻の知るところとなります。

確認した夫の居場所がラブホテルであれば、妻に強襲されることもありえます。写真週刊誌ばりにホテルの駐車場の出口に張り込み、浮気相手と2人で出てきたところを撮影して、裁判の証拠とした女性もいます。

この端末捜索機能はスマホの電源が切れている間は使えないので、心配な方はデートの前に電源を切っておいたほうが賢明かもしれません。

■夫を疑う妻はなぜグーグル「ストリートビュー」を?

夫にとっては悪夢でしょうが、不倫相手を特定すべく、自ら夫を尾行する妻もいます。私の依頼人の中には「探偵を頼むお金がないから、自分でやりました」といって、証拠写真を取り出した方もいます。

デジタル写真には撮影日時が記録されていますが、紙の写真しか残っていない場合、およその撮影日を特定することが必要になる場合があります。たとえば別居後に離婚訴訟に踏み切った妻が「夫の不貞が婚姻関係の破綻を招き、別居の原因となった」と主張したいのであれば、別居前か別居直後の写真でなければ証拠としては弱くなってしまいます。

そういったとき、グーグルの「ストリートビュー」が役に立ちます。グーグルはストリートビューの写真を一定期間ごとに更新していますが、以前に撮影した写真も保管しており、ネット上で参照することが可能なのです。たとえば街角の看板ができる前の写真か、できた後の写真かといったポイントをチェックしていくことで、およその撮影日を特定できるのです。

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▼妻はどこを調べるか?
証拠集め編
5:LINE
・パスワード、指紋認証を突破して、メッセージをチェック
・不貞行為の証拠になる「肉体関係を匂わせる表現」
・比喩的表現「食べちゃうぞ」もダメ
6:予約メール
・ホテルや航空便の予約サイトからのメールは、状況証拠になる
・相手の氏名を特定されてしまう恐れ
・海外便では嘘がつけないので注意!
7:居場所チェックアプリ
・夫が寝ている間に、居場所チェックアプリ(Find iPhoneなど)を導入
・ラブホの前で妻が待ち構えるケースも!
8:張り込み
・素人探偵となり妻が張り込み
・現場写真を撮影

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中里妃沙子(なかざと・ひさこ)
弁護士。丸の内ソレイユ法律事務所代表。
2009年に同事務所を開設、年間300件以上の離婚相談を受ける。都立戸山高校、東北大学法学部卒業。南カリフォルニア大学ロースクール修了。
 

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(弁護士 中里 妃沙子 構成=久保田正志 撮影=大杉和広 写真=読売新聞/AFLO)