日本語の「生き甲斐」が海外メディアで話題に。その解釈に目からウロコ
カワイイ、オタク、ゲイシャ、スキヤキなど、海外でそのまま通じる日本語は数多くあります。『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』の著者でNY在住の著者・りばてぃさんが紹介する、今海外で最も注目を集めているという日本語が「イキガイ(生き甲斐)」です。この、いかにも日本的な言葉が、なぜアメリカやヨーロッパで注目されたのか、またどのように言葉が解釈されているのか、りばてぃさんがNY在住の日本人という目線で詳しくリポートしています。
今度は、イキガイが世界の共通語に!?
(1)新年の抱負を達成するためには?2018年、新年を迎えた。
日本でもそうだが、アメリカでも新年を迎えたということで、「新年の抱負は何?」という話題は各所で出ている。
例えば、アメリカの自己啓発書作家の「トニー・ロビンスが説く新年の抱負を遂行できる人とできない人の違い」
(Tony Robbins: This is the difference between people who stick to their New Year’s resolutions and those who don’t)
と題したCNBCの記事では、
目的を明確にし具体的な計画を立てる・・・ことが重要だという。
「新年の抱負」を掲げた人のうち8割もの人々が2月の2週目には諦めてしまうのだとか。たいがい、強く望む希望や起こったらいいなという楽しいことを「新年の抱負」に掲げるけども、ほとんどの人がそれらを実行して叶えることができない。
本当に成し遂げたいのであればその「新年の抱負」で達成したい目的を明確にし、
どのように進めるのか?
何か道具は必要なのか?
戦略はあるのか?
お金や人の助けは必要なのか?
などなどの具体的な計画を立てると、「新年の抱負」を最後までやりきることができるという。
より具体的になることで最後までやり遂げるモチベーションに繋がるので、諦めずにいられる。
当該記事では、セルフドライブ自動車のテスラやスペースXでお馴染みのイーロン・マスクやバージン航空の創業者のリチャード・ブランソンが数多くのことを成し遂げてきた背景には、強い「なぜ?」(Why?)や、実行するための計画がちゃんとしていたからといった説明が続いている。
う〜む。
まぁ、よく言われることで特に新しいことは言っていない気がする。
(ご参考)
●Tony Robbins: This is the difference between people who stick to their New Year’s resolutions and those who don’t
他にも、グローバルニュースによる「2018年の新年の抱負を成し遂げるコツ」では、明確にイメージすることが重要とか、ファイナンス系の情報サイトでは、何が起こるかわからない時代なので、資金的にも精神的にも準備をするほうが良いと不安感を煽りながら、お金についての「新年の抱負」を遂行するための10個のコツを教えてくれている。
(ご参考)
●Tips to achieve your 2018 New Year’s resolutions
●Top 10 New Year resolutions for 2018 that will put your financial house in order
とにかく、新しい年ということで気分一新、より幸せになるための目標として「新年の抱負」を考えたり、具体的に掲げたり早速、元旦から実行しているという人が数多いので、そのためにどうしたら良いのか?というのはいつの時代でも話題になるのだろう。
(2)突如、日本のある言葉が話題に?「新年の抱負」に関連した話題として・・・というか、実は、昨年夏あたりから、英語圏の各種メディアで興味深い日本語がしばしば話題に上がっている。
これまでも、日本語がそのまま英語になったことは多い。
カワイイはその典型例で英語でもKawaiiで普通に通じる。
今や世界の共通語だ。
つい最近のニュースでも、Kawaii Girl Cosmeticsという伝統的なアフリカンアメリカンの女性が立ち上げた独自のコスメブランドが紹介されていたほど。
(ご参考)
●Kawaii Girl Cosmetics Redefines Black Girl Magic with A Collection of inspired‘Tokyo Collection’ Eyelash Wear
日本人は一切関わっていない。
ただアフリカンアメリカンの女性が日本の文化が好きだからという理由でKawaii Girl Cosmeticsと名付けたという。
もし、Kawaiiの意味が広く知られていなければコスメ・ブランドの名前になることはあり得ないのでそれだけ多くの人々が
Kawaiiの意味を理解しているということなのだろう。
このように日本語がそのまま英語になる事例は多々あるが、その最新の興味深い事例がIkigaiだ。
つまり、日本語の「生き甲斐」。
2017年8月に、”Ikigai: The Japanese Secret to a Long and Happy Life”という本が発売されたことで注目されているようだ。
(ご参考)
●”Ikigai: The Japanese Secret to a Long and Happy Life”
例えば、BBCニュースは、昨年2017年8月6日付で
「生き甲斐:仕事と人生を向上するための日本人の考え方」(Ikigai: A Japanese concept to improve work and life)
と題した記事を掲載。
東京などの大都市に住む日本人の朝は、「寿司詰め」と呼ばれる満員電車に揺られて仕事に出かける。
ストレスはこれだけでは終わらない。そこから長い会社での、縦社会ルールに従う仕事が続くのだ。
そんな中でどうやって生きているのだろうか?
・・・という疑問からこの記事は始まり、その秘密は生き甲斐にあると説明している。
生き甲斐に相当する英単語は無く、あえて説明すると、”embodies the idea of happiness in living”とのこと。
直訳すると、
日々の暮らしの中での幸せを具体化する。
要は、幸せな日々を過ごすには生き甲斐にヒントがあるのではないかという、いかにもイギリス英語という感じの指摘である。
(ご参考)
●Ikigai: A Japanese concept to improve work and life
当然、イギリスだけではなくアメリカでも様々なメディアが取り上げており、例えば、経済専門誌のフォーブスの2017年9月29日付の記事のタイトルは:”Discover Your Passion Or’Ikigai’ With 4 Simple Tips”要するにIkigai(生き甲斐)を見つけろと、Ikigaiが重要なキーワードになっているほどだ。
この記事では「生き甲斐」を西欧で言う「情熱」(Passion)に似たような考え方だと説明。
また、別の表現で「存在する理由」(reason for being)とも補足している。
お堅い経済誌のフォーブスだけあって、真面目に日本語の「生き甲斐」がどのようなものであるか、さらに以下のような4つの要素に分解し必死に英語で説明しようとしているのが興味深い。
<イキガイの4つの要素>
何が好きWhat you love何に長けている
what you are good at世界は何を必要としているのか
what the world needs何を得るのか
what you can be paid for
日本人が読んでもこのイキガイの4つの要素は勉強になる気がする。
特に3つ目の「世界は何を必要としているのか」(what the world needs)は、なんだかスーパーヒーローみたいだなと思った。
さて、そんなわけで、日本人はこの「生き甲斐」を自分自身の中で深く長きに渡り探し求めることが人生に満足感と意味をもたらすと考えている・・・というのがフォーブスの記事の見解だ。
つまり、「生き甲斐」を見つけることは幸せな人生にも繋がるとしている。
(ご参考)
●Discover Your Passion Or ‘Ikigai’ With 4 Simple Tips
最後にもう1つだけ。
「そういう考え方もあるのか」と感心したIkigaiについての欧米メディアによる解説をご紹介しよう。
それによると、Ikigaiとは、英語で言うところの「人生の目的」(Purpose in life)とは違うとのこと。
Ikigaiは、目的云々の話ではなくその過程にあるというのだ。
いかにも日本人的な考え方と言えるだろう。
例えば、職人の優れた技術は、目的である技術よりも、それを施す際の所作や下準備のほうが意義があり、重要だという考え方である。
その感覚を一言で表現すると
“chanto suru”
ということだと、日本語の「ちゃんとする」をそのまま英語でも“chanto suru”と表記して説明を行っている。
つまり、Ikigai(生き甲斐)とは、何か大きな目的がどうこうと言うのではなく、日々の生活の中の些細な所作や下準備を「ちゃんとする」という感覚から生じるものであり、その積み重ねによって人生をより意味のあるものにすることができるということらしい。
(ご参考)
●The Japanese concept of ikigai: why purpose might be a better goal than happiness
image by: shutterstock
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